森での調査が一段落したその夜、祐真は宿舎のベッドに横たわっていた。 しかし眠気は訪れず、代わりに胸を締めつけるような痛みが押し寄せてくる。 ──まただ。 目を閉じた瞬間、彼は自分の「内側」に引きずり込まれていった。 そこは暗い廊下だった。壁も天井も曖昧で、ただ濃い影と冷たい空気が広がっている。 足音が響く。 振り返ると、過去の自分が立っていた。まだ二十代前半、捜査に血走っていた頃の祐真だ。 その目には焦燥と怒りが宿っている。「お前はまた同じことを繰り返すのか?」 若い祐真が、低く問いかけてくる。 胸に鋭い棘が刺さったような痛みを覚え、祐真は言葉を失った。 ──あの事件。 守れなかった少女。救えなかった命。 彼の心に焼き付いた失敗は、時を経ても色あせることはなかった。 廊下の奥から、少女の声が響く。「どうして、助けてくれなかったの……?」 祐真の足は鉛のように重く、声のする方へ一歩も進めない。 手を伸ばしても届かない。 罪悪感の濁流が押し寄せ、彼を溺れさせる。 なぜ自分はこの事件に執着するのか。 ──答えはわかっている。 もう二度と、同じ後悔を繰り返したくない。 それだけが、彼を突き動かしていた。 だが、過去の自分が再び囁く。「執着は、ただの逃げじゃないのか? 本当に救いたいのは誰だ?」 祐真は言葉を詰まらせ、暗闇の中で立ち尽くす。 やがて廊下の先に扉が現れた。 重く黒い扉。その向こうに進むことを、彼の心は拒んでいた
Last Updated : 2026-07-27 Read more