Todos los capítulos de お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Capítulo 1 - Capítulo 10

17 Capítulos

転生しても僕は僕は平凡でした

 変わり映えのしない人生に変化を求めていた。 人とは違う人生を歩みたい。そんなことを思っても、結局は世間の歯車の一つとして、会社に行って時間を潰して、友人たちとバカな話をして酒を飲む。 楽しみなどそれぐらいしか存在しない。いや、若い頃にはいくらでも楽しみは存在していた。 だけど、歳を重ねるごとに、いつからか楽しみは減っていった。体も鈍って、動かすことが億劫になった。 昔は運動が得意だった。 恋愛だって、女性を口説くために友人たちと作戦を練った。 身なりに気をつけて、お金がないのでバイトに明け暮れて。やっとできた恋人がいるくせに、他の女性を口説こうという意欲もあった。 だけど、どれも歳と共に倫理に囚われ、理性という檻と、若くないという戒めによって制限される。 誰かに迷惑をかけることをしてはいけない。 ただ大人しく仕事をして、お金を稼いで、ささやかな楽しみにお金を注いで、老後を待つだけの日々。そんな日々で本当にいいのだろうか? 不意に訪れる疑問は不安を与えてきて、少しでも何かに夢中になりたいと思って、本を手に取った。 最近は電子書籍やWEB投稿も増えているから、いくらでも現実から離れて物語の中へ没入することができた。 そんな中でも戦略、戦術、謀略、計略、政変など、戦争が起きる小説が大好きで読み漁っていた。だからといって、オタクになれるほど真剣でもなくて、戦略や戦術を覚えられるわけでもない。 ただ、物語の中に出てくる英雄たちに憧れ、彼らのような冒険をして、活躍してみたい。もしくは、大金持ちの子供に生まれ変わって、傍若無人に振る舞ってみたい。 はたまた、悪役になってカッコいいセリフを告げながら散っていく。 どんなキャラクターも憧れの存在だった。いつか生まれ変わるなら、そうなりたい。 平和なことは美徳であり、平和な世界に生まれたことは幸せなことだ。それは間違いない。だけど、僕の能力は平凡で、英雄になれる素質も存在しない。 僕にとって幸福とはなんだったのだろうか? ♢「オギャー、オギャー」 変化が訪れたことに気づいたのは、赤ん坊の泣き声を聞いた時だった。(えっ? どういうことでしょうか? 身動きが取れません。目は霞んで、自分の体とは思えないほど動かすのが億劫です)「あらあら、フライは泣き虫ね。お兄ちゃんはそんなに泣かなかったわよ」
last updateÚltima actualización : 2026-07-29
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道楽息子は気楽でいいね

 さて、十年が経って十五歳になった今では、すっかりやる気のない道楽息子として世間様から認知されております。 次男など長男の代替品であり、気楽に生きる以外に道はありませんからね。 全てはエルトール家の長男であり、兄上のエリック・エルトール君次第です。 彼は平凡な僕とは違って魔法の才能があり、魔塔からスカウトが来る逸材ですからね。「兄上、兄上のような優秀な方に対して、悔しいなどと思うはずがないではないですか」 悔しくないのかと聞かれても、全く悔しくない。転生して、人生をやり直させてもらっているだけでも丸儲けだ。しかも、魔法が使えて、若さを手に入れて、お金持ちの家に生まれた。 もう、これだけで人生勝ち組であり、あとはどうやって楽しむのかを考えるだけだ。「むむむ、フライ。お前は自分をわかっていないぞ!」「何を言うのですか? 兄上は魔力量が普通の魔導士たちの十倍ですよ。それだけで十分なのに、全属性まで使えるではありませんか?」 魔法には、火、水、風、土の四大元素を主とした四属性がある。さらに応用属性として、雷、氷、光、闇の四属性を加えた八属性を、基本属性と呼ぶ。 兄上は、この基本属性が全て使える。全属性使いって、普通にチートキャラだ。 さすがは、将来の帝国を支える公爵様だ。名前も登場しないモブなフライ君とは大違いです。「いや、それはお前が!」「うん? 兄上はすごいです。僕は基本属性がどれも使えませんよ」 そうなのだ。兄上は八属性全てが使える。 それに対して、僕は無属性魔法しか使えません。「くっ! もういい、フライ。お前はもっとやる気を示せ! そして、もっと人前に出て自分の力を示せ!」 兄上は昔から、なぜか僕を押し上げようとしてくる。 僕は自分の力を諦めたというのに、弟想いの良い兄です。「どうでもいいですよ。結局、この家は兄上が継ぐのです。僕は結婚もできません。死ぬまで飼い殺しなんですから」 貴族家の次男とは、虚しい生き物なのだ。 長男の代替品であるがゆえに、自由に結婚もできない。もしも僕が結婚して子供が生まれてしまえば、跡目争いに発展する恐れがあるということで、結婚も許されない。「ぐっ! だから、それを認めさせる意味でも、人前に出ろと!」「いやいや、どうでもいいですって。公爵家の次男というだけで、かなりの額のお小遣いはもらえます
last updateÚltima actualización : 2026-07-29
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兄の婚約者は悪役令嬢物語がお好き

