ミコト・アセットマネジメント株式会社の登記簿には、美琴の知らない三年間が整然と並んでいた。設立年月日、資本金、本店所在地、事業目的、代表取締役。どの欄にも不自然な空白はなく、むしろ何も知らない美琴の方が間違っているように見えるほど、会社としての形だけは整っている。久世の事務所で登記記録を一枚ずつ確認しながら、美琴は自分の名前が印刷された代表者欄を何度見ても、そこに自分の人生が存在する感覚を持てなかった。設立は三年前の五月だった。華帆が榊原家へ現れ、美琴が父の残した最後の家族だと信じて屋敷へ迎え入れた、その直後である。事業目的には資産管理、有価証券の取得および保有、医療法人への投融資、債務保証、医療関連事業への出資が並び、本店所在地は榊原医療開発の関連会社がいくつも入居する古い雑居ビルになっていた。美琴はその住所を知っていた。会社の倉庫整理で何度か請求書を送ったことのある建物だったが、自分名義の法人がそこに存在すると聞いたことは一度もない。「株主総会議事録もあります」久世が別の束を机へ置いた。設立時から毎年、定時株主総会が開かれたことになっている。取締役の選任、決算承認、融資枠の設定、関連会社との取引承認。そこにも〈榊原美琴〉の署名があり、実印が押されていた。印鑑証明書まで添付された書類もあり、外から見れば、代表者本人が何年も会社を運営してきたようにしか見えない。美琴は議事録の日付を見て、手元の家計簿を開いた。最初の株主総会の日、美琴は華帆の検査に付き添って大学病院へいた。二年目の決議書の日には、喜和子の法事のため朝から寺にいた。三年目の取締役決議の日には、榊原医療開発の資金繰りが逼迫し、美琴自身が取引先へ支払い延期を頼んでいた。そのすべての時間に、別の場所では美琴が代表取締役として決裁したことになっている。「会社の口座へ、私の旧口座の解約金が入っているんですね」「それだけではありません」久世が画面を回した。銀行から取得できた範囲の取引履歴では、ミコト・アセットへ美琴名義の預金が複数回移され、その金が短期間で榊原医療開発や関連会社へ貸し付けられている。貸付金の一部は返済されず、別の融資へ振り替えられ、損失を表面化させないための穴埋めに使われていた。さらに三つの病院へ資金を供給し、その直後に榊原医療開発が移植関連システムの契約を獲得している。美琴は数字
آخر تحديث : 2026-09-03 اقرأ المزيد