All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 31 - Chapter 40

101 Chapters

 手に入れた奴隷を理解しよう

  学園に戻って授業を受けるようになった僕は、ジュリアにマナーを教えながら、勉強も一緒にしている。 同級生であり、本来小説の中で活躍する主要メンバーへの挨拶を終えたので、あとはのんびりと、エリザベートやジュリア、アイリーンさんと過ごして三年間を終えればいい。 何事もなく領地に帰れるのが一番だ。 まだ自分が安全なモブライフを送れるのかは不明だが、できることをしていくしかない。 ジュリアや、ボートレース場のお爺さんからもらった奴隷たちのことも知っていかなければならない。 奴隷はジュリアを含めて七名いる。そのうち、女性が六名、男性が一名だ。「さて、君たちの名前を教えてくれるかい? その前に、僕の自己紹介からするね。君たちのご主人様になったフライ・エルトールだ。帝国公爵家の次男で、後々は領地に帰り、悠々自適な老後生活を送るために、兄上を手伝って領地の発展を目指すつもりだ」 実際は、ブライド・スレイヤー・ハーケンス様が大陸統一を目指して動き出すから、自分の領地だけはしっかり守ろうというだけなんだよね。 情けない話だけど、平凡な僕には、世界を救うとか戦争を止めるとか、そんな高い志はない。せいぜい、自分の周りにいる人たちを守るくらいのことはしようと思っているだけだ。「はいはい! ジュリアは獣人族です。年齢は十五歳です!」「うんうん。ジュリアは偉いね」 ジュリアは僕と同い年ではあるが、これまで教育というものを受けたことがないので、少し幼い。 逃走している時には常に気を張り、警戒を強めていたが、今ではすっかり素直で可愛いワンコ娘だ。「へへへ」 モフモフの頭を撫でてあげると、とても嬉しそうな顔をする。 僕は残りの六人に視線を向けた。 コウモリのような羽を持ち、黒髪に赤色のメッシュが交じる少女は、自信なさそうな顔をしながら、こちらをちらちらと見ている。「君の名前は?」「メムです。夢魔族なのです」「メムか、よろしく。今日から僕が君の主人だ」「あのっ! あの!」「うん?」「メムは夢魔族なのです。十八歳なのです!」「ああ?」「だから、ご飯を食べないと死んじゃうのです」 うーん、要領を得ない。ご飯を食べたいということはわかるけど、夢魔族のご飯といえば、普通の食事ではないということか? 魔人族は、それぞれ特殊な食事を取ると聞いたことがある。 
last updateLast Updated : 2026-08-06
Read more

戦闘風景

  レンナの鋭い視線を正面から受け止めた。 赤龍王の娘とは、口上として素晴らしいと思うが、本当に彼女が赤龍王の娘ならば、奴隷になどなっていないだろう。 竜人族の姫君が奴隷になるなど、さすがに戦争になる案件だ。 ただ、竜人族がこの世界における最強種の一角であることは間違いない。 彼女のプライドは、それに見合うだけの高さを誇っているということだろう。 だからこそ、彼女の言葉が軽い虚勢ではないことも理解できる。「レンナ、君が言いたいことはわかるよ。でも、強さを証明する方法が、ただの力比べだけとは限らないんじゃないかな?」 僕が冷静に言葉を返すと、彼女の眉がぴくりと動いた。「言い訳か? 貴様のその自信なさそうな顔が何よりの証拠だろう。戦う気がないなら、その口を閉じろ! 弱者に従う気はない!」 部屋の空気が熱を帯びた。まるで、目の前で火を吹きかけられる直前のようだ。周囲の奴隷たちも息を呑み、状況を見守っている。「はぁ……先に言っておくよ。僕は平和主義者であり、誰かを傷つける時には、それ相応の理由が必要だと思っているんだ」「ふん、適当なことを言うな。貴様のような弱い者は、すぐに口に頼ろうとする」「聞く耳を持ってくれないか。いいだろう。君が望むなら、力を見せるよ。でも、一つ約束してほしい。もし僕が君を倒したら、これからはみんなと協力して、この新しい生活に馴染む努力をしてくれるかい?」 彼女は鼻を鳴らし、腕を組み直した。周りの奴隷たちも、僕が戦いを受けるとは思っていなかったようだ。 実際に僕は平凡だから、強いわけではない。 だけど、まだ幼い竜人族なら相手にできるだろうとは思う。彼女が本物の竜人族の戦士なら、絶対に勝つことはできないけどね。「望むところだ。私が勝ったら、貴様にはこの場で跪き、私に仕えると誓ってもらう!」 僕は小さく笑みを浮かべ、軽く頷いた。 奴隷に仕えるか。それも悪くないかもしれない。 僕には彼女の実力がわからないので、学園が用意している、魔法を放っても破壊されない結界の張られた訓練場を借りて対決することにした。 見学者は奴隷たちと、エリザベート、アイリーン。審判はボートレース場のお爺さんに頼むことにした。「ふん、何事かと来てみれば、ワシに審判をさせるとはな」「お爺さんが押しつけた奴隷だからね。もし僕が負ければ、彼女の奴
last updateLast Updated : 2026-08-06
Read more

