「ええと、まずはコースケさんの怪我の状態から説明しますね。ご心配でしょうし」 食事を終え、そのまま食堂での打ち合わせとなった。 アカリは黒縁の眼鏡を中指でくいと持ち上げ、タブレットを取り出した。 それに配信のアーカイブ映像を映しながら説明する。「一番の負傷は右肩の裂傷です。ここでサソリ男の尻尾がかすったときですね」 クロガネは包帯の上から右肩をボリボリとかく。「次に全身の刺傷と熱傷。これは尻尾が爆発したときのものですね」「ああ、これはさすがに痛かったな。メキシコでショットガンをぶち込まれたときを思い出したぜ」「は?」 クロガネがとんでもないことをさりげなく口にする。 アカリは思わず固まってしまった。 話が逸れるのを承知で、つい聞き返してしまう。「あの、ショットガンって冗談ですよね?」「冗談じゃねえよ。メキシコに修行に行ったときに八百長を持ちかけられてな。断ったら撃ってきやがったんだ。ったく、ヤクザもんってのはどこの国でもろくなもんじゃねえ」 クロガネが顔をしかめているが、その口ぶりはまるで犬に噛まれた話でもしているようだ。 高レベルの配信者でも、生身で銃を食らって平気でいられるものはそうはいない。 クロガネのタフネスは、ダンジョン基準で考えても明らかに異常だった。「弾はちゃんと抜いたの? あ、メキシコの話じゃなくて、今日の怪我の方ね」「弾ならバッチリ抜けたぜ。肉の中に潜り込むほどじゃなかったからな」「念のため、あとで傷を診るから」「おう、悪いな」 平然とこんなやり取りをするソラも大概だ。 アカリもダンジョン配信に携わって荒事にはかなり慣れたつもりだったが、まさか地上でこんな修羅場を潜っている人間がいるとは思いもよらなかった。「あっ、そういえば弾丸抜きのときに、同接数が2,000を超えましたよ。瞬間風速でしたが、切り抜きも複数作られて、そっちもかなり再生されてます」「キリヌキ?」「視聴者が編集して、見どころをだけをシェアできる機能ですね。例えばこれです」 アカリの指が、タブレットを操作して切り抜き動画をタップする。 そこにはボロボロになったTシャツを着た、血まみれのクロガネが映っている。 サソリ男との死闘が終わった後の映像だ。 画面の中のクロガネは、ボディビルダーのようなポーズで
Last Updated : 2026-07-13 Read more