All Chapters of 迷宮プロレス道 ~伝説のおっさんレスラー、ダンジョン配信で無双する~: Chapter 11 - Chapter 20

147 Chapters

第11話 後楽園ホール60個分のバズ

 見た目からすると、女の年頃は二十代半ばくらいだろうか。 黒縁の眼鏡をかけて、首から一眼レフカメラをぶら下げている。カメラバッグらしきものを肩から提げており、一見してカメラマンのような身なりをしていた。「あの、いきなりお声掛けしてすみません。どうしてもお礼が言いたくて!」「お、おう。なんだかわからねえが、いまはちょっとな……」 困惑したクロガネはぼりぼりと頭をかこうとし、手を止めた。 デビル・コースケの髪は、ワックスとハードスプレーを大量に使って逆立てているのだ。下手に触ると手がべたべたになってしまう。「あっ、デビルが逃げる!」「おっかけろ!」「ササカマー! トドメだー!」 こっそり退散するつもりが、引き止められている隙に悪ガキどもに見つかってしまった。「フワーハハハ! 悪は決して滅びぬ! 貴様ら人間の心に闇がある限りな!!」 ひとまず咄嗟のアドリブで間をとる。 マントを翻し、バク転を2回。 演出担当に目配せし、大量のスモークを炊かせる。 その白煙に身を隠し、控室へ移動した。 控室といえば聞こえがいいが、実際は個人スーパーのバックヤードだ。 広場に隣接しており、更衣室も備えていることからイベントの際は控室代わりに借りているのだった。「ふー、危ない危ない。段取りがめちゃくちゃになるところだった」 長い経験でハプニングには慣れているが、あのまま第二ラウンドをはじめても盛り上がる目算がない。だらだら引き伸ばしている印象を与えてしまうだけだろう。 そもそも、イベントの目的は商店街を活気づけることなのだ。 イベンターが出しゃばりすぎてよいことなど何もない。「それにしても今日は暑かったな。喉がカラカラだぜ」「はい、こちらをどうぞ。麦茶です。よく冷えてますよ」「お、さんきゅー。それは気が利いてるな……って、おい」 水筒の蓋に麦茶を注いで差し出してきたのは、さきほどの眼鏡女だった。「あー、ここは関係者以外立ち入り禁止なんだ。すまねえが出て行ってくれるか? 麦茶、ありがとうな」 麦茶を一息に飲み干し、コップ代わりの蓋を返す。 冷たい対応かもしれないが、ここは借り物の場所なのだ。 部外者を勝手に入れるわけにはいかない。「すみません。どうしてもお礼が言いたくて……」「お礼ねえ」 そう言われても、クロガネには心当
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第12話 自称ダンジョンカメラマン

「イエスイエスイエスイエスイエースッッ!! 今日の今日まで歯ぁ食いしばって頑張ってきた甲斐があったぜ!!」「あ、あの、喜んでいるところ申し訳ないんですけど……」「ん? ああ、すまん。つい興奮した。ええと、どうかしたのか?」 どうかしたのはクロガネの方だと内心で思いつつ、女は恐る恐る言葉を続けた。「残念ですけど、この動画1本でプロレスの時代が来たっていうのは、ちょっと難しいかなあ……なんて思いまして」「なんでだ? 後楽園ホール60個分だぞ? プロレス史上最大級の客入りだ」 クロガネは、自信満々に胸を張る。 その後楽園ホールに寄せる絶大な信頼は何なのだろうと、またしても女は疑問に思うが、一旦スルーする。「ええっと、オンラインの視聴者数と、リアルイベントの動員数はそのまま比較できるものじゃないですし。ざっとでかまわないので、コメント欄の反応を見てもらえますか? 反響の多いコメントが上位になってるので、上の方だけで大丈夫です」「おう、画面の下にぶら下がってるやつだよな」 クロガネは太い指でスマートフォンの画面をなぞり、コメントを確認していく。「えーと、【伝説のUMAモンスター出現!】【カマプアアって本当にいたんだな】【このモンスター何? はじめて見るんだけど】【パツキンヤンキーざまあw】【レアドロップじゃん。誰か<道具鑑定>よろ】【鑑定乞食乙。ちゃんと金払って依頼しろよ】――なんだこりゃ?」 いくら画面をスライドさせてもプロレスのプの字も出てこない。「なあ、こいつら何の話をしてるんだ? 10層って初心者向けなんだろ? なんでそんなところのモンスターの話題で盛り上がってるんだ?」「あー、そこからわかってなかったわけですか……」 女は両手の中指でこめかみを軽く揉む。 それに合わせて黒縁の眼鏡がくいくいと動く。「何をわかってなかったって言うんだ?」「あのモンスターはですね、普通、10層やそこらで出てくるレベルじゃないんです。50層のフロアボス級、通常モンスターとしてなら70層から80層あたりが適正です」「ほーう、そうなのか。初心者向けにしちゃ、やけに手強いと思ったぜ」 クロガネは首の下をかきながら応じる。 50層だの70層だの言われても、初心者のクロガネはまったくピンと来ないのだ。「つまりですね、今回の動画がバズったのは、7割以上はレ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第13話 仙台駅前ダンジョン第11層 売ります買います<ダンジョンストリート>

