打ち上げの翌朝、教室の空気は少しだけ不思議だった。 文化祭という大きな山を越え、 その打ち上げという“ちゃんと終わった感”まで一応は済ませて、 普通なら今日は、もっとすっきりしていていいはずだった。 実際、クラス全体で見ればそんな感じではある。 少し眠そうで、少しだるそうで、でもどこか満足げ。 昨日の写真を見せ合う声。 誰が食べすぎたとか、誰が最後までうるさかったとか、そういう軽い笑い。 けれど窓際の一角だけは、そこにもう一枚薄い感情の膜がかかっていた。 理由はたぶん、昨夜の短いメッセージだ。 『行けず、すみませんでした。本当に残念でした』 たったそれだけ。 でも、その短さが妙に残る。 来なかった。 その事実はもうどうしようもない。 なのに、来なかったことそのものより、そのあとで届いた短い言葉の方が、みんなの胸に少し深く刺さっていた。 ◇ 鳴海すばるは、自分が昨夜あのメッセージを三回は読み返したことを、誰にも言うつもりはなかった。 一回目は、普通に読む。 二回目は、“本当に残念でした”のところで止まる。 三回目は、その文の順番が嫌に久瀬っぽいと思ってしまって、そこでまた少しだけ胸がざわつく。 来たくなかったんじゃない。 言い訳したいんでもない。 まず事実を置いて、謝って、そのあとに本音が来る。 しかもその本音が、“行きたかったです”ではなく“残念でした”なのが、余計に重い。 自分の感情を相手に押しつけすぎない言い方だ。 でも、十分に本音だともわかる。「……そういうとこなんだよなあ」 朝、自席に座ってスマホの画面を見ながら、すばるは小さく
Dernière mise à jour : 2026-09-25 Read More