All Chapters of お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。: Chapter 51 - Chapter 60

101 Chapters

才女は理解者を手に入れた

 《sideトア》 私は幼い頃から、人とは違う思考を持っていました。 両親からは変わり者だと言われていましたが、それでも両親は私を愛してくれていたと思います。ですが、そんな両親が亡くなってしまい、私は幼いながらも計算ができたので、商家に雇っていただくことができました。 商家の旦那さんはとても良いおじいさんで、私がすぐに読み書きや計算を覚える才能を認めてくれました。「トアはとても賢いな。だが、商売には向いておらん!」「なっ!?」「壊滅的に接客業が下手じゃ! 人の心も理解しとらん!」「ななな!!! 旦那様、酷くないですか?!」「うむ、酷くない。じゃが、トアはとても賢い。じゃから、学園都市に行って、自分の賢さを活かせる学問を身につけるが良い」 商家の旦那の言葉に、私は嬉しさと寂しさを感じました。 商人として、商家の旦那に恩返しがしたかった。だけど、私は壊滅的に商人としての才能がないそうです。 商家の旦那のお仕事を手伝うことは、商人としてはできません。 でしたら、私には何ができるのでしょうか? 魔力が少ない私には、魔法がほとんど使えません。 商家の旦那に紹介されて、男爵様に後見人となっていただき、私は学園都市に入学することができました。 男爵様に、商家の旦那がかなりの額を積んでくれたのだと後になって知りました。どこまでも感謝しかできません。ですが、私自身も学園都市で暮らすようになって、手持ちの資金が底をつきかけました。 後見人になっていただきましたが、支援は何も得られないので、自分で働いて生活をしなくてはいけません。私は学園に通いながらも割の良い仕事を探して、酒場で働き始めました。 お尻を触られるのは毎日のようで、だけど醜女な私にそれ以上のことを求める人はいませんでした。 ですが、ある時、お酒に酔いすぎたおじさんに無理やり路地裏に連れて行かれました。怖くて、どうすればいいのか困っていた時です。「一度だけだ。フライ・エルトール」 お酒を飲んだ貴族の男性が、私を助けてくださいました。年齢は同じくらいなのに、とても雰囲気のある男性で、おじさんを怖がらせていました。 助けてくださった際にお礼を述べると、とても不思議そうな顔をされました。「支援を受けているんだよね?」「いえ、誰からも支援を受けていません」 男爵様の家にある馬小屋で寝泊
last updateLast Updated : 2026-08-14
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レアキャラ登校

 《sideフライ・エルトール》 学園に入学して、気がつけばもう半年が経とうとしている。 フラフラとしすぎて、学園に全く通っていない。 その間、ジュリアやレンナの教育をエリザベートに任せていた。 正直、学園で授業を受けなくても勉強くらいは自分でできるし、何より、のんびり過ごす時間の方が僕にとっては重要です。 だけど、そんな僕の生活が、どうやら他の生徒たちには異様に映っているらしいのです。「フライ・エルトールが今日も来ていないって?」「本当にこの学園に在籍してるのか? 幻の存在なんじゃないか?」「噂では、授業に出ない代わりに裏社会で活動しているとか、闇の魔法を研究してるとか……」 どうしてそうなるんだ? ただ、授業をサボっているだけなのに、いつの間にか奇妙な噂が広がっている。 聞いたところによると、僕のことを「レアキャラ」と呼ぶ生徒もいるらしい。まぁ、学園に来ないんだから、そう呼ばれるのも仕方ないか。 そんなある日、久しぶりに学園に顔を出してみると、校庭で待ち構えていたのは獣人の王子、ロガン・ゴルドフェングだった。「やっと見つけたぞ! フライ・エルトール!」 突然名前を呼ばれて振り返ると、そこには獅子の獣人であるロガンが立っていた。その目には明確な挑戦の色が宿っていた。「うん? これはロガン・ゴルドフェング王子じゃないですか? どうされました?」 今日、僕をエスコートしてくれているジュリアが、ロガン王子を威嚇している。なので、僕はジュリアの頭を撫でてあげます。「決闘を申し込む! 貴様がどれほどの実力を持っているか、この目で確かめたい!」 えっ、決闘? いきなりそんな話を持ちかけられても困るんだけど……。「いやいや、どうしてそんなことに?」「お前が学園をサボってばかりいるのは有名だが、そのくせ、他の貴族や王族たちから妙に注目を浴びている。ブライド皇子やアイス王子とも関わりがあると聞いた。何を考えているか知らんが、貴様の実力をここで明らかにしてやる!」 どうやら、僕がサボりすぎているせいで、実力がどれほどのものか知りたいらしい。困ったものだ。「悪いけど、僕は決闘とかあんまり得意じゃないんだよね」「ふざけるな! 帝国の公爵家がそんな腰抜けなわけがあるか!」「フライ様、相手にしなくてもいいです!」「うん? ジュリアは何か知っ
last updateLast Updated : 2026-08-14
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戦った後は友情を求めるよね