■仙台駅前ダンジョン第11層 翌日、クロガネは自称ダンジョンカメラマンの水鏡アカリとともにダンジョンにいた。 アカリの自己紹介によれば、彼女は凄腕のカメラマンであり、同時に敏腕プロデューサーであるそうだ。クロガネの動画を見てそのポテンシャルに気が付き、ぜひ専属カメラマン兼プロデューサーとして組んでほしいと提案してきたのだ。(金ピカの件はきっかけとしてちょうどよかったってところかね。大人しそうに見えて、案外食えないお嬢ちゃんだ) クロガネには自分が騙されやすい性格だという自覚がある。 そこで、一旦ソラに相談したところ、「まずは腕試しってことで、一緒にダンジョンに潜ってみたら?」とのことだった。腕がなければ断ればいいし、腕が良ければ騙されないよう気を付けつつ契約を巻けばいいと、なんともドライな対応だ。 ソラもカメラの専門家ではないし、ダンジョン配信の知識もあまりない。 信用できるのであれば、願ったりの人材ではあるのだ。 なお、今回の探索にソラは同行しない。平日なので学校に行っている。 ソラは事あるごとに中退してプロレスラーとしてデビューしたいと言うのだが、この件に関してだけはクロガネは絶対に譲らない。高校だけは出ろと頑なに言い続けている。 クロガネ自身が高校を中退してプロレスラーになっており、散々苦労した自覚があるからだ。無理に勧めはしないが、進学に必要な蓄えもしている。ソラの気が変われば、大学や専門学校で勉強させてやりたいと考えていた。「はい、着きました。ここがひとまずの目的地です」「<ダンジョンストリート>ねえ。リサイクルショップみてえだな」 アカリに連れられてやってきたのはダンジョンの11層だ。 11層はそれまでとは異なり、石畳ではなくツルツルした光沢のある床が続いている。天井には四角い照明が埋め込まれており、地上の商業ビル並みに明るい――というか、そのまま商業ビルのような内装だった。 ダンジョンストリートというのは、その一角にあるテナントだ。 逆三角形の交通標識のようなロゴを掲げ、赤地に白抜きでダンジョンを模した図形が描かれている。店の入口は開放的で、革鎧や布鎧、鎖帷子といった軽装が中心の陳列だ。兜からブーツまで一式を着せたマネキンも飾られている。「なんだか服屋みてえだな」
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第14話 仙台駅前ダンジョン第11層~第16層 デビュー配信

