Tous les chapitres de : Chapitre 31 - Chapitre 40

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第31話 たった一つの音が、秘密を暴く鍵になるかもしれない

文化祭当日というものは、朝から空気の密度がおかしい。 普段と同じ校門。 普段と同じ校舎。 同じはずなのに、色と音だけが少し浮いている。 まだ一般来場者が本格的に入る前だというのに、廊下には段ボールを運ぶ音がして、教室の扉は半分開いたままになっていて、どのクラスも「今だけは特別です」という顔をしている。 装飾の紙が揺れ、テープの切れ端が床へ落ち、誰かの「それこっち!」が別の誰かの「もう時間!」に重なる。 久瀬湊人は、その騒がしさの中に立ちながら、すでに朝の時点で少しだけ疲れていた。 いや、身体が疲れているわけではない。 問題は神経の方だ。 今日のスケジュールは、かなり綱渡りだった。 学校側では、文化祭の準備と当日運営。 クラス展示の備品管理、導線確認、来場者の流れの調整。表立って仕切るわけではない。だが、放っておけばどこかが少しずつ崩れる場所に、自然と自分が入っていく構造になってしまっている。 一方で、夜ではなく、今日は昼にもAstraLink側の大事なオンライン企画がある。 完全な配信本番ではないが、事前の接続確認と短い顔合わせ、それから本編直前の最終打ち合わせ。しかも今日は大型企画ゆえに、自分が欠けるとややこしい。 どちらも欠けられない。 その事実だけで、朝から胃の奥が少しだけ重い。「久瀬、これ教室の後ろに回すやつ?」 日野の声で我に返る。「はい、それで大丈夫です」「りょーかい」 日野は段ボールを抱えたまま笑った。「朝から先生みたいだな」「やめてください」「でもわかる」 すばるが装飾の紐を結びながら言う。「今日の久瀬くん、完全に“静かな進行役”の顔してる」「顔でそこまで分かるものですか」「分かるよ」 真白が即答した。「今朝からずっと“何かあったら全部拾います”って
last updateDernière mise à jour : 2026-09-05
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第32話 正体はまだ知られない。でも、もう何も知らないままではいられない

非常階段の踊り場に落ちた沈黙は、妙に薄くて、でも逃げ場がなかった。 風が吹いている。 校庭のざわめきも、遠くから聞こえる笑い声も、文化祭らしい賑やかさも、全部ちゃんとそこにあるのに、この狭い踊り場だけが別の時間へ切り離されたみたいだった。 久瀬湊人は、三人の顔を順に見た。 鳴海すばる。 顔色が少し悪い。いつもの“推しに似てる!”と騒ぐ時の熱ではなく、もっと静かで、本気で信じたくないものに触れてしまった人の顔をしている。 倉科紬希。 声も出せないみたいに固まっている。彼女はもともと大きく感情を表へ出す方ではない。だからこそ、その沈黙が今どれだけ大きいかがわかる。 柊坂真白。 二人の反応を見てから、ようやくこちらへ鋭く視線を向けた顔。まだ断定はしていない。でも、“今のは何だったのか”をきちんと聞こうとする目だった。 何か言わなくてはならない。 それだけは分かる。「……今の」 先に口を開いたのは真白だった。「何」 短い。 けれど、その一語に必要なものが全部入っている。 今の声は何だったのか。 どうしてここで一人で通話していたのか。 なぜ、学校で聞く久瀬湊人の声とは少し違うものが、あんなふうに出たのか。 湊人は一度だけ喉を湿らせるように唾を飲んだ。 正面から答えることはできない。 でも、完全に黙るのももう無理だ。「……少し、外の連絡です」 ようやく出た言葉は、それだった。 自分でも、弱いと思う。 曖昧で、いつもの逃がし方に近い。 けれど今の自分に出せるのは、その程度だった。「外の連絡って」 すばるが言う。 声がかすかに掠れている。「何、その&hel
last updateDernière mise à jour : 2026-09-06
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第33話 知られてしまったあとでは、やさしささえ少し痛い

