Home / ホラー / PLAYER / 1st stage:八番目の住人

Share

1st stage:八番目の住人

Author: 仲原
last update publish date: 2026-08-22 20:11:40

「…………………………ん」

 くぐもった不快な音。先程からずっと、それが聞こえているような気がして煩わしい。

「…………せ…………」

 五月蠅い。

 折角、気持ち良く寝ているというのに、この睡眠を邪魔してくるのは一体誰なのだろうか。

「あ………、…………り……さ………」

 早く居なくなって欲しいのに、声が立ち去る気配は一切感じられず感じた苛立ち。瞼が僅かに痙攣することの不快感を感じ唸り声を上げるが効果は無いようで。

「あの!」

 突然響く大きな音。弾かれたように顔を上げると、目の前には見知らぬ人が立っていた。

「……なん……す……か……?」

 ふわぁぁぁあ。大きな欠伸を零しながらうつ伏せていた身体を起こす。姿勢が変わったことで関節が悲鳴上げ、中途半端な覚醒で鈍る頭が思考を妨げ混乱する記憶。

「これ」

 学生なのだろうか。目の前に居る人物は随分と若い男性で、顔に幼さが残っていた。記憶を辿るがどうも彼の顔を見たかどうか

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • PLAYER   2nd stage:14

     壊れた扉を超えられるかどうかは賭けだったが、予想外にもそれは拒むこと無く素直に開いてくれた。思った以上に呆気なく室内に入ることが出来たせいで拍子抜け。それでも、面倒が起こらなかったことを素直に喜ぶことにし、改めて室内を見て回る。「へぇ」 今回の目的地である分娩室の中だが、廊下や他の部屋と違って汚れが少なく、思ってたよりも綺麗な状態で驚いてしまう。 ただ、そうは言っても全く荒らされていないと言うわけでは無い。 本来有ったはずの場所から動かされた分娩台は随分と壁に近い所にまで移動しているし、床には機材の一部が散乱している。他の場所よりもゴミが少ないと言うだけで、侵入者が全くいなかったと言うわけでは無いのは一目見て分かった。「ここだったんだよね? 配信の最後の場所って」 今一度、部屋の中を見回しながら辿る昨夜の記憶。見覚えのある室内に背筋が凍る。「ここであってると思う、多分」 あの配信がいつされたものなのかは定かでは無い。ただ、確かに映像の中の配信者は、この部屋に入り奇妙な行動を取っていた。「ここだけ何も無いね」 いつの間にか、部屋の中央には山田が立っている。「他の所はゴミとか結構落ちてたけど、ここだけ物凄く綺麗。室内も落書きが無いし、何でだろう?」 彼女の足下にあるのは埃一つ無い床だ。確かに彼女が言うとおり、この部屋だけはやけに物が少なく、かなり綺麗な状態を保っているように見える。まるでこの建物に訪れた人達が、意図的にこの場所だけを避けているかのような、そんな印象がどうしても拭えない。「何か残ってる手がかりってあるのかなぁ?」 山田にはこの感覚が分からないのだろうか。彼女は変だねと言っただけで、特に何かを思う様子は無く、自由に部屋の中を調べ始めてしまった。「手がかりかぁ……」 手がかりとは、具体的に何を示すものなのだろう。ふと、そんな疑問が頭を過ぎる。「ねーえ、佐藤くーん」 特に目立った物が見当たらない室内で、何を見つければ達成感が得られるのか分からない中、山田の声が室内に響いた。「その動画でさぁ、変な事とか起こってなかったの?」「変な事?」「うん」 【変な事】。そう言われて思い出したのは、赤ん坊の泣き声だ。「そう言えば……赤ん坊」「え?」「赤ん坊の泣き声がしてた……と、思う……」 言葉にすると徐々に蘇る不愉快な音

