All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 21 - Chapter 30

101 Chapters

王と剣

  僕が教室の中に入っていくと、教室にいる者たちの視線から戸惑いが感じられる。 それを気にした様子もなく、僕はブライド様が座る席の隣に腰を下ろした。「何だ?」「おや、おはようございます。ブライド様じゃないですか。お久しぶりです」 僕は笑顔で、ブライド様に挨拶をする。「わざとらしい奴だ。ふん、ずっと学園に来ず、何をしていた?」「おや? 僕にご興味がありますか?」 僕は話しかけられたことが嬉しいと言わんばかりに、微笑みかける。 大柄な体に、強者を感じさせる雰囲気。さらに、ブライド様の後ろに控える男は、とんでもない殺気を放っている。 いやいや、この場だけ戦場のような空気だね。 エリザベートとアイリーンには、ジュリアのために他の授業を受けてもらってよかった。「ふん、貴様が変人として自由に振る舞っている分には面白い。だが、その才を我のために使う気になったか?」「何を言っているんですか、ブライド様。僕は平凡な公爵家の次男ですよ。エリック兄上の代替品として、兄の後ろに控えているしか能がない人間ですよ」 先ほどから殺気をぶつけてくる彼は、僕の軽口に苛立ちを覚えている様子で、殺気を僕だけに向けてきます。 公爵領で魔物を討伐していなければ、ビビっていたかもしれませんね。まぁ、火龍に比べれば、まだまだ彼の方が荒削りなので、可愛いものですね。「お前を能なしだと我に思わせたいのか? くくく、それは無理だな」「ほう、僕が能なしではないと? それは嬉しいですが、買いかぶりすぎでは?」「お前がそうしたいのであれば、尊重してやる。そんなことよりも、貴様はどこに属するつもりだ?」「属する?」「とぼけるな! 我は戯れに付き合ってやったのだ。質問には答えよ」 傲慢不遜ながらも楽しそうに笑う少年、ブライド君は、未完成であるがゆえに可愛く見えますね。「そうですね。皆さん、興味深い活動をされていると思うので、じっくりと考えるつもりです」「そうか。お前ならば、いつでも歓迎しよう」「ありがとうございます。ブライド様、友人として嬉しいです」 僕は握手を求めるように、ブライド様へ手を差し出す。その行動があまりにも意外だったのか、ブライド様を含め、教室にいた者たちが全員驚いた顔を見せた。「我を友人だと?」「ええ。帝国での身分はブライド様の方が上ではありますが、互いに
last updateLast Updated : 2026-08-03
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同年代の男子たち

  午後になり、エリザベートとアイリーンは他の授業があるということで、ジュリアと合流した。 モフモフな頭を撫でながら、次の授業に参加する。 次の授業は実技授業であり、集団競技をするようだ。 授業内容:「フラッグ奪取」 学園戦術実践科の特別授業として、「フラッグ奪取」という団体競技が行われる。これは、チーム戦を通じて戦略的思考や指揮能力を養うことを目的としている。 ルール概要 1、目的:自チームのフラッグを守りつつ、敵チームのフラッグを奪取する。制限時間内にフラッグを最も多く奪取したチームが勝利。  2、チーム構成:四つのチームに分かれ、陣地を決めてフラッグを配置する。 各チームはリーダーを含む十名で編成。 役割・ガーディアン:自陣のフラッグを守る。・アタッカー:敵陣へ攻め込む。・スカウト:敵の動きを探る。 3、勝利条件:敵陣からフラッグを奪取し、自陣に持ち帰る。制限時間(一時間)終了時に、最も多くのフラッグを保持しているチームが勝利。 授業内容の説明を聞き終え、代表決めに入ると、すぐに四人の代表が選出される。 各国の代表が集まる学園らしいスポーツだよね。「君が最後のリーダーか?」 四チームの代表者が決められ、僕もその一人に選ばれてしまった。 そんな僕に声をかけてきたのは、アイス王子だ。 爽やかでキラキラとした見た目の王子様。まさしく、女性の理想とする男性が目の前で微笑んでいますね。 もしも僕の心が女性ならば、一目惚れしてしまうかもしれません。 理想の白馬の王子様という奴が存在しています。「これは初めまして。帝国公爵家の次男、フライ・エルトールです」 無難に自己紹介をして、握手を求めるように手を差し出す。 チームは、各国や身分によって自然と分かれているようだ。帝国の者たちからすれば、僕の身分が一番高いので、遠慮して代表を譲ってきた。 ブライド皇子がいれば、彼が代表者になっていたでしょうね。 残念ながら、彼は同じ授業を受けていません。「うむ。私はミンティ王国第一王子、アイス・ディフェ・ミンティだ。帝国に貴殿のような男がいたとは知らなかった」「はは、学園をサボっておりましたからね」「何? サボっていた?」 怪訝そうな顔をされてしまいますね。「帝国は変わった者が多いな」「そうですか?」「言いたくはないが
last updateLast Updated : 2026-08-03
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若いっていいよね