後継者

 「貴族のお嬢さんたちには、帰ってもらえるかのう」 お爺さんに付き合うことになり、エリザベートとアイリーンには帰ってほしいと言われた。 奴隷たちに護衛をさせ、彼女たち二人には先に帰ってもらうことにした。 ギャンブル好きのお爺さんが行く場所なので、きっとギャンブルに関することなのだろう。 一応の護衛として、僕はジュリアとレンナを連れていくことにした。 ジュリアは一番付き合いが長く、強さではレンナが一番だと判断したからだ。 レンナは勝負に負けてから、おとなしくなった。ついてきてほしいと伝えると、「べっ、別に命令だから仕方なくだからな! 強い男だから認めただけなんだからな!」 なんだかよくわからないけど、誘ったら嬉しそうな顔をしていたので正解だろう。「こっちじゃ」 お爺さんに連れられてやってきたのは、ボートレース場の奥にある地下施設だった。「こんなところがあったんだね」「まぁのう。ここからは会員制じゃ。会員が紹介しなければ入れんからな」「ふーん」 お爺さんは相当にギャンブルが好きなのだろうな。学園都市に、こんな裏カジノまで作っているなんて、相当な凝り性だ。 階段を下りると、カジノが広がっていた。だが、そこが目的地ではなく、さらに地下へと下りていく。「ほれ、見てみろ」 濁声のお爺さんに連れられてやってきた場所は、半裸の男たちが拳で殴り合う地下闘技場だった。「どうじゃ、凄いじゃろう」 うん。凄いとは思うけど、見ていても……。「ふむ、お主には物足りぬかのう? じゃがのう、聞け」「うん?」「ワシは女子が好きじゃ」「はっ?」「ギャンブルも好きじゃ。そして、奴隷も好きじゃ」 いきなり何を言っているんだ、このお爺さんは。僕に自分の好きなものを紹介されても困る。「じゃが、男が一番好きじゃ」「えっ?」 僕は身の危険を感じて、自分の体を守るように抱き締める。「ふん、そんな性的なことではないわい。男とは、夢を見る馬鹿の集まりじゃ。その馬鹿が夢を追っている姿を、ワシは好きなのじゃ。あそこにいる男たちもまた、強さを求め、賞金を求め、様々な夢を求めて集まり、命を懸けておるのじゃ」 地下闘技場で戦う男たちは、無理やり戦わされているわけではなく、己のために戦っている? なるほど、それは面白い。 奴隷や剣闘士は、どこかで戦いに怯え、必死に生
last updateLast Updated : 2026-08-07
Read more

