翌朝、リリアはいつもより早く目を覚ました。 昨夜の紙片の文字が、ずっと頭から離れなかった。 ――月華の代償を消す方法は存在する。 ――ただし、それは銀狼の呪いを解くことと同じではない。 その一文が、胸の奥に棘のように刺さっている。 代償を消す方法。 それは望んでいたものだ。 リリアが命を削らずに、月華を使えるようになるかもしれない。 けれど、銀狼の呪いを解くことと同じではない。 つまり、自分が助かる道と、レオンが助かる道は別なのかもしれない。 その可能性が怖かった。「……駄目」 リリアは寝台の上で首を振った。 一人で考えない。 一人で結論を出さない。 約束した。 レオンと。 だから今は、まず知る。 真実を。 どれだけ残酷でも。 ◇ 朝食室へ向かうと、レオンはすでに席についていた。 黒い上着を羽織り、いつも通り背筋を伸ばしている。 だが顔色はまだ悪い。 昨夜の白月塔での戦いが響いているのだろう。「おはようございます」「おはよう」 返事は短い。 けれど、以前より自然だった。 リリアは席につき、まず彼をじっと見た。 レオンが眉を寄せる。「何だ?」「顔色が悪いです」「悪くない」「言い直してください」「……少し悪い」「正直でよろしいです」 レオンはわずかに不満そうな顔をした。「子供扱いするな」「患者扱いです」「便利な言葉だな」「便利です」 リリアがそう答えると、彼は諦めたように小さく息を吐いた。 そのやり取りを見ていたミアが、背後で口元を押さえている。 笑っている。 グレイも表情は変えないが、どことなく満足そうだった。
Last Updated : 2026-08-27 Read more