リング上空でソラとイバラが火花を散らす間、地上ではクロガネと鮫男の戦いが続いていた。 といっても、ソラたちの目まぐるしい戦いとは対照的に、こちらの戦いは静かだ。 クロガネはリングの中央に陣取り、腰を落としてかまえている。 その姿は血まみれで、全身が擦過傷だらけだ。 だが、その傷を負わせた敵が見当たらない。 リング上にはクロガネと、ロープ際にうずくまるオクしかいなかった。 ――ざぶん 背後で水音。 クロガネはすかさず振り向き裏拳を振るう。 しかし、手応えはない。 背中に衝撃。 さながら灼熱の鞭で打たれた痛み。 奥歯を噛み締め苦痛を飲み込み、後ろ蹴り。 だが、これも空を切る。 背中を生温かいものが流れる感触。「ちっ、出たり引っ込んだりラチが開かねえ。とんだ塩試合だぜ」 クロガネと<イソナデ>の戦いは、終始この調子だった。 マットからの奇襲、そしてマットへの離脱。 ひたすらこのヒット・アンド・アウェイが繰り返されている。 気配を読んでなんとか対応しようとしているが、クロガネは神秘的な武術の達人などではない。気配を読むといっても心眼で見極める――などといったオカルトではなく、音やマットの振動を感じようとしているだけだ。 当然、そんな戦い方など経験したことはない。 読みの精度は低く、大まかな場所へ勘で攻撃するしかない。 フェイントにもいいように引っかかり、手傷を増やしていた。 深手はないが、傷の痛みと出血は確実にクロガネを消耗させている。 あの鮫男は、文字通りじわじわと削り殺す腹積もりなのだろう。「ちまちまして華がねえ。そんならハンデをやるぜ」 何を思ったか、クロガネはリングの真ん中に大の字で寝た。 その姿は無防備そのもの。寝そべったまま、大声を張り上げる。「正面から闘り合うのが怖ええんだろ? 寝ててやるからかかってきやがれ!」 言うまでもなく挑発だ。 ブラジリアン柔術などでは、あえて自分から倒れて寝技を狙うテクニックもあるが、そんなものではない。 防御どころか攻撃に転じることも難しい、不合理極まる姿勢である。「呆れた呆れた、あなた、ゴリラ並みの頑丈さかと思えば、おつむの方もゴリラ並みなのですネ」<イソナデ>の声。 クロガネから十分に離れたところで上半身を出し、両
Last Updated : 2026-07-13 Read more