放送室の扉が閉まった音は、校舎の奥で長く反響した。 そのあとに残ったのは、切れたインターホンから流れる砂嵐のような雑音だけだった。「透!」 澪は受話口へ呼びかけた。 返事はない。「聞こえる? 返事して。透!」 雑音の奥で、何かがゆっくりと回転しているような音がした。硬い円盤が一定の速さで擦れ、古い機械の軸が軋んでいる。 朔はインターホンの下へしゃがみ込み、壁から垂れた配線へ懐中電灯を当てた。「線は切れてる」「でも、さっきまで話せた」「この機械を通していたとは限らない」 朔は受話器を澪の手から取り、裏側の蓋を外した。内部には錆びた端子しかなく、電流が通っている様子はない。 それでも、受話口からは透の荒い息が微かに聞こえていた。『……着いた』 澪は朔から受話器を奪うように受け取った。「透? 放送室にいるの?」『いる』 声は遠く、ところどころ歪んでいた。 水の中から話しているように、言葉の輪郭が揺れる。『機材が残ってる。放送卓も、アンプも……全部』「扉を開けて。そこから離れて」『オープンリールがある』 透は澪の声を聞いていない。 何かに取り憑かれたように、見えているものを一つずつ口にしている。『学校に置くような大きさじゃない。業務用だ。リールが二つ。テープが掛かってる』 澪は鉄の防火シャッターへ掌をつけた。 冷たい金属の向こうから、美月と悠斗が何かを動かす音が聞こえる。「透、触らないで。朔が調べるまで待って」『ラベルがある』「何て書いてあるの?」 透の呼吸が止まった。 受話口の向こうで、紙を指で撫でる小さな音がした。『七人目』 廊下の空気が冷えた。 奈々香が濡れたレインコートの袖を握り、澪の横で首を振る。「再生しちゃ駄目」 透へ届くはずのない小声だった。 それでも、受話口の向こうで誰かが短く笑った。 透ではない。 少女の喉から漏れたような、細い音だった。「触るな」 朔が受話器へ向かって言った。 声を張り上げてはいないが、鋭かった。「透、そのテープから手を離せ。放送室の扉を開けて、廊下へ戻れ」『音の出所が分かる』「仕掛けた人間は、お前がそう考えることも分かってる」『これは、俺の音だ』「何?」『識別信号が入ってる』 透の声が震えた。『俺が記録した。八年前、ここで』 澪は額
آخر تحديث : 2026-08-04 اقرأ المزيد