  学園都市の空はどこまでも青く、清々しい。 授業として行われる特別競技「フラッグ奪取」の準備が進んでいた。 僕は帝国チームのリーダーに任命されました。隣には忠実な従者のジュリアが控えていて、彼女のモフモフな頭を撫でながら、チーム編成を眺めています。「フライ様、以上ですが、よろしいですか?」「うん。大丈夫だよ。君の名は?」 僕に代わって、みんなをまとめて指揮を執ってくれた男子生徒がいた。「チュロス・ブリーフと申します。ブリーフ子爵家の三男で、この場ではエルトール様の次に身分が高いため、指揮を執らせていただきました」「いいね。僕は帝国チームのリーダーという……責任重大な立場だ。だから、指揮は君に任せようかな」 こんなのは、適当に任せるのが一番だね。 下手に僕が指揮をしても、まったく要領がつかめないからね。「よろしいのですか?」「助言はしてもいいかい?」「もちろんです! このチュロス、エルトール様の手足となって働かせていただきます! 感激です!」 なかなかに真面目な少年だね。貴族というよりは軍人に近い態度だけど、公爵家と子爵家の間には、それだけ大きな階級差があるってことなんだろうな。「フライ様なら大丈夫です!」「ありがとう、ジュリア」 ジュリアの元気な声に少し救われる思いで、僕は目の前の競技フィールドを見渡す。広大な敷地には四つの拠点が設けられ、それぞれが異なる地形を持つ。 王国チーム、代表アイス王子:高台に位置し、見晴らしがよく、守りやすい地形。 獣人チーム、代表ロガン王子:森林に覆われたエリアで、隠密行動に適した地形。 帝国チーム、代表フライ・エルトール:平坦な草原が広がるエリアで、機動力が鍵。 平民チーム、代表グング:川沿いのエリアで、障害物が多く、天然の防衛線がある。 三人の魚人族は、平民チームに加わって自由にしている。 教師が魔法弾を撃ち上げ、ゲーム開始の合図をする。 各チームの作戦会議が始まった。「フライ様、どうします?」 帝国チームのメンバーは、全員が僕に視線を向けてきた。 あれれ、チュロス君が指揮官って言ったよね? そのチュロス君も、こっちを見つめているよ。「そうだね。なら、適当にいこうか」「適当ですか?」「うん。ガーディアン三人は、守備のためにフラッグ周辺へ配置。スカウト二人は、左右にいる獣
last updateLast Updated : 2026-08-03
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同年代の女性はしたたか