  ジュリアが告げた決闘の合図で、校庭の中央が静まり返った。 周囲には数十人もの生徒たちが詰めかけ、誰もが興味津々の目でこちらを見つめている。彼らにとっては、学園で行われる騒ぎは全てがイベントだ。 僕が学園にほとんど顔を出さないせいで、有名なロガン王子と争っているのは誰だと噂され、その熱気は並外れたものになっていく。「帝国公爵家の次男、フライ・エルトールだってよ……どんな戦いをするのか見ものだな」「いや、あの獣人の王子、ロガン様を相手にまともにやり合えるのか? そもそもフライ様が戦えるのかすら知らないぞ」「そりゃ無理だろう。あのロガン王子だぞ。現在の一年生の中でもトップクラスの武術家だって噂だ」 ざわつく観客たちの声が聞こえてくる。まぁ、無理もない。僕が戦えるなんて思っている人間の方が少ないだろう。 学園都市内で戦闘をした機会は皆無だ。 対するロガン王子は、獣人としての身体能力を活かして学園内で活躍している。 戦闘開始の合図とともに、獅子のような雄叫びを上げた。その鋭い爪が陽の光を反射して輝いている。「来い、フライ・エルトール! 身体強化くらいしてみろ! それでも俺様に敵うとは思えんがな!」 ロガン王子の挑発に、観客たちの視線がさらに熱を帯びる。 身体強化、それはこの世界では基本中の基本の戦闘技術だ。 身体能力を魔力で底上げし、獣人のような俊敏さや怪力を一時的に得る。ロガン王子の身体からは、獣人特有の身体強化の魔力がすでに溢れており、見るからに準備万端だ。 だが、僕はその誘いをあえて無視することにした。「まぁ、そこは適当に」「はぁ? 貴様、ふざけているのか?」 ロガン王子の顔が明らかに険しくなる。獣耳がピクピクと動き、怒りを表している。「別にふざけてないさ。ただ、僕が身体強化を使って戦えば、君の実力がよくわからなくなっちゃうだろ?」 観客たちがざわめく。「身体強化しないって……マジか?」「いやいや、獣人相手にそれは自殺行為だろ?」「さすがに冗談だろう……?」 ジュリアが僕を心配そうに見つめているのが視界の端に映る。彼女は何か言いたげだが、僕は彼女に頷いてみせる。 ジュリアは不安そうに唇を噛み締める。 だけど、エリザベートはどうしてそんなに自信満々なんだろうね。「……いいだろう。その傲慢、後悔させてやる!」 ロ
last updateLast Updated : 2026-08-14
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祭りの裏には

