古いテレビの画面に浮かんだ〈08:13〉は、誰も触れていないのにゆっくり薄れ、最後には砂嵐へ溶けた。 隠し部屋には再び機械の低い唸りと、壁の向こうを通る生活排水の音だけが残る。 澪は制服姿の澄花が写った写真を持ったまま、壁一面に貼られた女たちの写真から目を離せなかった。 十三年前に消えた女、十二年前に逃げた杏奈、そして八年前、七刻女学校から生きて逃げたはずの澄花まで、この部屋にいた誰かは同じ方法で見ていた。「ほかにも残ってるはずだ」 蓮司が低く言った。 妹の写真を見つけてから、声の奥に押し込めていたものが明らかに変わっていた。 冷静さは崩していない。 それでも机の引き出しを開ける指には力が入り、古い木が小さく軋んだ。 朔が床へ散らばった資料へ触れないよう注意しながら、棚の下段を照らす。 ビデオテープの箱のさらに奥に、黄ばんだ大学ノートが何冊も押し込まれていた。 背表紙には年だけが書かれ、一番古いものは十六年前、一番新しいものは数年前で途切れている。 蓮司は八年前の日付が含まれる一冊を選び、手袋をつけて机へ置いた。 中身は宿泊記録に近かった。 ただし、常世荘の正式な契約書でも管理会社の台帳でもない。 日付、人数、簡単な特徴、部屋番号、予定日数だけが手書きで並んでいる。 〈工事業者 一名 二〇一 一泊〉、〈親族 二名 二〇二 二泊〉といった雑な記録が続き、誰が何のために残したのかも分からない。「管理人の私的な記録かもしれない」 悠斗が紙の癖を見る。「昔は空室を短期で貸したり、工事業者を泊めたりする管理人もいた。正式な契約を通さずに」「会社として認められてた?」「今なら問題になる。でも、十年以上前の個人所有物件なら、現場で勝手にやってた可能性はある」 蓮司が頁をめくる。 八年前。 澄花が七刻女学校から姿を消した翌日。 その日付の欄で、指が止まった。 女子高生 一名 怪我あり 二〇三使用 三泊予定 名前はない。 学校名もない。 けれど、六人の呼吸が同時に止まった。「これ……」 奈々香が写真の澄花を見る。「澄花だよね」「断定はできない」 美月はそう言いながらも、記録から目を離さなかった。「でも条件は一致する。高校生。怪我をしてる。事件翌日。そして二〇三号室」 澪の胸が強く締めつけられた。 三泊
آخر تحديث : 2026-08-27 اقرأ المزيد