  平民チームが陣地を取っていた水辺にやってきた僕は、岩場に座る青い髪の美しい女性へ近づいていく。「初めまして。帝国エルトール公爵家次男、フライと申します」 膝を折り、美しい女性に対して礼を尽くす。「あら、気づいていらしたの?」「ええ。魚人族の方々が参加されているのに、姿を見せませんでしたから」「ふふ、私たちの存在を誰も気にしませんからね」「それはもったいない。あなたほど美しい方を気にしない男がいるのですか?」「お上手ね」 そう言って振り返った女性は、本当に美しい人魚姫だ。 青い髪に青い瞳。小麦色に焼けた肌は健康的で、外で過ごすことが多いのだろう。制服も特殊で、水に浸かっても大丈夫な魔法素材でできている。 高身長で、泳ぎが得意な筋肉質の体は引き締まっていて、彼女の生活環境が理解できる。「改めてご挨拶させていただきます。ホエール族の族長の娘、アクアリス・ネプティーナです」「先ほどのフラッグ奪取では、してやられました」「ふふふ、皆さんが中央で争っていたので、水辺を使ってフラッグを奪わせていただきました」「僕も彼女に獣人チームのフラッグを奪ってきてもらったので、おあいこですよ」 ジュリアの頭を撫でてやりながら、先ほどのフラッグ奪取で、彼女が獣人チームのフラッグを取ってきてくれたので勝利を得ることができた。「同じ作戦を取られて、自分がされることはないと勝手に思っていたので、やられました」 彼女の存在を見落とし、アイス王子とロガン王子に気を取られた僕の敗北だ。「ふふ、敗北宣言をわざわざ?」「はい。今回の勝者がいるなら、僕ではなく、あなただと思ったので。ネプティーナ王女様」「そう。ありがとうございます。私たちは歌や芸術を愛して自由に生きている種族なので、あまり戦いで他種族の方々に認められることはありません。ですから、嬉しいです」 気負いもなく、王女という驕りもない。「あなたには、アクアと呼ばれてみたいわ」「アクア?」「私の愛称です」「僕が呼んでもいいのかい?」「ええ、フライ。私もそう呼ばせてもらうわ」「わかった。アクア、これからよろしく。僕らは友人だ」「こちらこそ、ありがとう。フライ」 握手を交わした僕らは、互いに柔らかな雰囲気のまま別れた。 ♢ 学園も放課後になり、エリザベートとアイリーンさんの二人と合流する。
last updateLast Updated : 2026-08-04
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貴族は名誉

