《sideブライド・スレイヤー・ハーケンス》 雨音が響く静かな部屋。外の薄暗い天気とは対照的に、我の心には静かな満足感が広がっていた。 窓際に立ちながら、フライ・エルトールが繰り広げた一連の出来事を思い返す。「……フライ」 あの男は、予想以上の存在感を示した。 あれだけ無欲を装いながらも、周囲の状況を的確に見極め、己の持つ力を存分に活用する。その柔軟な発想と手腕には、感心させられるばかりだ。 仲間に引き込めれば、どれだけ頼りになるのかわかっている。だが、奴は自由で、我の手に収まってはくれないだろう。 我の行く手を阻む可能性もある。 奴の裏に隠された異質な才能。 もしも敵になるならば……何があろうと、我が手で倒すしかないだろう。 だが、今はそれよりも目の前の問題に集中するべきだ。「どうして……エドガー・ヴァンデルガストを拾うのですか?」 部屋の隅に控えるアイクが口を開いた。その目には困惑が見え隠れしている。アイクとエドガーは仲が良くない。 それは互いにプライドが高く、エドガーは貴族としての誇りから平民のアイクを嫌い、アイクはエドガーの態度を嫌っていたからだ。「お前は不満か?」「ブライド様のお考えに不満はありません。ただ、今の奴に価値はないと思いますので、納得できません。エドガーは自らの愚かさで全てを失いました。フライ・エルトールに完敗し、ヴァンデルガスト侯爵家から廃嫡されたのです。リスクはあっても、メリットはないと思います」 貴族といっても所詮は人の子であり、自らの血を受け継ぐ者を大切にする。 王族のようにハーレムを形成できれば、数名の子供を作ることもできる。 だが、ヴァンデルガスト家にはエドガー以外の子供が存在しない。「アイク……それがあるのだよ」 我はアイクに視線を向けた。奴の眉がわずかに寄る。「確かにエドガーは敗北した。そのことによって他の者たちから非難を受け、ヴァンデルガスト家から廃嫡された。だが、ヴァンデルガスト家は今回の一件で他の貴族から孤立したことで、仲間がおらぬ。そして、我も次男という立場であり、皇太子ではない。我にも味方はおらんのだ。つまり、ヴァンデルガスト家及びそれに連なる者たちを、我が配下にできるということだ」 今回の決闘を観戦したのには理由がある。ヴァンデルガスト家が研究していたゴーレムの技術が
Last Updated : 2026-08-10 Read more