  ロガン王子に捕まって、いきなり目立ってしまいました。 まぁ、それでも学園都市に久しぶりにやってきた理由があります。 近々行われる大規模イベント。《グランド・ユナイト・フェスティバル》 学園都市で行われる二大イベントであり、所謂お祭りです。「フライ様、このような人混みにいらっしゃるなんて珍しいですね」 エリザベートが微笑む。学園にも顔を出さない僕が、こうして学園のイベントには参加して広場にいるのは確かに珍しいことです。「僕はお祭りが好きなんだ。みんなで集まって何かするって楽しいじゃないか」「それならばもっと学園に来ても良いのではないですか?」「学ぶのは好きじゃないんだよね。じっとしているのがつまらないんだ」「ふふ、我儘ですね」「それに学園都市全体が盛り上がると聞いて、ちょっと興味が湧いただけだよ」 実際に、街に出てもお祭りに向けて賑わいを持ち始め、どこに行っても賑やかなのだ。 すでに学園都市全体で一週間前から準備が始まり、一ヶ月間にわたって、様々な競技が行われて賑わいを見せる。 僕が学園にやってきたのは、こちらの方が静かだったこともある。「ボクも楽しみなのです! お祭り、大好きなのです!」 ジュリアが元気いっぱいに尾をブンブンと振りながら楽しさを全身で表現している。彼女の無邪気な笑顔には癒されるので、ついつい頭に手が伸びてしまう。 広場の中心には、高台に立つ一人の教師がいる。 彼は学園都市全体を取り仕切る運営委員の一人で、威厳ある態度と堂々たる声で、全員に向けて話し始めた。「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。いよいよ学園都市最大のイベント、『グランド・ユナイト・フェスティバル』の開催が近づいてきました!」 歓声と拍手が沸き起こる。周囲の熱気がどんどん高まっていく。「このフェスティバルは、学園都市に所属する多種族、そして多国籍の皆さんが一丸となり、交流と競争を通じて友好を深めることを目的としています。競技に参加するもよし、観戦を楽しむもよし、この機会に思う存分、この学園都市の特色を堪能してください!」 教師の声が続く中、僕はその「友好を深める」という言葉に微かな違和感を覚えた。「ただの祭りであってほしいよね……」 独り言のように呟くと、エリザベートが意味深な笑みを浮かべる。「フライ様は鋭いですね。この
last updateLast Updated : 2026-08-15
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地下迷宮があるなら入りたい

  何者にも縛られたくないという想いは誰にでもあるはずです。 いや、サラリーマンとして、世界の歯車に収まっていた僕がいうのです。それは愚かな考えであり、そんなことはできないと知っています。 フライ・エルトールとして、公爵という地位に胡座をかいて、その歯車に収まりながらも、自由を謳っているだけの自分にいう資格はないとも言えますね。 だけど、自由を求める者たちに、そんなことを言っても仕方ない。 だって、生まれた環境に対して不満があり、もっと良い環境を求める。自由とは、本当に何なんでしょうね。「テル。今日は一人で街に行くよ」「ご主人様?」「たまには男には一人になりたい時があるんだ。テルは女性だから、わからないかもしれないけどね」「そういうときだけ、私を女にするのはズルいわね」 僕は一人で学園都市の地下へと足を踏み入れていく。学園都市の地下には、迷宮が広がっている。 上下水道が流れ、多くの魔力と魔法を研究するために作られた巨大な迷宮。 それは学園都市が一部を管理すると共に、学園都市に合法的に侵入する経路にもなる。「ふ〜ん、小説で読むのと、実際に見るのでは全然違うね」 フラフラと迷宮の中を歩きながら、無属性魔法を発動する。 今回発動するのは、マッピングの魔法だ。 無属性って本当に便利だと思うんだよね。自分が通った場所に魔力を残留させるだけで、自分だけに見えるエネルギーの塊が生まれる。 それを目印にして、頭の中に地図を作り出す。 無属性のエネルギーで作られた迷宮の地図が浮かび上がって、僕がいる位置を教えてくれるのです。「お前! こんなところで何をしている?!」「これは、あなたは迷宮の管理人でしょうか?」「そうだ。我々鼠人族こそが、迷宮の管理を行っている。貴様もバカにするのか?」「バカに?」「そうだ。上にいる者たちは、我々を穴倉の鼠とバカにする。だが、我々こそが迷宮の主であるというのに!」 鼠人族は、獣人族の一種で小柄な体と、大量に人を増やすことができる。だが、あまり見た目が良いとは言えない。 小柄な体に丸い背中、ネズミのような顔をした者もいる。「そうなんですね。僕は学園都市に入学した学生で、フライと言います。学園都市には迷宮があると聞いて、来てみたかったのです。あなた方、鼠人族が管理をされているとは、是非に話を聞かせてはくれ
last updateLast Updated : 2026-08-15
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たくさんの人がいると