 月曜日の朝、久瀬湊人は目覚ましが鳴る前に目を開けた。 眠れなかったわけではない。 けれど、深く眠れた感じもなかった。 文化祭の日の非常階段。 たった数秒の通話。 振り返った先にいた、三人の顔。 鳴海すばるの、信じたくないものを聞いてしまった顔。 倉科紬希の、声も出せないほど揺れた顔。 柊坂真白の、“今のは何”を飲み込んで立ち止まった顔。 どれも、目を閉じるとまだ鮮明だった。 正体はまだ知られていない。 でも、もう何も知らないままではいられない。 その感覚だけが、朝の胸のあたりへ重く残っている。「……行くか」 小さく呟いて、布団を出る。 制服に袖を通し、鏡を見る。 顔色は悪くない。 少なくとも、教室へ入る前に「何かありました」と言っているような顔ではない――たぶん。 そう思いたいだけかもしれないが、今日の自分には、その“たぶん”に縋るしかなかった。     ◇ 教室の扉を開けると、思っていたよりいつも通りの朝の音があった。 椅子を引く音。 誰かが笑う声。 廊下から聞こえる別クラスのざわめき。 世界は、文化祭の翌日に秘密が少し揺れたからといって、都合よく止まってはくれないらしい。 日野は前の席でスマホを見ながら「あー、今日だる」といつも通りのことを言っている。 真白は席についていて、窓の外を見るふりをしながら、実際には周囲の空気をかなり拾っているのが分かる。 すばるはまだ来ていない。 紬希もまだだ。 そのことに、少しだけ安堵してしまう自分がいる。 同時に、その安堵が情けないとも思う。「おはよう」 真白が先に言った。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-07
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第34話 お嬢様は、秘密の正体より先に“覚悟の重さ”を見る

御門朱莉は、面白いものを見つけると、すぐに触りたくなる性格ではない。 むしろ逆だ。 近づけば壊れそうなものほど、少し離れた場所から輪郭を確かめたくなる。 言葉をかければ反応が返る。反応が返れば、隠している側は必ずどこかで形を崩す。だから、急いで触りに行くのは三流だと、朱莉はわりと本気で思っていた。 そして今、久瀬湊人という転校生に対しても、朱莉はその距離を測っていた。 文化祭の後から、空気が変わっている。 本人は何も言わない。 でも、鳴海すばるの妙に慎重な視線も、倉科紬希の静かな揺れも、柊坂真白の“怒っているというより、確認している”顔も、全部が少しずつ前とは違う。 何かあったのだ。 それも、おそらく“声”や“言葉”に関わる類の何か。 朱莉はそこまでは掴んでいた。 だが彼女にとって、本当に興味があるのはそこではない。 配信者かどうか。 学校の外にどんな顔があるか。 そういう表層も、たしかに面白い。 でももっと面白いのは、それを抱えてなお、何を守ろうとしているかだった。 秘密の中身より、秘密を持って立っている時の人間の方が、ずっと本性が出る。 だから朱莉は、昼休みの終わり頃、わざと遠回りをして二年三組の前を通った。     ◇ 教室の扉は半分開いていた。 昼休みの終わり際らしい、少し落ち着いたざわめきが中から聞こえる。 窓際の一角。 日野が前のめりに何か話し、すばるがそこへ噛みつくように乗り、真白が冷静に切る。紬希は少し遅れて笑っていて、その輪の端に久瀬湊人がいる。 見ていてわかる。 あの場所は、もうかなり固定された居場所だ。 少し前まで、彼は“そこにいても不思議じゃない転校生”くらい
last updateDernière mise à jour : 2026-09-08
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第35話 オタクは推しを疑いたくない、だからいちばん苦しむ

鳴海すばるは、推しに夢を見すぎるタイプではない。 少なくとも、自分ではそう思っている。 もちろん推しは好きだ。 かなり好きだ。 配信があれば可能な限り見るし、切り抜きも保存するし、声の調子や笑い方の違いまでわりと平気で覚えている。 でもそれは、盲目的に神格化しているというより、“ちゃんと見て好きになっている”感覚に近い。 だから天瀬アルトに対しても、 王子っぽい、 やさしい、 返しが綺麗、 声が落ち着く、 そういう良さを山ほど知っている一方で、 たぶん疲れる日もあるし、 たぶん無理してる日もあるし、 全部が全部、画面の向こうで完璧なわけじゃないとも思っていた。 思っていた、はずなのに。「……これ、いちばん嫌なやつでは?」 夜、自室のベッドに転がったまま、すばるはスマホを胸の上へ置いて天井を見上げた。 非常階段で聞いてしまった、あの数秒。 そのあと昼休みに交わされた、あの会話。 久瀬湊人が何も知らない顔ではいられないこと。 でも、決定的に認めることも否定することもできないこと。 全部ひっくるめて、今の自分の立ち位置が最悪すぎる。 もし完全に違うなら、こんなに苦しまなくていい。 「いやー、さすがに似てただけだわ!」で笑って終われる。 逆に、もしはっきり本人だと分かれば、それはそれで大混乱だけど、少なくとも答えは出る。 でも今は、そのどちらでもない。 たぶん近い。 でも、まだ言い切れない。 その中間で止まっている。 しかも、推しを知ってる耳が「聞いたものは聞いた」と主張し続けるから質が悪い。「やだなあ……」 思わず声に出る。 けれど、
last updateDernière mise à jour : 2026-09-09
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第36話 静かな子は、答えを急がないまま近づいてしまう