決闘の申し込み

  お爺さんがなかなか離してくれなかったため、外へ出た頃には夜になっていた。  やっと解放されて外に出ると、雨が降っていた。石畳の道を歩く僕の隣で、ジュリアとレンナもローブをまといながら、びしょ濡れになっている。 「やっと見つけたぞ」  そんな僕らの前に、同じくびしょ濡れになっている男が現れた。 「エドガー・ヴァンデルガスト。何か用かい?」  まさか、大勢の前で僕にあんなことをされて、また姿を見せるとは驚きだ。 「ああ、貴殿に決闘を申し込む」「決闘? 古風なことをするんだね。今ここで殺し合いでも始めそうな雰囲気だ」  この世界に転生して、学園都市へ来てからは、殺気をぶつけられることが多い。  殺気だとはわかっているけど、実際に害を与えられたことはなかったので、これまでは適当に受け流していた。  僕自身、人を殺したいとは思わなかったからだ。  だけど、エドガー・ヴァンデルガスト。  君は違うよ。君から向けられる視線も、君が発する殺気も、全てが僕にとっては不快で仕方がない。その眼光の鋭い瞳で見つめられると、他の誰にも感じたことがない不快感を覚える。  生理的に合わない。 「私は栄光ある帝国の貴族として、誇りを持っている。だが、貴様は私の誇りを汚した。公の場で貴殿に謝罪していただきたい」  理性的だと思えばいいのかな? エドガーを前にすると、どうしても僕のほうが大人げなくなってしまう。貴族としての誇りを守りたいから、僕に謝罪を求める。  そのための手段として決闘を選んだということか。意外に律儀なんだな。
last updateLast Updated : 2026-08-07
Read more

ゴーレム決闘

  エドガーが申し込んできた『ゴーレム決闘』は、この小説の中では度々登場する決闘方法だ。もちろん知ってはいるが、知っていることと実際にできることとはわけが違う。 ♢ ゴーレム決闘の基本ルール 目的:各々が自らの魔力を注ぎ込んで作り上げたゴーレムを操り、戦わせる形式の試合。相手のゴーレムを完全に破壊、もしくは戦闘不能にすれば勝利。 素材:ゴーレムの素材は、石、金属、木材の三種類から選ぶ。ただし、学生同士が行う際には、使用を禁止された材料や魔導具が存在する。実戦では、材料や使用物に制限はない。 学園に申請して正式な使用許可を得なければ、決闘で使用することはできない。準備時間は限られるため、素材選びも重要な戦略の一環となる。 魔力:ゴーレムは、自らの魔力のみで作り上げ、起動させること。また、戦闘中に操縦者の魔力が尽きれば動けなくなるため、魔力管理が勝敗を左右する。 試合時間:制限時間は三十分。それまでに決着がつかない場合、審判が状況を見て判定する。 ♢ 図書館で、ゴーレム決闘について調べていた。様々なルールや戦い方を学ぶことができたと思う。 ゴーレムの知識。それを作るための魔力。そして、実際に戦うための戦略。 エドガーがどうしてこの戦いを選んだのか理解できた。全てにおいて僕よりも上だと言ったのは、このことだったんだね。 ジュリアが隣で目を輝かせながら、僕に問いかける。「ご主人様、ゴーレムを作れるの?」「作ること自体は大丈夫じゃないかな。材料は学園が提供してくれるようだからね。それに、使用を禁止されている素材や魔導具についても理解したよ。でも、エドガーはゴーレムの作成方法について、きっと僕よりも詳しいはずだ」 ジュリアは小さな手で拳を握り締めて、「頑張ってください!」と応援してくれる。その素直さが嬉しい反面、どうしたものかと考えるしかないね。 それにもう一つ、決闘の立会人を依頼するため、僕はアイス王子を訪ねた。 彼がいるという噴水のある中庭へ向かうと、爽やかな笑顔で他の生徒たちと話している姿が見えた。「アイス王子、ご歓談中に申し訳ないが、少しお話をしてもいいだろうか?」「やぁ、フライ君。どうしたんだい? 学園で君から話しかけられるなんて珍しいね」 その口調はどこかからかうようなものだったが、敵意は感じない。「少しお願いがあってね
last updateLast Updated : 2026-08-07
Read more