  グランド・ユナイト・フェスティバル、通称「GUF(グフ)」がついに幕を開けた。 初日は、学園都市全体がお祭り騒ぎの開会式だ。 学園都市に通う生徒は三学年あり、多種多様な種族や国が存在する。 それはある意味で、誰でも学園都市に入ることができて、見学も許されている。 こんなにも無警戒で大丈夫かと言いたくなるが、一応は学園都市側も、この時期に学園都市にやってくる者には、マーキングという魔道具をつけてもらって、学園都市を出るまで外せないリングを装着してもらう決まりになっている。 それはもちろん、学園都市で働く全ての大人も同様であり、生徒以外は全てが監視されているというわけだ。 ただ、それでも学園都市全体が祭りの喧騒に包まれ、各地から集まった貴族、王族、そして平民の学生たちは楽しそうにフェスティバルに参加する。 街は華やかな色彩と活気に溢れている。この祭典の目的は「国や種族を超えた協力を表す、統合の象徴」として、互いを理解し合うための交流と競技ということになっている。 だが、これは表向きの話だ。「フライ様、準備はできましたか?」 エリザベートとアイリーンさんが、今日も麗しい微笑みを浮かべながら僕を見つめている。いや、いつも以上にニヤニヤとしている。 今日は開始日のために、僕も貴族として、身なりを整えて着席していた。「まぁね。でも、どうしても気が進まないなぁ」 ジュリアとレンナが僕の横で護衛についている。ジュリアは元気いっぱいだが、レンナは未だ不満げに腕を組んでいた。「貴族の祭典に何を緊張しているのですか?」「いや、エリザベート。僕って社交界デビューもしてないんだよ。それにこれだけの人々が集まって、各国のお偉いさんも来ているんだ。これ、絶対裏で何か起きるだろ」「フライ様が言われると現実になりそうで怖いです」 表向きは種族間の協力や交流を祝う大イベントだが、各国や種族がひとつの場に集まるとなれば、当然、互いの思惑や対立がぶつかり合うことになる。 そして、これを嫌う者、あるいは利用しようとする者が必ず現れる。「でも、まずは競技の話からだな」 色々な予測をしていると、魔道具で作られた巨大なモニターに司会を行う者の顔が映し出される。 グランド・ユナイト・フェスティバルは一ヶ月近くの時間を使って、四つの競技が行われる。 1、「グ
last updateLast Updated : 2026-08-15
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獣人王子は強いやつに会いにいく

 《sideロガン・ゴルドフェング》 獅子一族である俺様は、獣人たちを束ねる王族として生まれた。 ロガン・ゴルドフェングとして、己の強さと誇りを何よりも大切にしてきた。 獣人族は力が全てを物語る。強者が弱者を守り、導く。それがこの世界の理であり、強さこそが俺様たち王族の証明だ。 だからこそ、俺は常に強者であろうとした。強い者には敬意を払い、弱き者は守ってやるべきだと考えている。 そんな俺が、あのジュリアを見かけたのは、学園の授業の時以来だった。「ジュリア! 待て!」 俺の声に反応し、金色の耳がピクリと動く。柔らかそうな尻尾がふわりと揺れ、少女は振り返った。狼族の娘は孤高を好むと聞いたことがあるが、彼女ほど強さと美しさを兼ねた存在は見たことがない。「……ロガン王子、何の用なのですか?」 その態度には少しも媚びや怯えがなかった。獣人は相手が強ければ、肌でそれを感じ取れる。 だが、ジュリアは俺様を前にしても怯えない。小柄な体つきで、年齢の割にあどけない顔。だが、その瞳には芯の強さが宿っている。 俺は初めて会った時から、彼女に妙に惹かれていたのだ。「お前、どうしてあんな奴、フライ・エルトールなんかの奴隷をしている?」「……ご主人様は優しいのです。それにお前よりも強いのです」「ご主人様だと? それに俺様よりも強い? あんなぼんやりとした奴がか?」「ご主人様のことを悪くいうお前のことは嫌いなのです」「なっ?!」 俺はあの光景を見た瞬間、胸が張り裂けそうになった。ジュリアのような獣人の娘が、人間の貴族を「ご主人様」と呼ぶなど、屈辱以外の何物でもない。「俺が助けてやる。お前の主人であるフライ・エルトールに話をつけて、お前を自由にしてやる」「必要ないのです!」 その言葉に、俺は愕然とした。彼女は俺を真っ直ぐ見つめて言う。「私は今が幸せなのです! ご主人様は、ボクを奴隷として扱ってないのです。自由にさせてくれるし、優しいのです!」「……だが!」「あなたには関係ないのです! 放っておいてほしいのです。ご主人様に他のオスの匂いを感じると思われたくないのです」 ジュリアは俺の言葉をバッサリと切り捨て、軽やかに去っていく。その小さな背中が遠ざかるにつれ、俺の中に湧き立つものは悔しさと焦りだった。 何が幸せだ? あんな貴族の下で自由などあるも
last updateLast Updated : 2026-08-16
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計画は密かに進行する

