「あの時のことを調べるなんて、出来ると思っているのか……1億円だって?何十億積もうと、真相を手に入れられるわけがないだろ」だが、その時遥の意識は、すでにぼんやりとしていて、体は重く、思い通りに動かないでいた。体が、まったく動かない……彼女は必死にもがいた。床に爪を立て、耳障りな音を響かせる。ようやく体を起こすと、充血した瞳で卑猥な老人を鋭く睨みつけた。そんな姿を見て、老人は少し驚いた様子を見せた。薬が効いているはずなのに、なおも抵抗してくるとは思わず、慌てて再び押さえ込もうとする。遥は憎々しげに歯をむき出し、老人の腕に深く噛みついた。老人は悲鳴を上げ、彼女を激しく振り払うと数歩後ずさった。遥はその隙をつき、ふらつきながら出口へ走り出した。足がもつれて、いつ倒れてもおかしくなかった。それでも諦められず、心の中には逃げるという強い思いだけがあった。老人はすぐにはっと気が付いた。元々は指示通りに演じるだけだった。でも、今目の前にこれほど艶めかしい獲物がいるのだから、それに……先ほどの抵抗に腹を立てた彼は、依頼主を待たずに手を出すことに決めた。老人は悪態をつきながら、遥の後を追いかけた。あと少しで捕まる、そう思った瞬間、ドアが蹴り開けられた。現れたのは怜司だった。目の前の光景に心臓が締め付けられる思いがした。怜司は息を荒らげ、遥を腕の中に抱き上げると、掠れた声で呼びかけた。「遥!」彼は手に青筋を立てるほど怒りに震え、全身から険しい雰囲気を漂わせた。老人は怜司の顔を見ると顔面蒼白になり、足を小刻みに震わせた。こんな土壇場で、誰かが乗り込んでくるとは思っていなかったからだ。しかもそれが、ほかならぬ怜司だとは。怜司は冷ややかに老人を見つめ、漆黒の瞳に激怒を宿らせていた。「言え。誰に言われてやった」老人は恐怖に震えながら、しどろもどろに答えた。「闇市場……に来るような連中はみんな同じじゃないか。誰かに指示されたんじゃなくて、皆ただの小銭稼ぎをしたいだけですよ」怜司も分かっていた。闇市場でこの小心者から何かを聞き出すのは無理だと。さらに、ここは敵の縄張りでもある。今は何より、遥をこの危険な場所から連れ出すことが先決だ。今回の件については、必ず後で落とし前をつ
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