教えてエリザベート先生

  僕は、この世界の常識について、正直に言うと詳しくない。 世界の在りようや大きな歴史の流れは理解しているが、細かな設定などは、小説に書かれていたとしても覚えていないからだ。 これがゲームであれば、その細部までやり込んで理解するんだけど、いかんせん、小説の中で設定されていることまでは把握できていない。「なるほど。わたくしに、ゴーレム決闘の立ち会いとルールの説明をしてほしいということですわね」「ああ、エリザベートは賢いから、知っているんじゃないかと思って」「もちろん理解しておりますわ! ですが、意外ですわね。ゴーレムなどの研究は、女性よりも男性に好まれ、男性の研究者も多いので、フライ様もお好きなのかと思っておりました」 エリザベートに指摘されるまで、興味がなかったわけではない。 ただ、それ以上にこの世界は楽しく、興味が尽きないので、手が回らなかったというほうが正しい。「うん。興味はあるんだけど、今まで関わる機会がなかったから、この機会に勉強しておこうと思ってね」「そうでしたか。それでは僭越ながら、わたくしが説明を担当させていただきます!」「「「「おお!」」」」 僕の横には、ジュリアとレンナが座っている。二人にはそれぞれ役割を与えていて、今回は一緒に勉強してもらうつもりだ。 それに、ドワーフのチョコには、ゴーレム作りに協力してもらうために参加してもらった。「まず、ゴーレムといっても、素材によって名前が異なります。ストーンゴーレム、ウッドゴーレム、アイアンゴーレム。今回使用できる素材から作られるゴーレムたちです」 ストーンゴーレムの素材は石で、ウッドゴーレムは木、アイアンゴーレムは鉄だね。「それぞれの特徴として、アイアンゴーレムは強度が高く、攻撃力も最も高いゴーレムです。その代わりに動きが遅く、魔力の消費も激しいため、三十分の戦いで魔力を維持し続けることは難しいと考えられます」 なるほど。アイアンゴーレムのメリットは高い攻撃力で、その代わりに魔力の消費が激しく、動きも遅い。「次に、ウッドゴーレムは魔
last updateLast Updated : 2026-08-07
Read more

ゴーレム完成

  二日間のゴーレム制作で、僕が考えた物が出来上がりました。 従来のゴーレムは、ストーンゴーレムなら石を積み重ね、それを魔力で繋ぎ合わせ、人型に維持させていた。 それがゴーレムの作り方だと言われれば、その通りではある。だが、せっかく素材があり、繋ぎ合わせるなら、素材同士の形を変えてから繋ぎ合わせれば良いんじゃないかと思ったわけだ。 僕が考えるゴーレムは、関節が存在して魔力効率が良く、それでいて攻撃も守備も充実しているゴーレムだ。 ですが、素材は三つ。石、鉄、木です。 一つ一つでは、どうしてもうまくいかない。 なら、三つを合成して、それぞれのパーツごとに使い分けてはどうか? ですが、それでは魔力伝達がうまくいかなくなり、操作が難しいだけでなく、魔力消費も激しくなるので、現実的には難しいという結論に至った。 ここまでは誰もが考えたことであり、実際に幾度となく挑戦もされてきた。 それはそうだろう。ロボは男のロマンなのだ。 だが、幼い頃から魔力量を増やし続け、属性魔法を持たないことで無属性の研究を続けてきた僕ならば、どうだろうか? 発想を変えてみよう。 ゴーレムは素材に魔力を流し込み、素材同士を繋ぎ合わせることで、ゴーレムという形を作る。 だが、そもそも素材を最初から繋ぎ合わせた状態で、一つの塊としたならどうだろうか? サンドゴーレムやアースゴーレム、アイスゴーレムなどの自然由来のゴーレムたちは、まさしく一つの塊として存在する。 彼らに繋ぎ目は存在しない。もちろん、人が一からそれを作るのは難しい。 自然発生した魔力の塊と、自然界に存在する材料が合わさって生み出されているからだ。 そろそろ難しい前置きはいいだろう。「チョコ、どうだ?」「とても面白いと思います!」 ドワーフのチョコには、それぞれのパーツを作ってもらった。 ボディーには、ストーンゴーレムを使うことにした。しっかりとした頑丈さが欲しかったのと、魔力の通りを良くする中心になるからだ。 そして、肩、肘、腰、股、膝の関節部分を鉄で作ってもらい、綺麗な球体に仕上げてもらう。 最後に、木製の腕や足でそれらを繋ぎ合わせた。「これは、なんて表現したらいいのかしら?」 完成した合成ゴーレムキメラを見て、エリザベートはなんとも言えない顔をしていた。「これは動くんですの?」「もちろん
last updateLast Updated : 2026-08-08
Read more