  • PLAYER   2nd stage:13

    「佐藤くんってさぁ、結構心配性なんだね」 開きっぱなしになっている玄関から建物の中へと入ると、瓦礫を器用に避けながら山田が先を歩いて行く。「別に神経質ってわけじゃねぇけど、こういうときって、普通、警戒するもんじゃねーの?」 彼女に何かあったときに直ぐに対応出来るよう気を付けながら後に続いて歩き出す。建物内に篭もった埃と黴臭さ。慌てて口元を手で覆うが間に合わず、気が付いたら盛大に咳き込んでしまっていた。「大丈夫?」「ん。平気」 差し出されたハンカチを手に取り礼を言い、溢れ出た涙を軽く拭いながら思ったのは割とどうでも良いことだ。「何?」 急に足が止まったことを不思議に思ったのだろう。振り返った山田が不満げにこちらを見ながら首を傾げた。「ゴミが目に入ったみたいで直ぐに動けなかっただけだよ」 そう言って誤魔化しはしたが、本当はハンカチから香る匂いが思ったより心地よく、山田という女性を意識してしまったことに罪悪感を感じただけだったりするから気持ちは複雑である。「足下、気を付けた方が良いよ」 咄嗟の言い訳に納得したのだろうか。彼女はそれ以上の追求をする事はせず、中断していた探索を再開するべく足を動かし始める。「ゴミ、結構多いね」 山田の言葉通り、建物内は剥がれ落ちたコンクリートに混ざって、様々な種類のゴミが散乱していた。そもそも、壁に残された落書きを見ても、ここが好奇心を満たすためのスポットとして使われ居ることは直ぐに分かる。「肝試しとかに使うには丁度良いだろうから、まぁ、そんな感じなんじゃないか?」 未だ外が明るいため、気持ちに余裕があるのだろう。スマートフォンのライトで前を照らしながら進んで行く山田の声は明るく、この状況を楽しんでいることは明らかで。元々好奇心も強いのかもしれない。目に付く気になるものを片っ端良から調べては、得意げに感想を言う姿が可愛いと思ってしまう。「ねぇ、ねぇ、佐藤くーん!」 今度は何を見つけたのだろうか。こっちこっちと手招く彼女の元へと近寄り「何だ」と問いかければ、ここを見て欲しいと指をさされる。「これ、何だろう?」「うーん……」 そこにあったのは黒いスプレーで描かれた落書きだった。「ただの落書きだろ?」 同じような落書きは、そこかしこに見受けられる。だからその落書きだけが特別なものだとは思えない。そう伝

  • PLAYER   2nd stage:12

     よく見ると、確かに彼女たちの手は不自然な形で置かれている事に気が付いてしまう。「スマホ自体はさ、利き手で持ってるから見ただけじゃ変な事に気付かないんだけど、空いた方の手、ずっと、シートに投げ出されてる状態で動いてないの。一人だけならまぁ、分かるんだけど、四人とも同じ状態だから、流石にこれはあり得ないと思う」 あり得ない。そう言われると本当にそんな気がしてくるから不思議だ。 バスに乗り合わせた乗客は一見すると普通に見える。荷物を抱えた老女に、単語帳を捲る男子生徒。携帯ゲーム機に夢中の小学生と、若いカップルが一組。最後尾には女性高校生のグループが一組。後はバスを運転している運転手といった感じだ。彼等はそれぞれ意思を持って行動をしているかのように見えるが、よく見てみると、短い時間に設定された同じ行動を繰り返しているようにも見える。 例えば、小学生。音楽を聴く限りだと、少し前に流行った謎解きゲームを楽しんでいるようだが、ゲーム機から漏れた音は短期間で同じ台詞だけを繰り返してた。このゲーム自体は自分でも楽しんだ経験があるため、音楽の繋がり方が不自然だという事は分かる。本来途切れる場所では無いところで不自然に切れた音声。何度も繰り返す同じフレーズは明らかに変である。 若いカップルも同様で、スマートフォンの画面を見て笑っては、何度もキスを繰り返している。ぱっと見はただいちゃついているだけのように見えるが、よく見てみると、唇が重なった後に巻き戻しのような行動を行った後、先程と全く同じ動きを繰り返しているのだ。 老女の場合は正直判断が付かない。彼女は荷物を抱えて座っているだけで、特に目立った違和感がないためである。 それは単語帳を捲る男子学生も同じだ。それ以外の行動が無いため、本当なのか嘘なのかの判断は非常に難しかった。「こういうの見てるとさ、自分が思ってるリアルって本当に存在してるのかなって不安になるよね」 いつの間にか山田は窓の外に目を向けている。「自分では自分は本物だって思ってるけど、もしかしたらこの人達みたいに、同じ事を延々と繰り返しているだけなのかも知れない。でも、その事って自分では気付けないでしょ? 何か、凄く怖くなっちゃうよね」「…………」 いつの間にかバス停留所までは十数メートル。緩やかに速度を落とし停車したバスから降りると、他の乗客を乗せた

