午前零時へ変わる直前、澪のスマートフォンと受話器のない公衆電話はほとんど同時に鳴り始めた。 相馬透と表示された画面を握ったまま、澪は電話ボックスの中にある黒い電話機を見つめる。 最初の三回は出ず、四回目だけ必ず出ろという澄花の指示が、どちらの電話を意味していたのかまでは書かれていなかった。 けれど常世荘の祭壇から現れた黒い受話器が、この電話機から十三年前に失われたものだと分かっている以上、答えは目の前にあるように思えた。「戻すのか」 蓮司が証拠袋を持ったまま訊いた。 澪が頷くと、朔は公衆電話の内部へ新たな電流が流れていないか確認し、美月は橋の周囲へ目を配る。 山林に隠された装置からベルを鳴らせる仕掛けは見つけたが、受話器を接続したとき何が起きるかまでは分からない。 それでも四回目の着信が終われば、相手が次の機会を与える保証はなかった。 蓮司は手袋をつけ、黒い受話器を袋から取り出した。 十三年前に引きちぎられたコードの断面と、電話機から垂れ下がる接続部は不自然なほどぴたりと合った。 完全に断線しているため本来なら通話回路は成立しないはずだが、二つを近づけた瞬間、電話機のベルが止まり、代わりに受話器の内部から小さな電子音が一度だけ鳴った。「つながってない」 朔が接続部を見た。「物理的には切れたままだ」「それでも出る」 澪は受話器を取った。 耳へ押し当てると、最初はざらついた雑音しか聞こえない。 次に、風が細い隙間を通り抜ける音と、水の流れる低い響きが重なった。「もしもし」 返事はない。「透?」 橋の下を流れる川の音と、受話器の奥から聞こえる水音が奇妙に重なった。 ほんのわずかに時間がずれており、同じ場所の音を別の位置から聞いているようでもある。 澪は耳を澄ませた。『澪』 心臓が強く脈打った。 相馬透の声。 七刻女学校の放送室で最後に聞いたものと同じ、少し低く、息を深く吸わずに話す癖のある声だった。 常世荘へかかってきた電話よりも近く、録音を再生しているような平坦さはない。「透なの?」『そう』「本当に?」『そうだよ』 答える間が自然だった。 澪が問い終えるより先に用意されていた音声を流しているのではなく、こちらの言葉を聞いてから返しているように思える。 朔は澪の横から受話器へ向けて録音機を近づけ、
آخر تحديث : 2026-09-06 اقرأ المزيد