 《sideノクス》 俺が生まれた村は小さくて貧しかった。 だけど、平穏で温かな場所で、村人たちは家族同然に暮らしていた。  隣の家で穫れた野菜はみんなで分け合い、誰かが病気になれば、みんなで看病した。貧しいながらも、助け合いの心がそこにはあった。 俺の家も例外じゃない。 父さんと母さん、それに妹のエリー。父さんは狩人で、母さんは村の集会でよく話し役を務めていた。 エリーは小さい体でいつも俺の後を追いかけてきて、「お兄ちゃん、大好き」って笑ってくれた。 そんな平和な日々が、ある日突然壊された。 それは、隣村の若者が領主の倉庫から食糧を盗んだことがきっかけだった。隣村だけじゃなく、俺たちの村も同じ領地の一部だからと、領主は連帯責任を求めた。「盗賊をかくまったのはこの村だな?」 領主の兵士たちが村にやってきて、そう言った。村長は必死に弁明した。「我々は何もしていない! 隣村の者たちとも話していない! 何の関係もない!」 だが、兵士たちは話を聞こうとしなかった。 領主の命令は絶対だとばかりに、村の家々を壊し始めた。大人たちは止めようとしたが、次々と兵士たちに殴られて倒れていく。「火を放て!」 兵士の一声で、村が燃え上がった。俺の家も、隣の家も、炎に包まれていく。母さんが必死にエリーを抱えて逃げようとする姿が、今でも目に焼き付いている。「お兄ちゃん、怖いよ……」 エリーが泣きながら俺の服を掴んでいた。俺は何もできなかった。ただ、彼女を守るために手を握り返すことしかできない。 村人のほとんどは命だけは助けられたが、住む家も、家族を養うための畑も、全てを失った。 その後、俺たちは隣村の一部の人々に匿われたが、彼らも余裕がなかった。母さんは病気になり、エリーを守るために身を削るように働いていたが、結局、ある冬の日に倒れた。 父さんも村を守れなかった責任を感じていたのか、最後には母さんを追って亡くなった。「自由で、平等だって……笑わせるな」 父さんが死ぬ前、そう吐き捨てたのを俺は忘れられない。小さいながらもその言葉の意味を考え、心の奥底に刻み込んだ。「俺たちが何をした? どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ?」 領主の顔も見たことがない俺たちが、何の罪もない俺たちが、貴族の気まぐれで全てを奪われる。 そんな理不尽が許せなか
last updateLast Updated : 2026-08-17
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迷宮からの来訪者