  お酒を飲んで家に帰ると、どうやらタイミングが悪かったようだ。「フライ様! どこに行かれていましたの!?」 金髪の巻き髪の美少女が、玄関で腰に手を添えて待ち構えていた。「やぁ、エリザベートじゃないか。兄上に会いに来たのかい?」 彼女は帝国のユーハイム伯爵家のご令嬢で、兄上の婚約者だ。「いいえ、フライ様に会いに来たのに、いらっしゃらないので探しておりました」「僕?」「はい! 前にも申しましたが、エリック様との婚約は仮です。まだ正式に婚約したわけではないと申したではありませんか」「ああ、そうだったね」 僕は彼女が苦手です。 強気な態度で、貴族令嬢としてとても美しく、押しが強い。エリック兄上の婚約者として紹介された際には、新しい姉上ができたと気楽に思っていただけだったのに、今では兄上よりも僕のもとへやってくる機会が多い。「そんなことよりも、前回のお話を聞かせていただきに参りました。悪役令嬢の物語の続きを教えてくださいませ」「え〜、また物語?」 そう、彼女が僕のもとへやってくる理由は、僕が前世で読み耽っていたWEB小説の悪役令嬢物の物語を聞きたいからだ。 彼女が幼い頃、僕がうっかり口を滑らせたのが災いした。 あれは、彼女が初めてこの家に来た時のことだ。 エリック兄上の婚約者としてやってきた彼女は僕と同じ歳で、緊張した様子だった。 まだ五歳ぐらいだった彼女は緊張のあまり、兄上の前で綺麗なドレスに紅茶をこぼしてしまったのだ。「もっ、申し訳ございません!」 公爵家は、帝国でも最も位が高い貴族だ。 伯爵家はその下であり、しかも初顔合わせの際に犯した粗相だ。彼女の両親は平謝りし、彼女自身も顔を青ざめさせて、泣きそうになっていた。「ふふふ、なんだか悪役令嬢みたいな顔をしているのに、可愛い女の子だね。ねっ、兄上」「あっ、ああ。そうだな。フライの言うとおりだ。エリザベート嬢、気にすることはない。緊張するのは誰にでもあることだ」 僕が笑ったことで空気が弛緩し、両親も謝る伯爵家の人たちを許して、エリザベート嬢に着替えをさせた。 その後は、なぜか僕が相手をしてこいと言われて、彼女が着替えを済ませると、僕が話し相手に任命されたのだ。「フライ様、ありがとうございました」「うん? 僕は何もしてないよ」「そんなことはありません。フライ様がお言葉
last updateÚltima actualización : 2026-07-29
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六歳の剣鬼