■仙台駅前ダンジョン第11層「これが500万とは信じられねえな。一体、どこの誰が買うんだ?」「ダンジョンマーケットに出品すればまず買い手がつきますよ。地上のオークションもありますけど」「ダンジョンマーケット?」 またしても聞き慣れぬ言葉に、クロガネは首を傾げる。 プロレス一筋のクロガネにとって、ダンジョンはあまりにも未知の世界だった。「<運営>が管理してるフリーマーケットみたいなものですね。DP決済で税金がかからないので、こっちを利用する人が多いです」「それ、脱税じゃないのか?」 外貨建てでの取引でも税金はかかる。 税務にそこまで詳しい訳では無いが、クロガネも会社経営者としてその程度の知識は持っていた。「脱税にはならないと政府が明言してますね。だから<運営>と政府の間で密約があるなんて噂されてるんですよ。だいたい、8年前にダンジョンが突然現れて、それから突貫で法整備して一般人まで入れるようになっちゃう。この国でそんなことってありえます?」「うーん、言われてみりゃあ、おかしいのかねえ」 クロガネは政治にあまり関心がない。 しかもダンジョンが発生したのは、団体の旗揚げ直後で慣れない経営に四苦八苦していたときのことだ。詳しくニュースを追っている暇などどこにもなかった。「とはいえ、いまはまだ売らない方がいいですよ。未鑑定品は足元を見られやすいですし、何か役立つ力が込められているかもしれません」「そうは言っても、鑑定しねえとどんな効果があるかもわからねえんだろ?」「なので、それが今日の狙いなんです」 アカリが黒縁の眼鏡をくいっと持ち上げる。「今日の狙いは<瑠璃色の審美眼>。<道具鑑定>の魔力を持つレアアイテムです。これがドロップするまでの耐久配信が、コースケさんのデビューになります!」「何も聞かされてなかったんだが……」「ふふふ、デビューしたての配信者は新鮮なリアクションが命ですから」 不敵に笑うアカリに、クロガネはぼりぼりと頭をかいて苦笑いした。 ダンジョンについて予習をすることも禁止されていたが、こういう思惑だったのか。「それじゃ行きましょう! 16層へはエレベーターですぐ行けますよ」「エレベーターまであるのかよ」 うきうきと歩くアカリの背を、クロガネは少し遅れて追いかけた。■仙台駅前ダンジョン
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第15話 仙台駅前ダンジョン第16層 <天使の巣穴>

■仙台駅前ダンジョン第16層 <天使の巣穴>「クロガネさん、今日は何をしに16層に来たんですか?」 クロガネの自己紹介が済んだところで、アカリが質問をする。 呼び方もコースケではなくクロガネに変わっていた。 カメラを構える姿勢も堂に入っており、プロカメラマンというのはフカシじゃなさそうだとクロガネは思った。「あー、なんつったか? なんとかアイってレアアイテムを取りに来た」「<瑠璃色の審美眼>ですね。<道具鑑定>の魔導具ですが、何か鑑定したいものでもあるんですか?」「ああ、こいつだ。なんだか知らねえが、なかなか貴重なものらしくてな」 クロガネは腕を上げ、手首に巻いた牙の首飾りを見せる。「お、コメントが入りましたよ。ありがとうございます。【それ、カマプアアが落としたやつ?】だそうです。そうなんですか?」 アカリの眼鏡はスマートグラスだ。 配信と同期して、現在の同時接続数やコメントなどが表示されるように設定してある。「おお、コメントさんきゅー! あの猪頭はカマプアアって言うんだってな。あいつが落としたもんで間違いないぜ」 同時接続者数はゆるやかだが順調に増えている。 その後、2、3のコメントを拾ってから、アカリは話題を切り替える。「それでは、そろそろ本題に戻りましょう。クロガネさんは、ここ<天使の巣穴>は初めてですか?」「天使の巣穴?」「おおーっと、その反応はどうやら初めてですね。では張り切って行ってみましょう! 木目のタイルからは安全地帯ではなくなるので、気をつけてくださいね」「お、おう!」 アカリの白々しい演技に内心で呆れつつ、クロガネはカメラに背を向けて木目のエリアに入った。 数メートル進んで足を止める。 どうも奇妙な気配がする。 四方八方から見られているような、首筋がざわざわする感覚。「おや、どうしました? 何か気になることでもありましたか?」「いや、別になんてことはねえんだが……」 クロガネは辺りを見回す。 両手を広げればぶつかりそうな、棚で仕切られた狭い通路。 美少女フィギュアや、ソフトビニール製の怪獣、精巧に作られたロボットのプラモデルなどが規則性なく並んでいる。大きさはまちまちで、小さなものは手のひらサイズ、大きなものはクロガネ以上の上背があった。「あっ、わかった
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第16話 仙台駅前ダンジョン第16層 ドロップ率0.1%なら千匹倒せば確実か問題