  帝国侯爵家、エドガー・ヴァンデルガスト。 その名前には聞き覚えがあります。「帝国こそが世界の秩序なのだ! 最強は帝国、帝国に従え!」 これがエドガー・ヴァンデルガストの印象的なセリフです。帝国が悪の象徴として書かれることが多い中、ブライド皇子が悪辣な狂王と呼ばれるのに対して、実際に指揮を執り、悪の限りを尽くす実行犯として書かれる。 それが、エドガー・ヴァンデルガストなのです。「失礼、セシリア嬢」 眼光の鋭い彫りの深い顔をしたエドガーは、その強い眼差しをセシリア嬢に向けながら、彼女の前に立つ。「これはこれは、ヴァンデルガスト様。どうされたのです?」「セシリア嬢、どうか私のことはエドガーと呼んでくださいませ」「ふふふ、ヴァンデルガスト様。今日は新たな友人が来てくださっていますので、どうぞご用件があるならば、先に仰っていただけませんか?」 どうやら僕を口実に、エドガーを追い返したいようだ。まぁ、この圧力はなかなかに強いと、僕も思う。「ふむ」 エドガーの視線が、セシリア嬢の隣に座る僕とエリザベートに向けられる。「ほう、これはユーハイム伯爵家のご令嬢ではないか? 確か貴殿は、どこの派閥にも属さずにいたはずでは? セシリア嬢とお茶をしているとは珍しい。何よりも、帝国貴族であるにもかかわらず、ブライド様の派閥に誘われていないとは情けないことだ」 どうやらエリザベートが入学式の日にブライド様から声をかけられたことを知らないようだな。それに、随分とブライド様にご執心のようだね。「それに、どうやら見たことのない男を連れているようで。女はいいな。婚約者がいるのに気楽なものだ」「ヴァンデルガスト様! 私のお客様に無礼な態度はおやめいただきたい!」「これは失敬。私は正直者で、嘘をつけないのです。本当のことを口にして気分を害されたのなら、申し訳ない」 なるほど、こういう人種か……。 人間関係には、二対六対二の法則があるという。 自分のことを好きでいてくれる人が二割、良くも悪くも思わない人が六割、嫌いになる人が二割という割合だ。 ブライド皇子とアイス王子は、出会った瞬間からお互いを嫌っている。つまり、二割の嫌い合う者同士ということだ。 そして、僕にとってエドガー・ヴァンデルガストこそが、出会った瞬間から嫌いだと思える二割の人間なのだと認識できた
last updateLast Updated : 2026-08-04
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 《sideブライド・スレイヤー・ハーケンス》 学園都市など、何一つ面白くはない。 単なる通過点であり、能力がある者を見定めれば、すでに我の目的は達成されている。 この三年間は、ただ無意味に過ぎていくのか。それとも学年が変わり、さらに現れる能力ある者たちを待つだけか……。 そんな日々に変化をもたらしたのは、あの変人が学園にやってきた時だった。「おや、おはようございます。ブライド様じゃないですか。お久しぶりです」 我に向かって気安く挨拶をする者など、今まで存在しなかった。 同じ王族であっても、我を特別扱いせずに話しかけてくる者はいない。「ふん、貴様が変人として自由に振る舞っている分には面白い。だが、その才を我のために使う気になったか?」 我の威圧をものともせず、気楽に話す変人フライ・エルトール。底が見えない男という意味では、今まで出会った者の中で一番変わっている。「何を言っているんですか、ブライド様。僕は平凡な公爵家の次男ですよ。エリック兄上の代替品として、兄の後ろに控えているしか能のない人間ですよ」 先ほどからアイクが殺気を飛ばしているのに、平然と話す奴を平凡とは言えぬだろうに。 公爵領では大規模な干ばつがあり、水源に火龍がいたという痕跡がある。だが、なぜか火龍は数年でどこかへ飛び去ったという。 ドラゴンが一度決めた住処を変えることなどない。一度住み着けば、数十年、数百年単位で居座ると言われている。だからこそ、ドラゴンの住む地には人が住めなくなるのだ。 だが、火龍は姿を消し、今もエルトール公爵家は存続している。 我の勘が、このフライ・エルトールが関与しているのではないかと囁いていた。「そうか、お前ならばいつでも歓迎しよう」「ありがとうございます。ブライド様、友人として嬉しいです」 考え事をしながら話していると、不意にフライが握手を求めるように手を差し出してきた。その行動はあまりにも自然で……。 何を求められているのか理解できず、固まってしまう。「我を友人だと?」「ええ、帝国内ではブライド様の位が上ではありますが、同じ王位継承権を持ち、同じ次男。それに同じ歳で、こうして学び舎で机を並べて学ぶ者同士です。十分に友人としての資格は得られていると思いますよ」 あまりにもこじつけが過ぎる。だが、ここまで不快感を覚えない男も珍しい
last updateLast Updated : 2026-08-04
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ライバルたち

 《sideアイス・ディフェ・ミンティ》 生まれた時から、私の体は弱かった。高熱と咳が毎日のように出て、運動などもってのほか。ミンティ王家の長男としての自覚がありながらも、何もできない自分の不甲斐なさを何度嘆いたのかわからない。 普通に過ごせる者を羨み、十二歳まで、私はベッドの上で病魔と戦いながら本を読み、体を動かさずに頭を働かせることばかりしてきた。 十二歳を過ぎた頃から、やっと体を動かせるようになり、外に出られるようになった。 だけど、それは決して激しい運動に耐えられるという意味ではなく、部屋を出て移動できるようになったというだけだ。 だから、魔法を覚えた。 魔法は体内の魔力量によって扱えるものであり、私は氷属性への適性が高い。また、人よりも魔力量が多い魔導士体質であったことも幸いし、魔法を得意と言えるようになった。 だが、王族として魔法だけでは駄目だと思い、必死に戦術や戦略、政治についての勉強を続けてきた。 そんな私にとって、室内でできる唯一の遊びはボードゲームだった。 盤上に駒を置き、思考を巡らせる戦術ゲームは楽しくもあり、勉強の一環でもあった。「兄上は、魔法の才能だけでなく、とても賢いのですね」 健康で剣術が得意な弟、ヒューイの言葉は嬉しくもあったが、羨ましいという気持ちはいつまでも取り除くことができなかった。 十五歳になり、やっと運動ができるようになった時には、これまで訓練をしてこなかった剣術は、他の者たちには到底かなわないほど劣っていた。 魔法と戦術。 私が選べたのは、その二つだけだった。 そんな時に、彼を見た。全てを持った理想の男。 私がブライド・スレイヤー・ハーケンスに初めて会ったのは、学園に入学する半年前、帝国にある学園都市に招かれて開かれた大規模な社交会だった。 王族や名家の子息たちが一堂に会するこの場は、各国間の政治的な駆け引きが繰り広げられる重要な催しであり、出席するだけでも相応の品格と教養が求められる。 その日、私はこれまで体が弱かったため、社交会への参加も初めてに近かった。 そのため、隅の席で静かに過ごしていた。華やかな衣装をまとった貴族たちが踊り、会話を楽しむ中、ブライドは遅れて会場に現れた。「ブライド・スレイヤー・ハーケンス殿下のご到着です!」 司会者がブライドの名を告げると、会場全体が
last updateLast Updated : 2026-08-05
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婚活公女 前半