 《sideある公爵家騎士》 私は長年、エルトール公爵家に勤めてきた。 それは私にとって誇りであり、代々エルトール家の人々が優秀で、領民思いであったからこそ、騎士でいられることを誇りに思えた。 そして、新たに公爵家に二人の男子が生まれたことは、とても喜ばしい。 特に、長男であるエリック様は、神童と呼ばれるのに相応しい魔力の才をお持ちであった。剣術は人並みではあったが、努力すれば問題はない。 だが、我々を驚かせたのは、次男であるフライ様であった。 真面目で実直なエリック様に対して、フライ様はどこか呆然としていることが多い子供だった。 それは逆に言えば子供らしくて、我々の訓練を見つめる姿を、我々も微笑ましく見ていたものだ。 しかし、ある日……我々の訓練に混じるように、騎士見習いの少年が使う子供用の木刀を持ち出して、素振りを始めたのだ。 誰かが教えたのかと問いかけても、誰も知らないという。 最初は重さによって、木刀に振り回されていた。 我々も素振りぐらいならばと、その姿を微笑ましく見ていた。 だが、その剣は日を追うごとに鋭くなって、いつの間にか木刀を扱えるようになっていた。 信じられるだろうか? 五歳だぞ。 五歳の子が、十三歳の騎士見習いが使う木刀を、素振りで振り回している。あり得ない。いや、あり得たとしても、あのように鋭い振りはできない。 しかも、最初はただ振り下ろすだけだった訓練は、さらに日を追うごとに、横薙ぎになり、振り上げになり、八方から剣を振るう型に昇華していた。 一年後、六歳になられる頃に、手合わせをしたいと言われた。 皆が戸惑った。 こんな子供と打ち合ってもいいのか? そして、打ち合ったとしても、あの素振りをしている子供に負けたなら、自分たちの自信は打ち砕かれるのではないか?「ダメ?」 ウルウルとした瞳で見上げるのはズルい。容姿は可愛い少年なのだ。 しかも、公爵家の次男様を無下に
last updateÚltima actualización : 2026-07-29
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弟は尊い

《side エリック・エルトール》 私はエルトール公爵家の長男として、恥ずかしくない教育を受けてきたつもりだった。 周りは私を神童と呼び、また私もそう呼ばれるだけの自信を持ち、努力をしてきた。 だからこそ、弟が生まれ、弟が魔法を使っている姿を見て違和感を覚えた。 まず第一に、魔法は誰かに習わなければ使うことができないはずだ。それなのに、フライの奴は魔力を全身に纏って放出していたのだ。 そんなことを五歳の子供ができるのか? いや、実際に目にしているのだ。あり得るのだろう。「どうしてお前は魔法が使えるのだ? それに、なぜ毎回魔力を使い切るんだ? そんなことをしていては、命の危険があるではないか!?」 五歳の弟はぼんやりとしているところがあり、その可愛らしい見た目に反して、狂気的な行動が私を不安にさせていた。「ああ、兄上ではありませんか? 魔法はなんとなくできました」「なんとなく!?」「あと、これは魔力量を増やす訓練です」「はぁ? 魔力量を増やす?」「そうです」 何を言っているんだ、こいつ? 魔力量は生まれ持った総量が決まっていて、増えることなどあり得ない。 私など人よりも多いと言われているが、それは普通の人に比べればだ。 魔導士たちは生まれながらに魔力の総量が多く、私の二倍はあるのが普通だ。 だからこそ、私は魔法だけでなく、剣術も頑張らねばならないと思っていた。「バカを言うな。そんなことができるはずがない!」 そうだ。本当にそんな方法で増えるなら、誰もが実践したい。私だって、本当に増えるなら教えてほしい!「なんです? 怖いのですか?」「むっ!? 怖くなどない」 確かに魔力切れになりかけると、頭痛がして、吐きそうになる。あれは辛いのだ。「兄上がやるところを見てみたいです。あっ、でも本当に魔力切れになると死んでしまうので、その手前で止めてくださいね」「むむむ、わかった」 私は小規模ではあるが、火属性の魔法を発動し、魔力を消費し続ける。 これだけでも相当に辛い。魔法は発動しているだけで魔力を奪っていく。ジリジリと自らの魔力が消費されていくのを感じて、恐怖すら覚える。「ぐっ!」「兄上、頑張れ。もう少し!」 私は言われるがままに魔力を使い続けて、頭痛と眩暈、吐き気がしてきた。「はい。兄上、もういいですよ」「うっ!」 
last updateÚltima actualización : 2026-07-30
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英雄の片鱗

