■仙台市真央区 正木邸内 臥藤蛮はどこまでも続く廊下を歩いていた。 クロガネを追って大きな屋敷に入ったのだが、途中で見失ってしまったのだ。 普通の家とは比べ物にならないほど広い上に、分岐や曲がり角がやたらに多い。 幼少期を山中で過ごしたせいか、屋内では方向感覚をすぐに失ってしまう。 だがこれは、蛮の方向音痴だけが原因ではない。 正木邸は侵入者に備え、迷路のように入り組んでいるのだ。 一見のものは迷うように作られている。 それでも、一度でも来たことがあれば多少は勝手もわかっただろう。 しかし、臥藤組は甘貸志会の傘下ではあるものの所詮は新参の外様。実質的なトップである正木邸に直接呼ばれることなどはなく、ここが正木ヒデオの自宅であることにさえ、蛮は気がついていなかった。 もっとも、それを知っていたところで遠慮などしなかったろうが。 震動。 何かが破壊される音。 天井からはぱらぱらと埃が降ってくる。 大方、いつの間にか湧いてきたあのオオトカゲが暴れているのだろう。 いい加減、面倒くさくなってくる。 クロガネとやらと殴り合うのは面白かった。だが、あのバカでかいトカゲが、やつの家を壊してからは気が削がれてしまった。つい意地になって追いかけて来たものの、甘貸志会から受けた命令は正木ユウヤの喧嘩に加勢しろという内容だ。 肝心の金髪のガキはいつの間にかどこかへ消えてしまったし、これ以上付き合う義理はないのではと思えてくる。 ついでに言えば腹も減ってきた。 常備しているココアシガレットは破れた上着とともに失くしてしまった。ショコラを連れて、ラーメンでも食って帰った方がいいんじゃないかという気持ちが大きくなってくる。この時間でもやってる店のひとつやふたつはあるだろう。 うん、そうだ。それでいい。 そうと決まれば話は早い。 蛮はその場で飛び上がり、天井の梁にぶら下がる。 それから逆上がりの要領で天板をぶち破り、天井裏に侵入。 さらに瓦屋根を突き破って屋根の上に出た。 山中で迷ったときの鉄則に則り、まずは高いところに出て視界を確保したのだ。 屋根の上に出た蛮は、辺りを見回す。 ショコラを探すためだったが――先に目に入ったのはイタチと格闘する蛇のようにのたうち回る、汚らしいオオトカゲの姿だった。 その巨大
آخر تحديث : 2026-07-13 اقرأ المزيد