決闘開始

  布が取り払われて、互いのゴーレムが晒される。 僕はエドガー・ヴァンデルガストのゴーレムを見て、意外だと思った。 エドガーは利己的で傲慢な人間だ。だからこそ、選ぶのはスタンダードなストーンゴーレム一択だと思っていた。 だが、エドガーが用意したのはアイアンゴーレムであり、しかも繋ぎ合わせた継ぎ接ぎだらけのアイアンゴーレムではなく、一つの鉄の塊を人型に作り直していた。「どうだね? フライ・エルトール。我がヴァンデルガスト家のゴーレムは、もちろん素材は鉄であり、違反はしていない。だが、巨大な炉を使って鉄を溶かし、人型の型に流し込んで作ったゴーレムだ! こうすれば本来のアイアンゴーレムを作る際に必要な魔力量は抑えられ、さらに動きもストーンゴーレム並みに速くなるのだ!」 肩関節と股関節は動くようになっているようだけど、結局は普通のゴーレムと大して違いはない。「そう、自信があった理由はそれかい?」「貴様のゴーレムは、どうやら動かすこともできんようだな」 僕のゴーレムは布を取り払われても、寝転んだまま立ち上がらない。 魔力を流しているゴーレムは、自動的に起き上がり、生命体として生まれるので、一種の魔物化を果たす。実際に、エドガーはゴーレムを量産して、戦争で活用する。 今回のゴーレムは、その試作機第一号なのだろうな。 それに対して、僕はゴーレムの考え方を変えた。 ゴーレムの魔物化ではなく、無属性の魔力でゴーレムを包み込んで操作する。 僕の手元に、ゲームで使うようなリモコンを発現させる。「なんだ、それは?」「コントローラーだよ」「意味のわからないことを……そろそろ始めよう。貴様のわけのわからないゴーレムを破壊して、謝罪してもらう」「ああ、いいよ。やろう」 互いに視線をアイス王子へと向ける。それは試合開始の合図をしてもらうためだ。「それでは、互いのゴーレムによる決闘を開始する。両者、悔いの残らぬように全力で挑んでくれ。始め!」 アイス王子の合図と共に、僕のキメラゴーレムがウッドゴーレム並みの速度で、エドガーのアイアンゴーレムに迫って蹴りを入れる。「なっ?!」「えっ?!」「おおお!」 エドガー自身も、そして見ていた観客たちからも驚きの声が上がる。試合開始前まで動くことのなかったキメラゴーレムが動き出して、格ゲーに登場するキャラのように
last updateLast Updated : 2026-08-08
Read more