 《sideエルトール領酒場の店主》 帝国を襲うほどの大干ばつがあった年がありました。 それに伴い大飢饉が訪れ、エルトール領もまた飢饉の影響により、食べ物も、飲み物も高騰して、皆が満足のいく食事をとることができないでいました。 我々が酒場をやっていても、連日満員で賑わっていたのが懐かしく思えるほどに、出せるものがなくて寂しく思っていました。 そんな時です。あの方が訪れたのです。「邪魔するよ」「なんだい、坊ちゃん。ここは子供が来るところじゃないよ」「あれ? 僕のこと知らない?」「僕だと?」 じっと身なりを見れば、高貴な身分の方だということはわかる。貴族が平民の暮らしを冷やかしに来ることはあるので、また冷やかしだと思ってイライラする。 それでなくても平民は飢えているのに、貴族は普通に食事をとって、のうのうとした暮らしをしているのだ。 理不尽じゃねぇか!「うん。フライ・エルトールだよ」「フライ・エルトール? なっ!? まさか、エルトール領の次男!」 なんで領主様の息子が、こんな酒場に来てんだよ! 周りも驚いて帰ろうとしてんじゃねぇか! それでなくても人が寄りつかないっていうのに、貴族が出入りしたという悪い噂が流れれば、こっちの商売は終わりだ。「そっ、わかったなら、エールを持ってきてよ」「ひっ! しかし、エールは現在、金貨一枚でして」 嘘だ。ぼったくってやった。 貴族なら、庶民に金ぐらい払え。 本当はエールなんて、銅貨五枚もあれば釣りを出す。「へぇ〜、安いね。はい」「へっ!?」 なんだと! 本当に金貨を出した? あまりにも世間知らずすぎじゃないか? 俺は貴族に嘘をついた。 いくら飢饉だと言っても、エール一杯に金貨一枚は盛りすぎだった。 せいぜい樽で金貨一枚ならまだ許されるか? 俺は冷や汗を流しながら、樽を持ってきた。「えっ? 確かにエールを持ってきてと言ったけど、樽で持ってこられても。まぁ、仕方ないね。ジョッキを貸して」「はっ、はい!」 なんとか誤魔化せたか? ガキだから相場がわかっていないのか?「うん。ぬるくてまずいね。温度変化を使えばいけるかな? うーん、まぁ実験だよね」 一人でブツブツと何かを発すると、魔法を使い出した。しかも、その魔力は見たこともないほど膨大で、生まれながらに持っている素質を見せつけ
last updateÚltima actualización : 2026-07-30
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幼い恋心 前半

 《sideエリザベート・ユーハイム》 わたくしには想いを寄せる男性がおります。 ユーハイム伯爵家の娘としては、本来、エルトール家の長男であるエリック様との婚約を成立させて、支援を頂くことが大事でした。 本来であれば、姉上が婚約を結ぶはずでしたが、病弱な姉に代わって、わたくしが選ばれたのです。「エリザベート、本当にすまない。五歳のお前にはわからないかもしれないが、家族を守るために、どうかこの結婚を成功させてほしい」 お父様は悲しそうな顔をして、わたくしにお願いしました。 わたくしは最初こそ意味がわかりませんでしたが、この婚約を成功させなければ、我が家は大変なことになると母から強く言われました。 実は、姉の病気によって我が家は資金に困窮しておりました。婚約をするならば、支援をしても良いとエルトール家から申し出てくださったというのです。 五歳の何もわからないわたくしは、絶対に成功させなければならないという想いを抱えて、エルトール家に向かいました。 正面に座ったのは二人の男の子で、一人は利発そうな年上の方でした。もう一人はぼんやりとした顔をして、わたくしと同い年の方でした。 なんとか話がまとまりかけた頃、わたくしがお茶をこぼすという粗相をしてしまいました。相手に失礼をしてしまったのです。 その時のわたくしは顔が真っ青になって、何も考えられないまま呆然としてしまいました。 両親も公爵家の方々に謝るばかりで、わたくしは泣きそうになりました。「ふふふ、なんだか悪役令嬢みたいな顔をしているのに、可愛い女の子だね。ねっ、兄上」 「あっ、ああ。そうだな。フライの言うとおりだ。エリザベート嬢、気にすることはない。緊張するのは誰にでもあることだ」 わたくしを救ってくださったのは、先ほどぼんやりとしていると思った少年でした。フライ様。彼の言葉の意味が理解できませんでした。 ですが、彼の一言で空気が変わりました。 公爵家のご当主様が「心配しなくていい。それよりもドレスが濡れてしまったね」と言って、着替えてくるように言ってくださいました。 さらに、話し相手にフライ様を向かわせてくれたのです。「フライ様、ありがとうございました」 「うん? 僕は何もしてないよ」 「そんなことはありません。フライ様がお言葉をかけてくれたことで、皆様が笑ってくださいま
last updateÚltima actualización : 2026-07-30
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幼い恋心 中盤