  • PLAYER   2nd stage:11

     素早く纏められていく荷物。いつの間にか教室から出た山田が、廊下で佐藤が来るのを待っている。「早くしないと置いていくからね!」 どうやら此方の都合というものは考えてくれないらしい。随分と中途半端でスッキリはしないが、諦めカバンを掴むと彼女の後を追い掛けるようにして教室を出た。「何かさ、こう言うのってちょっとワクワクしない?」 先を歩く山田の足取りは妙に軽いもので。ついさっき知り合ったばかりだというのに妙に近い距離感にはどうもまだ慣れない。「そうだな」 だからだろうか。無意識に曖昧な物言いで答えながら建物を出ると、太陽の位置は未だ高い場所に居座ったままで眩しかった。 校舎を出る前に行き先は確認しておいた。どうやら目的地である廃病院は、バスで移動しないと行けない距離らしい。そんなわけで現在はバスを待っている状態だ。時刻表を確認するとバスが来るまでもう暫く時間がかりそうなため、山田が持っていたレモン飴を食べながら、互いにスマートフォンを操作し情報を集めていく。「この町に廃病院って一個しかないみたいだから、多分ここで当たってると思うんだけど」 纏めサイトと地図アプリを交互に見ながら向かう先を定めていく。地図上に刺さるピンを中心に、画面を拡大して周辺に何か目立つ物は無いかと探しながら。「初めて行く場所だからわかんねぇよな」「そうなんだよね」 ってか、普通に土地勘無いもんね、私たち。これこそが、彼女が漏らす本音なのだろう。ただ、少なくとも彼女はこの環境に馴染んできているらしく、そう言って楽しそうに笑ってみせられてしまう。「そう言えば、アンタも転校生ってことになってんだっけか?」 遠くの方から見えてくるバスのシルエット。バス停まで銃数メートルと言うところで一度、信号に引っかかり止まってしまった。「うん」 信号が変わり動き出したバスだが、すぐに速度を落とし目の前で停車する。ドアが開くタイミングで聞こえてくるのは、空気の抜ける大きな音だ。「私も最近こっちに来たばっかりだから、まだ友達が居なくてさぁ」 先に乗車した山田の後を追い掛けて適当な場所に立つと、最後の乗客を乗せたバスが緩やかに動き出した。「設定があるって分かっちゃってからは、何となく……周りの人たちに声かけにくくって」 窓の外で景色が流れていく。「見た事はあるのに、全然この場所を知ら