倉科紬希は、たぶん逃げるのがあまり上手くない。 はっきり言えば、苦手だ。 嫌なことから全力で目を逸らすとか、 見なかったことにするとか、 都合の悪い感情へ名前をつけずに通り過ぎるとか、 そういう器用なことができない。 だから、少しずつ気づいてしまったものを、少しずつ抱えたまま歩くことになる。 久瀬湊人のことも、そうだった。 気になる。 声を聞くと少し落ち着く。 話しかけられるとうれしい。 他の誰かと近い空気になっていると、ほんの少しだけ胸がざわつく。 そこまでは、もう認めている。 かなり認めている。 でも、そこへ天瀬アルトが重なる。 文化祭の日の非常階段で聞いてしまった、たった数秒の声。 あれ以来、紬希の中では“偶然にしては近すぎる”という感覚が消えなくなっていた。 それでも、答えを急ぎたくはない。 急いだ瞬間に、何かを壊してしまう気がするからだ。 だから今日も、紬希はいつも通り教室へ向かう。 答えを出さないまま、でも前より少しだけ緊張しながら。     ◇ 朝の教室には、文化祭の余韻がまだ少し残っていた。 机の配置は元に戻っている。 装飾も外されている。 それなのに、人の話し方だけがまだ少し浮ついている。クラス展示の出来とか、他クラスの出し物の話とか、写真がどうとか、打ち上げがどうとか。 日野は朝から写真フォルダを見返していて、すばるは「待ってこれ送って、今すぐ」と騒いでいる。 真白は「朝からうるさい」と言いながらも、完全には輪の外へ出ていない。 そして、久瀬もそこにいた。 紬希は教室へ入った瞬間、どうして
last updateDernière mise à jour : 2026-09-10
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第37話 ツンデレは、知らないふりより“待つ方”を選び始める

柊坂真白は、自分が待つのが得意な人間ではないと思っていた。 いや、正確には、待たされるのが嫌いだ。 連絡が遅いのも嫌い。 曖昧な返事も嫌い。 来るのか来ないのか分からない予定も嫌い。 そういう“相手の都合に気分を引っ張られる感じ”が、昔からあまり好きではなかった。 だから本来なら、久瀬湊人みたいなタイプは、いちばん苦手な部類のはずなのだ。 何か言えない予定がある。 時々急にいなくなる。 でも来たい気持ちだけはちゃんとある。 そういう、待つ側に少しだけ期待を残す人間。 面倒だ。 本当に面倒だと思う。 なのに最近の真白は、その面倒から完全に降りることができなくなっていた。 知らないふりをして、どうでもいい顔をして、勝手に向こうがいなくなるのを見送る。 たぶん前の自分なら、それができた。 でも今は違う。 文化祭の非常階段以降、久瀬の中に“学校の外の顔”があることを、もう完全には無視できない。 鳴海すばるや倉科紬希ほど直接的な音ではなくても、あの日の空気が、何かをはっきり変えてしまったのは分かる。 そして変わったあとで、自分が選び始めているのは“知らないふり”ではなく、“今は待つ”の方だった。「……ほんと、最悪」 朝の洗面台で髪を整えながら、真白は小さく呟いた。 待つなんて、性に合わない。 なのに、その選択をしている自分がいる。     ◇ 教室へ入ると、日野がもう来ていた。「おはよ」「おはよう」「今日も顔いいな」「朝一で雑なこと言わないで」 真白が返すと、日野は笑う。「褒めてんだけど」
last updateDernière mise à jour : 2026-09-11
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第38話 静かな子は、やさしくされた分だけ逃げ場をなくしていく