「ドロップ率は0.1%です! がんばってください!」「いまその情報は欲しくねえっ!」 小さな包丁を持って飛びかかってくる幼児向けの人形に、血濡れた牙を剥く猫のぬいぐるみ。主砲が火を吹くラジコン戦車にミサイルを撃つヘリコプター。戦闘機形態と人間形態に変形しながら一撃離脱を繰り返すロボット軍団―― クロガネはそれらを踏み潰し、蹴り飛ばし、手刀で、鉄槌で、正拳で裏拳でフックでアッパーで肘で頭突きでぶち壊し、身体に取り付いてきたものは引き剥がしてぶん投げる。 最初の女騎士とロボットのような等身大のものはめったにいないようで、さながら小人の国で大暴れをするガリバーといった有様だった。「くっそ! こんなのを千匹も狩らなきゃいけねえのかよ!」「あ、コメントです。【ドロップ率0.1%だと、千匹倒してドロップする確率は約63%。つまり4割ドロップしない。がんばれ】だそうです。語尾にWが3つ付いてますね。草生えるってやつです」「確率もっ! 草の話も要らねえっ!」 今度はウサギのぬいぐるみが顔面に飛びかかってくる。 首を掴んで止めると、バツ印のようなおちょぼ口が十字に裂け、頭部がまるごと口になる。真っ赤な口内には無数の牙がめちゃくちゃに生えている。シャァァァと蛇のような威嚇音とともに、喉奥から触手が飛び出る。 クロガネは触手を反対の手でつかみ、ハンマー投げの要領でブンブンと振り回す。 ウサギめいたモンスターの耳が戦闘ヘリのローターに絡まり、次のヘリも巻き込み、飛行船の横っ腹に突っ込んで爆発炎上した。 飛行船は燃え上がりながら墜落し、カーキ色の軍服を着た小人の群れに落ちる。軍服たちは炎に巻かれ、関節をぎくしゃくと動かしながら黒い煙を上げて溶けていく。「うーん、すごい迫力。まるっきり怪獣映画ですね。お、コメントです。【いいぞ! ぶち壊せ! 大怪獣クロガネラ!!】だそうです。がんばれ、クロガネラ!」「誰がクロガネラだっ!!」 足元に突っ込んできた鉄道模型を蹴り飛ばす。 10両編成の新幹線はやぶさが横転し、銀色の軌跡を曳いて木目の床を滑っていく。ひらひらのドレスを着た美少女フィギュアの群れを轢き潰し、銃を構えた女子高校生のフィギュアの群れを轢き潰し、馬のような耳と尻尾を生やしたアイドルのフィギュアの群れを轢き潰す。「おっと、クレームです。【俺の〇〇たん
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第17話 仙台駅前ダンジョン第16層 vs サソリ男

 それの半身は、大雑把に言えば、人に似ていた。 頭はひとつ、腕は2本。手には五指があり、掌をクロガネに向けている。 しかし、頭が異形だ。 アクリルやガラスで出来た大小の目がびっしりと並んでいた。鼻も口も耳も髪もない、作り物の目玉を寄せ集めた頭。無数の球体が組み合わさった近似球体。 しかし、肌が異形だ。 毛穴のない乳白色のソフトシリコンを土台に、色とりどりのプラスチック片、樹脂を固めた偽宝石、テグスで繋いだビーズの数々。それらが非硬化性のパテで接着され、生き物じみた柔らかい動きをしている。 しかし、下半身が異形だ。 腰から下が、L字を描いて背後に伸びている。表面は金属片で覆われ、照明を反射して黒光りしている。脚は合計八本。四対の脚が胴の脇から生えている。昆虫じみた多関節で、ゆらゆらと前後左右に身体を揺らしている。 それには、尾があった。 六つの節からなる尾は、楕円の数珠を連想させた。ひとつひとつの節はラグビーボールほどの大きさで、連動してなめらかにしなり、蛇の如くうねる。 先端の節には鉤型の太く長い針が一本飛び出し、その周りは短く尖った円錐の棘で覆われている。まるで西洋騎士の星型戦棍のようだ。「なんだあ? サソリみてえな野郎だな」 クロガネは片眉を釣り上げてそう評する。 素材の違いなど、細かなことに目をつむれば、それは確かにサソリ男と呼ぶのにふさわしい形をしていた。「コ、コースケさん! 気をつけてください! そんなやつ、出現報告になかったですよ!」 背後からアカリが叫ぶ声が聞こえる。 不測の事態に演技ができず、素に戻っているようだ。 クロガネは、背を向けたまま右の拳を突き上げて応じる。「おう、そりゃ楽しみだ。ばっちり撮ってくれよ」「そういうことじゃなくてですね!?」 クロガネは両手を軽く広げてサソリ男に向かって構える。 上背は同じくらいだが、体長では軽く倍はある。 尾も含めるなら3倍以上だ。 すり足で間合いを詰めていく。 明らかに人間からかけ離れた異形。 何を仕掛けてくるのかまったく読めない。 サソリ男もまた、間合いを詰める。 前後左右に体を揺らしながら、八本の脚を前に進める。 目玉でできた頭が揺れるたび、カシャカシャと乾
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第18話 仙台駅前ダンジョン第16層 vs モンスターカポエリスト