決着と呪い

  土煙が収まる頃には、エドガーのアイアンゴーレムはバーストによって破壊され、僕のキメラゴーレムは立ったまま止まっている。 そして、僕は腕に負傷をして、エドガーは地に伏していた。「勝者! フライ・エルトール!」 アイス王子の声が響き渡る。ブライド皇子の姿はすでになくなっていた。どうやら先ほどの土煙の中で何が起こったのか、全て理解したようだ。 あの御仁は頭が良い。 だからこそ、エドガーが僕を暗殺することも見越していたのかもしれない。「フライ様!」 エリザベートが駆け寄ってきて、僕の腕から出血している姿に青ざめる。「大丈夫だよ、エリザベート。僕にはバリアがあるのを知っているでしょ」「ですが、わたくしは見ておりました。観客席にいるわたくしたちに害が及ばないように、バリアの範囲を広げて守ってくださっていたのを」「エリザベートも成長したね。バレてしまうなんて」「長年、フライ様と一緒におりますから」 見た目は巻き髪ロールの悪役令嬢なのに、本当にエリザベートって良い女だね。「さぁ、決着をつけたからね。君たちに謝罪してもらうために、彼を回復させようか」「ふふ、フライ様は意地悪ですのね」「そうかい? 約束は約束だ。たとえ、彼がどんな状態であってもね」 僕は自らの傷口に回復魔法をかけて、エドガーの元へと向かう。魔力枯渇と僕が与えた呪いによって意識を失っているので、魔力を回復する薬を飲ませ、起き上がらせる。「エドガー・ヴァンデルガスト。貴様の負けだ」「くっ! 認めよう。私の策は潰えた。貴様の勝ちだ、フライ・エルトール」 エドガーが僕の勝利を認めたことで、セシリア嬢とエリザベートへ謝罪させることが決まる。「私が見届け人として、正式な謝罪の場を用意しよう」 今回の審判であり、見届け人のアイス王子が公開処刑の場所を用意してくれるそうだ。「私からも一つよろしいでしょうか?」 セシリア嬢もエドガーに対して、思うところがあったのだろう。僕はセシリア嬢に先を促した。「どうぞ」「ヴァンデルガスト様、あなたの行為はずっと迷惑でした。謝罪をしていただくということなので、これまでの私に対する無礼な振る舞い、強引な口説き、そして我が友人たちに対する失礼な態度。それらを全て反省して、謝罪してくださいませ。それと、私はあなたからのプロポーズは一切受け付けません。
last updateLast Updated : 2026-08-08
Read more

絶望の救いて

 《sideエドガー・ヴァンデルガスト》 自らの誇りをかけたゴーレム決闘が終わった。 ヴァンデルガスト家が秘蔵していたエレメンタルゴーレムを持ち出して使ったにもかかわらず、負けてしまったのだ。 ならば、潔く受け入れるしかない。 私の誇りも、名誉も、全てが粉々に砕け散った。「これで全て終わりだ……」 自分で口にしてみると、その言葉の重さが全身にのしかかる。 土煙の中で見上げたフライ・エルトールの姿が鮮明に思い出される。あいつは私を全否定し、決闘の場で私を完全に打ちのめした。 アイアンゴーレムの自爆は私の最後の切り札だった。戦いの中でゴーレムが暴走することはよくある。それを利用してあいつを殺せていれば、事故だと居直ればよかった。 しかし、それすらもフライには通用せず、私は全ての手札を切った上で勝つことができなかった。 ヴァンデルガスト侯爵家から正式に廃嫡の知らせが届いたのは、学園都市に用意された屋敷に帰った時だった。 屋敷には、父上が待ち構えていた。「エドガー、貴様……」 父の怒りは、冷たい声に凝縮されていた。普段は厳格で落ち着きのある父の表情が、怒りに震えている。 父は帝国貴族として誇りを持っており、何よりも他人に負けることを嫌う。だからこそ、負けないための兵士としてエレメンタルゴーレムの研究に力を入れていた。 そして、この力を使ってブライド様に皇位へ就いていただき、我らヴァンデルガスト侯爵家を重用してもらう手筈だった。「フライ・エルトールとの決闘、そしてその結果によって、お前はこの家の全てを台無しにした」「……はい、父上。私は――」「黙れ!」 父の一喝が、私の言葉を遮った。「お前の行動は単なる敗北ではない。学園で他国の王子がジャッジをする場で負けたのだ。ヴァンデルガスト家を辱めた。これ以上、この家にお前の居場所はない」 その言葉が下されると、家臣たちが私の荷物をまとめ始めた。「廃嫡だ」 その一言が、私の全てを奪った。侯爵家の後継者としての立場も、未来への希望も、全てを失った。 家を追い出された後、私は学園都市の安宿に身を寄せた。かつては侯爵家の次期当主として、多くの従者や侍女に囲まれ、何不自由なく暮らしていた私が、今や一人で狭く薄暗い部屋に座り込むしかない。 髪を掻きむしり、こんなことになった原因であるフライ・エ
last updateLast Updated : 2026-08-09
Read more
PREV
123456
...
11
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status