 《sideエリザベート・ユーハイム》 両親からは、姉の部屋には入ってはいけないと言われ続けてきました。 そのため、久しぶりに入る姉の部屋は薄暗くて、とても陰湿な雰囲気の場所でした。 なんだか扉を開けてから怖くなり、わたくしはフライ様をお呼びしたことを後悔しました。「ふっ、フライ様、申し訳」 わたくしが謝って部屋から退出していただこうと思っていると、フライ様は姉が寝ているベッドに近づいていかれました。「エリザベート様、お姉さんの名前は?」「アイリーンです」「そう、アイリーン様、意識はありますか? お見舞いに来させていただきました。フライ・エルトールです」 フライ様の声に反応して、姉は苦しそうに目を開けました。 わたくしは長年、姉に会っていないことを思い出して、幼い頃は何度か顔を見たはずの姉が、痩せこけて病的な顔をしていることに驚きました。 このような変貌を遂げていたなど考えもせず、ショックを受けました。「申し訳ございません。エルトール様に来ていただいたのに、このような姿でお出迎えすることを、お詫び申し上げます」 姉は貴族の令嬢として恥ずかしくない言葉遣いで、フライ様に謝罪を口にしました。ですが、体を起こすことができなくて、本当に苦しそうにしておられます。「いえ、僕のほうこそ、レディーの部屋にお邪魔してしまい申し訳ありません。あなたのことをエリザベート様が心配されていたので、勝手ながら助力したくてやってまいりました。少しだけ僕に身を委ねていただけますか?」 フライ様は姉と何を話されているのだろうか? わたくしには何もわからない。「わたくしは身を起こせません」「大丈夫です。辱めるつもりはありません。ただ、診察をさせてもらうだけです。その前に、この部屋の空気は良くないですね。クリーン! ピュリフィケーション!」 フライ様の体から魔力が放たれると、それまで陰湿な空気だった部屋の中が、一気に澄んだように感じます。「フライ様! 何をなさったのですか?」「うん? 僕は無属性で、光属性魔法は使えないから、魔力でこの部屋を一気に綺麗にして、細菌などを殺すために浄化をね。まぁ、内容は難しいから今度ね」 全く意味がわかりません。ですが、わたくしも息がしやすくなり、姉の呼吸も落ち着いたように感じられます。「診察をさせてもらうね。サーチ」 フ
last updateÚltima actualización : 2026-07-30
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幼い恋心 後半