 クロガネの戦い方が変わった。 格闘技に詳しくないアカリにも、ひと目でわかる変化だった。 それまではどっしりと腰を落とし、すり足で移動していた。 しかし今は、ボクサーのようにステップを刻んでいる。 リングで見せる軽業もそうだが、クロガネの巨体が軽やかに動き回る姿はトリック映像を見せられている気分になる。 ステップイン。 間合いを詰める。 乾いた炸裂音が響く。 クロガネの鋭いローキックがサソリ男の下肢を叩いたのだ。 ステップアウト。 間合いを開ける。 風切り音と共にサソリ男の尾が過ぎ去る。 クロガネは、間合いを自在に出入りしながらローキックを浴びせ続けている。 炸裂音。風切り音。炸裂音。風切り音。 みしり、と何かが軋む音。 炸裂音。炸裂音。破断音。 ゴム紐が限界を超えて千切れる音。 サソリ男の左前足が1本、火花を散らしながら千切れ飛んだ。「へっ、やっと1本もらったぜ」 マスクの下で、クロガネが不敵に笑う。 サソリ男が頭を震わせ、カシャカシャと音を立てる。(すごい、最初は不利だったのに、あっという間に逆転しちゃった……) アカリはカメラを回しながらその光景に圧倒されていた。 実況をすることも、コメントを追うことも忘れてしまっている。【サソリ人間をカポエイラ使いに見立てたんだな】【なるほど、それでレスリングスタイルからキックボクシングに切り替えたわけか】【どっちかっつうとムエタイだな】 目の肥えた視聴者から、解説のコメントが入っている。 カポエイラとは、南米の黒人奴隷が編み出した格闘技だ。両手が枷で封じられても戦えるよう、蹴り技が主体となっている。ジンガと呼ばれる舞うようなステップで幻惑し、変幻自在の蹴り技で敵を仕留める実戦格闘技である。 一方、クロガネが切り替えたムエタイは、キックボクシングの元にもなったタイの伝統格闘技だ。 試合前にはワイクルーという舞いを神や精霊に捧げ、多彩かつ強烈な蹴り技で敵を仕留める。ムエタイの原型はラウェイという軍隊格闘技であり、やはり実戦性に重きをおいた武術である。 東南アジアと南米という、はるか遠くで生まれたふたつの格闘技。 地理的にも文化的にも接点のないそれらには、舞いと蹴りという奇妙な共通点があった。 だが、まるで異なる点もある。 サソリ男も蹴られっぱなし
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第19話 カメラが回っているうちは配信です