倉科紬希は、自分が“やさしさ”に弱い方だと、最近ようやく自覚し始めていた。  昔からそうだったのかもしれない。  ただ、今まではそこまで強く意識したことがなかっただけで。  派手な言葉に弱いわけではない。  分かりやすく褒められることにも、そこまで慣れていない。  むしろ急に強い好意を向けられると、一歩引いてしまう方だ。  でも、さりげないやさしさには弱い。  困っている時に、無理に踏み込まず気づいてくれる。  自分が言葉を探している間、急かさず待ってくれる。  少しだけ揺れている時に、そこを責めずに整えてくれる。  そういう、目立たないのにちゃんと残るやさしさ。  たぶん、自分はそういうものに弱い。  そして今、久瀬湊人はまさにその種類のやさしさを持っている。  だから困る。  かなり困る。  しかも、そのやさしさの方向が、夜の推し――天瀬アルトへ感じてきたものと少しだけ重なるから、なおさら逃げ場がない。 「……ほんとに、反則」  朝、駅から学校までの道を歩きながら、紬希は小さく呟いた。  答えを出したいわけじゃない。  急いで知りたいわけでもない。  でも、近づくたびに“知らないままではいられない”気持ちも増えていく。  そのくせ、やさしくされるたびに、無理に引く理由も薄くなっていく。  たぶん今の自分は、かなり危ういところにいる。      ◇  教室に入ると、窓際の空気は今日もそれなりにいつも通りだった。  日野が前の席でだらっとしていて、  すばるが「昨日の連絡あった?」と何かしらを気にしていて、  真白がその横で「朝からうるさい」と切っていて、  そして久瀬がもう来ている。  その光景を見ただけで、紬希は少しだけ気持ちが落ち着く。  そのこと自体が、もうかなり危ないのだと自分でもわかる。 「おはよう」
last updateDernière mise à jour : 2026-09-12
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第39話 校門の外にある名前は、教室の中では呼ばれたくない

久瀬湊人は、その日一日ずっと落ち着かなかった。 教室にいる。 授業を受ける。 昼休みに窓際で話す。 文化祭後の細かい片づけの相談にも、必要な分だけ口を出す。 やっていることは、ここ最近と大きく変わらない。 むしろ表面だけ見れば、少しずついつもの日常へ戻ってきているようにすら見えた。 すばるはまだ少し慎重だが、無理に重くしない方を選んでいる。 紬希は静かなまま、前より少しだけ視線の熱が増した。 真白は“知らないふり”ではなく、“待つ方”を選び始めている。 日野だけは相変わらず日野で、それがありがたい。 全部、ありがたい。 ありがたいのに、今日に限って胸の奥が妙にざわつくのは、理由がはっきりしていた。 朝から何度も思い出してしまうのだ。 校門の外に停まっていた、あの黒い車を。 家側管理室からの短い通知。 本日、確認済み。後日詳細を伝える。 それが何を意味しているのか、まだ正式な説明はない。 でも、わかる。 向こうは、もう自分の学校生活を“遠くから把握するだけ”では済ませない段階へ入りかけている。 それが嫌だった。 配信のことを知られるのも困る。 でも家側のことが教室へ近づいてくるのは、また別の怖さがある。 学校での久瀬湊人は、できるだけ何者でもない方がいい。 少なくとも、あの窓際の空気の中では。 だからこそ、今朝からの嫌な予感が、ずっと喉の奥に引っかかっていた。     ◇ 昼休みの終わり頃、真白がふいに言った。「今日、また顔が硬い」 湊人は思わず顔を上げる。「そうでしょうか」「うん」 真白はあっさり頷いた。「文化祭のあとみたいな硬さじゃな
last updateDernière mise à jour : 2026-09-13
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第40話 静かな居場所を守りたい人ほど、嘘のつき方が下手になる

 土曜の予定が重なると分かった夜から、久瀬湊人はずっと、自分の中に薄い棘が刺さったまま生活している気分だった。 抜けない。 でも、深く刺さって出血しているわけでもない。 ただ、動くたびに少し痛い。 家側からの正式通知。 土曜午後、出席必須。 その短い文面だけで、クラスの打ち上げ候補日の一つがかなり危うくなった。 まだ最終決定ではない。 でも、あの窓際のメンバーが「じゃあ土曜にしよう」と言った瞬間、自分はまた“来たいのに来られない人”になる。 そして今の自分には、それが前よりずっと重い。 前なら、仕方ないで済ませられた。 学校の外にある事情を優先し、学校側の約束は曖昧なまま流しても、自分の胸はそこまで痛まなかった。 でも今は違う。 日野の気楽な誘いも、 すばるのわかりやすい期待も、 真白の“待つ方を選ぶ”言い方も、 紬希の静かなやさしさも、 全部がちゃんと胸へ残る。 残るから、嘘をつくのが前よりずっと難しい。「……最悪だな」 朝、制服のボタンを留めながら、湊人は小さく呟いた。 静かな居場所を守りたい。 その気持ちが強くなるほど、曖昧な言い方も、上手い逃がし方も、前ほど便利ではなくなっていく。 たぶん、自分はもう少し前のように器用には隠せない。     ◇ 教室へ入ると、窓際の空気はすでにでき始めていた。 日野が前の席から何か喋っていて、 すばるがそれに大げさに反応していて、 真白が「朝からうるさい」と刺していて、 紬希はその少し外側で小さく笑っている。 そこへ自分が入っていく。 それが、最近ではかなり自然になってしまった。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-14
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