  • PLAYER   2nd stage:10

    「それじゃあ、放課後に行ってみようぜ」 そう言って笑うと、山田が変な顔をしながら固まってしまった。「山田……さん?」「何言ってるの? 佐藤くん」 彼女は何に対して驚いているのだろう。理解ができないと彼女を見ると、スマートフォンに表示された数字を指さしながら彼女がこう言った。「もう、放課後だよ?」 言われて初めて気が付いた。今が既に下校時刻になってしまっていることを。「え?」 考えてみれば、一体いつ学校に来たのかが分からない。 一番最後に覚えている記憶はあの奇妙な動画を見たところで、そこから先はぶつ切りのように一切の記憶が飛んでしまっている。「な、なぁ、山田さん」 だからだろう。思わずこんなことを聞いてしまったのは。「俺、どれくらい寝てた?」「どれくらいって……ずっと……じゃない?」 そう言って、彼女も何かがおかしいと言う事に気が付いたようだ。「あれ? でも、佐藤くん。そう言えば、いつ学校に来たの?」 山田からしてみれば、気が付けば佐藤は自分の席で寝ていたという感覚しか無い。 始めは授業を聞いていない生徒がいるなという印象。そのうち、一人だけ制服が違うと言う事に気が付き、次第にいつ起きるんだろうという疑問へと繋がった。最終的には、もしかしてという疑惑が上がり声を掛けてしまった。 そう考えると、声を掛けるというところに至るまでどれだけの時間を費やしたことになるのだろうか。「少なくとも、何時間も寝っぱなしだった? もしかして」 更に不可解な事は、声を掛けるまでに【佐藤という人間が、一度も目を覚ましていない】という事だ。普通なら、これだけ堂々と寝ている場合、教師によってはその生徒を起こそうと動きを見せるだろう。優しく注意するかも知れないし、怒鳴りつけて教室から追い出すパターンもあるかも知れない。それなのに、こうやって放課後になるまで、佐藤は誰にも相手にされていなかった。ま

  • PLAYER   2nd stage:09

    「なぁ……ちょっと聞きたいことがあるんだけどさぁ」 もしかしたら、あの気持ち悪い映像をみたのが自分一人じゃ無いと安心したかったのかも知れない。「アンタ、病院に行く配信者の動画って見たことある?」「廃病院の動画?」「ああ」 記憶はまだ新しい。できるだけ見た映像を詳細に伝えると、山田は暫く考えてからゆっくりと首を振って見せた。「悪いけど、私はその動画見てないと思う」「……そうか」 そこで一度、途切れてしまった会話。元々親しい仲でも無いし、先程自己紹介をしたばかりなのだから、これ以上何を話したら良いのかが分からない。適当な理由を付けて返って貰おうかと考え始めたところで、山田が再び口を開く。「……動画自体は見てないんだけど……」 言いながらスマートフォンを操作し、彼女は何かを探し始める。「もしかしたら、これが関係あるかも」 差し出されたスマートフォンのディスプレイには、黒色で統一された悪趣味なデザインのサイトが表示されている。タイトルに「白藤高校の七不思議」と書かれているところから、どうやらこのサイトはそれらの噂話を集めた纏めサイトのようだ。「これ、昨日の夜に見た事無いメールアドレスから届いたものなんだけど、この中に廃病院の噂っていう項目があった気がする」 その言葉を確かめるべく、指を動かし画面をスクロールしていく。七不思議とされているはずなのに、纏めサイトに書き込まれている内容は思った以上に多く、目的のログを探すだけでも苦労をしてしまう。それでも根気よく探し続けていると、漸く見つけた一行に指が止まる。「これか?」 一度スマートフォンを山田に戻し確認してもらい、彼女が頷いたことでリンクをクリック。読み込み中のアニメーションが暫く表示された後、漸く開いたページに目を通すと、どいういう噂なのかという内容を確認することが出来た。「ってか、この病院、思ったよりも噂がいっぱいあるな」 言葉の通り、その廃病院で囁かれている噂話は幾つかあるようで、その殆どはよく耳にするような内容が多い様に見える。例えば、夜中に死んだはずの入院患者が徘徊しているだの、霊安室から呻き声が聞こえてくるだの。使われていない手術室で手術が行われているだの、診察室から奇怪な叫び声が聞こえてくるだの。どれもありそうで陳腐なものばかりだ。 中には、精神が壊れた浮浪者が住み着いており

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status