さて、安定や平和という状態はその中に生きる存在の積極的努力によって維持されるものである。 現状の辰巳家は表面を見れば落ち着いたと言えるだろう、惠が穏やかに過ごせているように。「ん、で? 早瀬家の調査はちぃっときつそうっすかね?」「へい。大神サマも無茶なこと言うよと思わず愚痴っちまうくらいには」 だがその表面を剥がせばやはり維持のために努力している存在が露わになる。 落ち着いたと言うよりは落ち着き始めたと言えるタイミングだからこそその表面は実に脆い。「……具体的には?」「早瀬の息がかかっている有力者が多すぎますわ。政府高官、企業関係者……挙げればキリがねぇ」「挙句、潜り込んでる企業でも早瀬派なんつ―もんができてる、っすか。なんともまぁお手上げっすね」 日向は部下からの報告に肩を落としながら大きくため息をついた。 辰巳家の新しい生活の形、その地盤を固めたかったと言う部分もあるが。 何より一言、やはりタイミングが悪いと言えるだろう。 惠を受け入れる方針が固まったところで、大神――天宮家からの勅命だ。 勅命自体は構わないにしても相手が相手、嫁に迎え入れようと言うタイミングで嫁の実家を洗えとは何事かと。「よっぽど、早瀬家が真っ黒だと見做されてると」「そっすねぇ。惠さん関係なく警戒すべき一家だったってのもそうっすが、なんとも因果なもんすよ」 早瀬家の力は辰巳家と似通っている部分が多くある。 キーマンを抑えることで相手組織全体に影響を及ぼす手法など特にそうだろう。 それだけに、迂闊な動きをしてしまえば早瀬に気取られ足元を掬われかねない。「あーくそ。勅命賜った後に工藤のボンが来てたら助かってたっすのに」「ボンて」「あんなもんボンで十分っす! 辰巳にアポなしで来るとか喧嘩上等っすよ!? オヤジも惠さんの前じゃなかったらブチ切れてたっすよ絶対!」 日向の反応を部下は苦笑いしながらも頷き同意する。 事実、そ
최신 업데이트 : 2026-10-06 더 보기