■仙台駅前ダンジョン第XX層 <????> もうもうと土煙が立ち込めている。 地面は柔らかく、細かな泥が分厚く堆積していた。 仄青く光る鉱石と灰色の土石が入り混じったものが辺り一面に散乱している。「痛たたたた……」 泥の中から、人影が立ち上がる。 首から一眼レフカメラをぶら下げ、黒縁の眼鏡をかけた女――水鏡アカリだった。 肩がけのカメラバッグも失われていない。 スマートフォンを取り出すが、圏外。 崩落によって基地局が破壊されてしまったのだろうと察する。「まさか崩落に巻き込まれるなんて……」 ダンジョンの崩落は珍しい現象ではあるものの、まったくないわけではない。 ダンジョンの探索をしていれば、痕跡がしばしば見つけられる。 だが、崩落の瞬間が目撃されることは極めて稀だ。 ましてや巻き込まれた者などほとんどいない。 ――巻き込まれた者が、生還していないだけかもしれないが。 一緒に落ちてきたサハキン・ナイトの死体が、巨大なイソギンチャク型のモンスターの触手に囚われていた。<五行娘娘>の攻撃でも形を残していた堅固な鎧が、バリバリと音を立てて食いちぎられている。 アカリはイソギンチャクから距離をおいて、慎重に歩き始めた。<記者証>を持つものはモンスターやトラップの攻撃対象にはならない。 しかし、巻き込まれれば話は別だ。 また、今回の崩落のような自然現象に対しても効力はない。 アカリが大怪我を負っていないのは、純粋に幸運の結果だった。 泥がクッションになり、上から瓦礫が降ってくることもなかったのだ。 一歩間違っていれば命はなかっただろう。「<拡散照明>」 アカリは右手を伸ばし、<カメラマン>のスキルを発動した。 白い光が仄暗い空間を照らし拡がっていく。 光に驚いたのか、さっと離れていく生き物の影がいくつか見えた。 仙台ダンジョンでアカリが潜ったことがあるのは30層までだ。 照明を左右に動かし周辺を確認してみるものの、見慣れぬ景色ばかりでここが何層なのかすらもわからない。「これ、メルたちも巻き込まれてますよね。大丈夫でしょうか……」 ゆっくりと足元を探るように歩く。 一歩歩くたびに足首まで泥に埋まる。 泥の下で長細い何かがうねり、逃げ
Last Updated : 2026-07-13 Read more