六月になった。 夏が来た。 去年の夏と同じように、朝から日差しが強かった。 でも、去年と今年では、少し違った。 去年の夏には、父の名誉回復の審議が始まっていなかった。 今年は、始まっている。 農地の薬草栽培も、去年は始まっていなかった。 今年は、ベルトが一カ月かけて土の準備を進めていた。 同じ夏が来るたびに、ルシェムは少しずつ違う場所になっていた。 六月の第二週に、レインが来た。 今回も、馬で来た。 昼前に着いた。 エリナが長屋の前で待っていた。 レインが馬から降りた。「来た」「来てくれた」 いつもと同じやり取りだった。 でも、今回は少し違った。 レインが、エリナを見たままで、少しだけ間を置いた。「夏のルシェムだ」「去年の夏とは、少し違います」「どう違う?」「来年の夏は、また違う気がします」「毎年、そうだな。来るたびに、前と違う」「でも、変わらないものもあります」「何が変わらない?」「待っている、という気持ちが変わらない」 レインが少しだけ、口の端を動かした。 今回、師匠は来なかった。 レイン一人だった。「師匠は?」「夏の間は、学院での研究に集中している。農地の薬草の件で、学院側で並行して確認したいことがあるらしい」「師匠も、農地の件に関わってくださっているんですね」「そうだ。ベルトさんが試している環境データを、学院の知識と照らし合わせたいと言っていた」「ベルトに伝えます。師匠にデータを送れるように、記録の形を整えておいてもらいます」「助かる」 ゴードンが今日の書類を一枚持ってきた。「農地の一カ月目の記録です。ベルトさんがまとめてくれました」「見せてください」 エリナが受け取った。 レインも横から覗いた。 一カ月で、ベルトが記録し
Last Updated : 2026-10-27 Read more