 《sideエリザベート・ユーハイム》 姉が救われた奇跡。フライ様が治してくださった奇跡。 姉が普通に起き上がってくれたことが、わたくしの感情を爆発させて、涙が溢れて止まりません。 いつの間にか両親もやってきて、メイドなども涙を流して、わたくしたちは久しぶりに、何かとんでもない呪いから解き放たれたような気分になりました。 涙が止まる頃に、フライ様にお礼を言おうと探しましたが、フライ様は自分のやることは終わったから、あとは栄養のある物を食べて元気になってくださいと執事に言い残して、帰っていかれたそうです。 どうしてこんなことができるのでしょうか? 姉の命を救い、我が家に巣食う長年のしがらみから解き放ってくれたというのに、フライ様にとってはなんでもないことのように立ち去っていくのです。 本来であれば、医者たちのように多額の医療費を請求して、薬師たちのように高額の薬を売りつけることもあるのです。 それなのに、フライ様は何も求めず、むしろ、たくさんのプレゼントを残していきました。わたくしに贈ってくださった花は、気持ちをリラックスさせる効果があるハーブでした。 姉へのプレゼントは、栄養がつきやすく、回復効果のあるフルーツでした。 そして、両親へ渡したのは、姉の容態を教えるカルテと、その処置に必要な資金だったのです。 しかも「お見舞い金だから、返さなくていい。僕のお小遣いの範囲だから」とメッセージを添えてくれていました。 どこまで、どこまであなたは……。「お父様、申し訳ありません。わたくしはエリック様の婚約者にはなれません。フライ様が好きなのです。フライ様以外の殿方など考えられません」 わたくしは生まれて初めて、両親に我儘を言いました。「ああ、その気持ちは私たちにもわかっていたよ。そして、今回の一件で私たちはフライ様に大きな恩を受けた。エリザベートよ。生涯を賭けてフライ様にお仕えする気持ちはあるかい? きっと彼は稀代の英雄になれるだろう。それでも」 父が心配してくれているのはわかります。英雄ともなれば、たくさんの女性に愛され、また家になど帰ってこないかもしれない。 わたくしでは理解できないことも、たくさんあるでしょう。「それでもわたくしは、フライ様の横にいたいと思います。あの方が盾を望まれるならば、わたくしはあの方の盾となりましょう。あの方
last updateÚltima actualización : 2026-07-31
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入学式

 《sideフライ・エルトール》 いよいよ学園に入学することになってしまった。「フライ様、行きますよ」「うん。おはよう、エリザベート。それに、アイリーンさんもおはよう」「おはようございます。フライ様」 十歳の頃に、無属性の回復魔法を使って助けたアイリーンさんは、すっかり元気になったようだね。 少女から女性に変化する時期が、女の人には三度訪れるというが、二人の一度目の変化を目の前で見ている気分だ。 金髪縦巻きロールのエリザベートは、どこからどう見ても、僕が物語を語り聞かせた強気の悪役令嬢そのものだ。 昔から、エリザベートは悪役令嬢の物語が好きだったからわかる。てか、まさかそっちに極振りするなんて思わなかった。 アイリーンさんは病気だったこともあり、儚げな印象だったけど、さすがは貴族のお嬢様という雰囲気だね。「そろそろ行こうか?」「「はい!!」」 馬車に乗り込むと、なぜか僕を挟むように二人が座る。 しかも、色々と成長した二人が胸元の開いたドレスで僕の腕を抱きしめて乗っているのは、なぜでしょうか? 確かに昔からエリザベートは押しが強かったので、こんなものかと思えるが、アイリーンさんまで?「どうかされましたか? フライ様」「あっ、いや、アイリーンさんが元気になってよかったなって」「ふふ、それもフライ様のおかげですわ。わたくしは本来ならば、今頃死んでおりました。ですが、フライ様が命を授けてくださったのです。ですから、この身も、命も、全てはフライ様のものですわ」 いや、そんなことはないだろ。普通にアイリーンさんのものだと思う。 アイリーンさんは、エリザベートとは違って、金というよりも、くすんだ黄色い髪に少し赤が混じるような髪色をしている。 おっとりとした優しい笑みを浮かべる綺麗なお姉さんだ。 胸はどちらも、十五歳、十六歳とは思えないほどに成長されておられる。最近は食事も十分に取れているようで、何よりだ。「そろそろ学園ですわよ」「フライ様、姉様とばかり話してズルいです。わたくしとも、もっと話してくださいませ」「えええ! エリザベートとは、いつもたくさん話しているじゃないか?」「足りませんわ!」 女性の扱いに慣れていないわけじゃないし、誰かと話すのは嫌いではない。 だが、こうやって二人同時に好意を寄せられることはなかったので、
last updateÚltima actualización : 2026-07-31
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