 《sideセシリア・ローズ・アーリントン》 公国は決して強い国ではありません。第一王女である私の目的は、学園都市でより強い殿方を見つけ、その方のもとへ嫁ぐか、婿養子として来ていただき、共に公国を支えていただくことです。 ですが、学園都市には貴族から平民まで多くの方々がおられ、人を見極めるには時間がかかります。どうしても関係が深くなる方は限られてしまいます。 求めるべき殿方に出会えるのか、不安でしかありません。 そんなことを思いながらお茶会を開いておりますが、各国の様々な紳士淑女の方々にお会いしていると、どうしても問題を起こす方もおります。 その筆頭である、帝国侯爵家の長男エドガー・ヴァンデルガスト様には困り果てていました。 帝国貴族こそが最上であると考えておられ、その堂々とした態度は、不遜とも受け取れます。 彼の派手な衣装と傲慢な笑みは、周囲の視線を引きつけてやみません。「これはこれは、公国の第一王女セシリア様ではありませんか。お茶会をされていると聞きました。私も参加させていただいても?」「もちろんです。ルールを守っていただければ、どのような方でも歓迎ですわ」「ルールですかな?」「ええ、あくまで紳士的に振る舞っていただければ問題ありません」「そうか。ならば問題あるまい。私は帝国貴族だからね」 エドガーは私に向けて深々と頭を下げ、紳士を気取った様子で近づいてきました。しかし、その目にはどこか品のない欲望が見え隠れしていて、残念ながら紳士とは程遠い態度に警戒心を抱きました。「改めまして、初めまして。エドガー・ヴァンデルガスト様。お越しいただきありがとうございますわ」 表向きは笑顔を保ちながらも、内心では彼の登場が厄介事の始まりであると感じていました。 本来であれば、ホストを務める私が席を決めるのですが、エドガーは堂々と私の正面に座り、周囲の空気を無視して私だけに話しかけてきます。「セシリア様、噂には聞いていましたが、やはりお美しい。公国が誇る薔薇というのも納得です」「お褒めいただき光栄ですわ」 彼の口調は一見すると丁寧ですが、どこか馴れ馴れしさを感じさせます。その視線は私の顔だけでなく、全身をじろじろと観察しているようで、不快感が募ります。「そうそう、公国は小さな国だ。あなたのような可憐な女性が一人で重責を背負うのは、お辛い
last updateLast Updated : 2026-08-05
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婚活公女 後半