 《side鼠人族の少女ミミ》 私はたくさんの兄弟姉妹たち、家族と共に一緒に暮らしています。 ですが、そこは暗くて汚くて、お世辞にも住みやすい場所ではない迷宮の中です。 私たち鼠人族にとっては、それが当たり前だった。生まれ、育ち、そして死んでいくまで、この迷宮から外に出ることはほとんどないのです。 私の名前はミミ。鼠人族の少女で、年齢は十六歳。でも、外の世界ではそれがどういう意味を持つのかほとんど知らなかった。だって、私たちは迷宮の住人で、外の光や風を浴びることなく、ただこの薄暗い世界で生きていくだけの存在なのだと爺様が言っていたのです。 迷宮は私たちの家であり、すべてだった。 無数の通路が交差し、広大な空間が広がるこの地下には、古代の遺跡や流れ続ける水脈、そして魔力の残滓が渦巻いている。 それは壮大で神秘的だけれど、時には恐ろしいものでもあった。 そんな迷宮を管理し、共に生きていく鼠人族の生活は決して楽ではない。地上の者たちからは「穴倉の鼠」だとか「迷宮のゴミ掃除屋」と嘲笑される。 私たちは迷宮の監視をするだけの存在で、学園都市の地上で権利や平等を語ることなど許されない。「鼠人族なんていなくてもいい」「ただの獣以下の存在」 そんな言葉を何度聞いてきただろう。私たちの仲間が地上に出れば、必ず虐げられる。それが当然だという風潮に抗う力は、私たちにはなかった。 迷宮の中では、食べ物すら簡単には手に入らない。 地上から持ち込まれるわずかな配給や、迷宮内で自ら育てたキノコ、そして魔力を含む苔や草を食べてしのいできた。 水は豊富にあるけれど、それだけでは命を繋ぐことはできない。「このまま迷宮で死んでいくんだろうな……」 それが私たちの運命だと、誰もが信じて疑わなかった。そんな生活に希望を見いだすことなんてできなかった。 それでもある日、私たちの生活に一筋の光が差し込んだ。 彼がやってきたのだ。 その日、迷宮を歩き回っていると、初めて見る人間が鼠人族のお爺さんと話をしていた。若い男性で、端正な顔立ちをしている。 貴族らしい高貴な雰囲気がありながら、どこか気取らず、親しみやすそうな笑顔を浮かべていた。「へぇ~、迷宮ってすごいですね。あなた方がこれを管理しているなんて、尊敬します」 人間が私たちを尊敬するだなんて信じられなかった。誰
last updateLast Updated : 2026-08-18
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頼られたら

 《sideフライ・エルトール》 朝、僕の屋敷の扉をノックする音が響いた。 普段は誰も訪ねてこないのに、珍しいこともあるもんだと思いながら扉を開けると、そこに立っていたのは鼠人族の少女だった。 小柄な体に丸まった背中。だけど、可愛らしい大きな瞳と前歯を持ち、他の鼠人族よりも人族の特徴が強い、とても可愛らしい女の子が、僕に向かって深々と頭を下げた。「鼠人族のミミと申します。フライ・エルトール様、私をここで働かせてくださいっチュ!」 彼女の言葉に一瞬驚いたものの、すぐに柔らかく微笑んで応えた。「僕のことを覚えてくれていたんだね。ようこそ、ミミ」 僕は来る者を拒みません。彼女がどんな理由でやってきたのか知りませんが、僕を頼ってここに来たのなら受け入れるだけです。「私たち鼠人族は、ずっと迷宮の中でしか生きられないと諦めていました。でも、フライ様が教えてくれましたっチュ。迷宮の外でも生きていける可能性があるって。だから、私、自分で外の世界を見てみたいんですっチュ!」 迷宮は薄暗くて、綺麗ではない。ただ、決められた環境で生活するというのは、安住の地であり、そこから外に出るのは勇気のいる行為だろう。 彼女はその一歩を踏み出そうとしている。それを拒む理由はなかった。「ようこそ、君は勇者だね。ここで生活しながら、自分のやりたいことを探していこう。でも、一つだけ条件がある」「条件っチュ?」「僕の屋敷に来たからには、自分の力で自立する方法を学ぶこと。ここはただの安住の地じゃないんだ。僕のお小遣いの中で支援はしよう。だけど、ちゃんと勉強や仕事をすること」 ミミは真剣な表情で頷いた。その覚悟が見えた。「ありがとうございますっチュ! 私、絶対に頑張りますっチュ!」 彼女の決意を見ていると、自然と笑みが浮かんだ。 ミミが屋敷に加わったことを、エリザベートとアイリーンにも紹介した。ミミの姿を見ると、エリザベートは頭を抱えて溜息をつく。「フライ様、また女性ですの? 一体、どこまで増やすつもりですの?」「いやいや、今回はそういうのじゃないよ。奴隷じゃないから、ミミは普通に僕を頼ってきてくれたんだよね? ただ、彼女には学ぶ場が必要だっただけで」「ですが、学園都市に来てから、女性ばかりがフライ様の周りに増えていくのは事実ですわ」 う〜ん、言われてしまえばそうな
last updateLast Updated : 2026-08-18
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