「あー、ちくしょう。痛ってえなあ」 サソリ男にトドメを刺したクロガネが、立ち上がって身震いする。 周囲に血と汗が混ざった液体が飛び散る。 まるで水浴び後の虎が身体を震わせているようだ。「コースケさん、大丈夫ですか!?」「おう、派手に血は出ちゃいるが、見た目ほどじゃねえよ」「そ、それならいいですけど……。ひとまず手当をしないと」 アカリは三脚を立て、それにカメラをセットする、 鞄から救急箱を取り出して、クロガネの横に膝をついた。 この状況でも撮影を忘れないとは見上げたプロ根性だ、とクロガネは感心する。「その前に、弾を抜くからちょっと待ってくれ」「そういうのはお医者さんに頼んだ方が……」「いらんいらん、こういうのは慣れてる」 クロガネは腹の前で両手を組む。 ボディビルダーのポージングのようだ。 そのまま歯を食いしばって力を込めると、全身の筋肉が膨れ上がる。 みちみちと筋肉がきしむ音がして、傷口からサソリ男の棘がボトリボトリと落ちた。「よし、これであらかた抜けただろ。傷を洗うから手が届かねえところを頼むわ」「は、はい」 あまりのことにろくに声も出ない。 この人は本当に自分と同じ人間なんだろうか、と疑問に思いつつも、言われるがままに治療を手伝う。 傷口を水で洗い、軟膏を塗ってから包帯を巻いていった。「包帯はダンジョン産品です。普通の包帯より、ずっと治りが早いはずですよ」「おお、そんなもんまで用意してくれてたのか。助かるぜ」 ダンジョン産品とは、読んで字の如くダンジョンから算出される品物のことだ。低級の品であれば、地上の店でも取り扱いをされており、クロガネも時々お世話になっている。 ダンジョン産品には地上の科学では再現できない効果が込められており、最下級品に相当するこの包帯でも通常より何倍も怪我の治りが早くなる。上級品ともなればその効果は計り知れず、医療品のたぐいで言えば、首を切り落とされようが心臓をくり抜かれようが、魂が肉体を離れる前に使えば蘇生できるとまで言われている。 もっとも、そのような品は億円単位で取引される超高級品だ。 クロガネはもちろんのこと、アカリも目にしたことすらない。「ところで、アンタは大丈夫なのか? 勝手に暴れちまって気が回らなかったが……」「お気遣いありがとございます。で
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第20話 サソリ人間<ギルタブルル> 

【UMA】サソリ人間<ギルタブルル>【再び!】1 いつかはバズる名無しさんまたUMAが見つかったなttps://xxxxx.maze/s98845/video1209Wiki(検証中)ttps://xxxxx.maze/wiki/monster/ギルタブルル2 いつかはバズる名無しさんまたってどゆこと?3 いつかはバズる名無しさんちょい前にカマプアア見つかったろ出現条件もだいたい絞り込まれた4 いつかはバズる名無しさん俺のターン!子豚ちゃんを生贄に捧げ、カマプアアを攻撃表示で召喚!なやつだな5 いつかはバズる名無しさんあれ検証するやつらの気が知れんわ絞れたっても「出現しない方法」がいくつかわかっただけだし6 いつかはバズる名無しさんうまくいかない方法を発見するのは重要なんやでトーマス・エジソンも言っている7 いつかはバズる名無しさんギルタブルルも出現条件特殊なん?8 いつかはバズる名無しさん<天使の巣穴>での連続撃破とかそういうのやろなあ9 いつかはバズる名無しさんそんな単純か?あそこは狩り場にしてるやつもいるだろ10 いつかはバズる名無しさんおっさんが棚ぶっ壊してたからそのへんにヒントありそう11 いつかはバズる名無しさんあそこの棚って壊せんの?第五位階のスクロールぶっ放したことあるけどショーケースのガラスに罅も入らなかったぞ?12 いつかはバズる名無しさんなぜそんなもったいないことをw13 いつかはバズる名無しさんバズると思ったんだよ言わせんな(´;ω;`)ブワッ14 いつかはバズる名無しさんつか、おっさん強くね?15 いつかはバズる名無しさんギルタブルルがどんくらいかわからんからなんとも言えん16 いつかはバズる名無しさん飛ばさないでその前見ろよリビングドールの大群相手に素手で無双してる17 いつかはバズる名無しさん倍速で見るとスカッとするw18 いつかはバズる名無しさんこれがファスト世代か・・・19 いつかはバズる名無しさん等身大のやつが適正レベル20だっけ?20 いつかはバズる名無しさんそんなもんだね無生物系で弱点らしい弱点がないから初心者が凸るとまず事故る21 いつかはバズる名無しさんいまさら気づいたんだけどこのプロレスラーってカマプ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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