 《sideセシリア・ローズ・アーリントン》 あれから、ほぼ毎日のようにエドガー・ヴァンデルガストは、事あるごとに私へ話しかけてくるようになりました。 最初はお茶会での会話程度でしたが、次第に彼は学園内のあらゆる場所で私を探し出し、無理やり話をするようになったのです。 廊下を歩いていれば突然隣に現れ、食堂で友人たちと昼食を取っていれば、空気も読まずに割り込んできます。「セシリア嬢、こちらをご覧ください。昨日仕入れたばかりの珍しい花です。セシリア様にきっと似合うと思いまして」 そう言って差し出されたのは、確かに美しい青い花。しかし、その花を受け取るたびに感じるのは、喜びではなく重い負担です。それに、どこから取ってこられたのでしょうか?「お気持ちはありがたく受け取りますわ。ですが、どうか無理はなさらないでくださいね」 そう丁寧に断っても、彼は笑顔で応じながら、次の日も別の贈り物を持って現れるのです。最初は友人たちも笑って受け流していましたが、次第に彼の行動に眉をひそめるようになりました。 どうして、こうも一方的なのかしら……。 私は毎回、丁寧に断ろうと努めました。それでも彼のしつこさは増すばかりで、周囲の視線が冷たく感じられることすらありました。 こんなことを繰り返されたら、私の品位まで疑われてしまいますわ。公国のために良い縁を結ぶどころか、周囲からの信用を失ってしまいます。 時折、エドガーが無理に近づいてくる場面を目撃した他の学生たちが、噂話をしているのが耳に入ります。「あれ、セシリア様って、ヴァンデルガスト様と何かあるのかな?」「いや、セシリア様がそんな人だとは思えないけど……。あのヴァンデルガストの奴が勝手に盛り上がっているだけじゃない?」 胸の奥に、焦りと苛立ちが渦巻きます。 私はただ、公国の未来を支えるために学び、ふさわしい人と出会いたいだけ。それなのに、こんな形で注目を集めるのは本意ではありません。 私はそろそろ決着をつけるため、エドガーがまた贈り物を持って現れるのを見計らい、自分から声をかけました。「ヴァンデルガスト様、少しお話がございます」「どうぞ、私のことはエドガーとお呼びください」 彼は嬉しそうな顔をしながら近づいてきます。その態度が、ますます私の決意を固めました。「ヴァンデルガスト様、これまでのお気持ちに
last updateLast Updated : 2026-08-05
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貴族のプライド

 《sideエドガー・ヴァンデルガスト》 屈辱だ! 屈辱だ!! 屈辱だ!!! 私は栄光ある帝国侯爵家の長男にして、次期ヴァンデルガスト侯爵家の当主である。 それなのに、どうしてこの私が、あのような大衆の前で辱めを受けねばならぬのだ。 公爵家の次男風情が偉そうに……。 確かに家格では、我がヴァンデルガスト家よりも上であることは認めよう。だが、次期当主になるのはエリック・エルトールであって、あいつではない。 社交界にも出ていない男の顔など、知るはずもない。 変人フライ・エルトール。 学園都市に入学して以来、まともに授業へ出ることもなく、ふらふらとギャンブルをして遊び惚けているような貴族に、なぜ偉そうにされなければならないのだ。 私は常に学園の座学では上位を維持しており、我がヴァンデルガスト家が得意とする風魔法では、トップの成績を残してきた。それだけではない。 ブライド様に気に入られるため、多くの実績を残して能力を証明してきた。 だから、今回の一件は、たとえ相手が自分よりも上位の貴族であっても許せることではない。「やめておけ」「納得できません!」 そんな私に対して、此度の一件をブライド様はお止めになられた。フライ・エルトールとの決着をつけたいと申し出て、その証人として後ろ盾になっていただくつもりだった。 何も卑怯な手を使うというわけではない。貴族は位が大事だ。私から決闘を挑めば、互いの命を取り合うことになってしまう。 だが、ブライド様のお名前をお借りして模擬戦という形を取れば、命まで取らなくとも奴を倒し、十分に懲らしめることができる。 私も鬼ではない。奴に対する怒りは、奴の屈辱に歪んだ顔を見られれば、それで収まるのだ。「我から言えることは、やめておけ、だ。貴様はフライの顔を知らず、無礼を働いた。その程度で手打ちにしてもらったのであろう?」「しかし、私は女性の前で辱められたのですぞ!」「それも自業自得だ。これ以上言わせるなよ、エドガー。貴様が無能な真似をして、どうして我が貴様の尻拭いをせねばならぬ?」「ぐっ!」 それは確かにそうだ。此度の一件は、私がフライ・エルトールの顔を知らず、奴を馬鹿にした物言いをして、自分よりも位が上の者を知らなかったことが問題だ。 それは理解している。 だが、それで腹の虫が収まるのかといえば、貴族
last updateLast Updated : 2026-08-06
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