เข้าสู่ระบบ八年前。 高校の心霊研究会に所属していた雨宮澪たちは、動画撮影のため、取り壊し直前の〈七刻女学校〉へ不法侵入した。 その夜、部員の椎名澄花が姿を消した。 校舎からは大量の血痕が発見されたものの、遺体は見つからなかった。 残された六人は事件について口を閉ざし、それぞれ別の人生を送っていた。 ところが八年後の午前零時。 死亡扱いとなっている澄花の電話番号から、六人全員へ同じチェーンメールが届く。
ดูเพิ่มเติม年齢:二十四歳
職業:怪談・事故物件を扱うウェブライター立場:主人公/元・七刻高校心霊研究会部員肩へ触れる程度の黒髪を、普段は無造作に下ろしている。前髪はやや長く、考え込むと指先で触れる癖がある。
色白で、整った顔立ちをしているものの、慢性的な不眠のため目の下には薄い隈が残っている。華やかさよりも静かな印象が強く、人混みの中では目立たないが、一度視線を向けると忘れにくい顔をしている。
服装は灰色や紺、黒など落ち着いた色のシャツやパーカーが中心。取材用のスマートフォン、録音機、手帳を常に持ち歩いている。
慎重で警戒心が強く、物事を感情だけで判断しない。怪談を仕事にしていながら、霊の存在を無条件には信じず、まず記録や証言を確認しようとする。
一方で、見捨てられた人間や、誰にも信じてもらえない被害者へ強く感情移入する。自分が傷つくことには無頓着だが、他人が苦しむ場面では危険を承知で動いてしまう。
八年前の事件について曖昧な記憶があり、仲間たちの証言と自分の記憶が食い違うたび、強い不安に襲われる。
臆病であることを隠そうとはしない。しかし恐怖を感じながらも、真実から目をそらさない芯の強さを持つ。
八年前、七刻高校心霊研究会の仲間たちと廃校へ入り、椎名澄花の失踪事件に巻き込まれた。
事件後は故郷を離れ、怪談記事を書くウェブライターとなった。皮肉にも、最も忘れたい夜を思わせる仕事を続けている。
死亡したはずの澄花の番号からチェーンメールが届いたことで、八年ぶりに仲間たちと再会する。
年齢:二十五歳
職業:映像制作会社勤務/編集・撮影担当立場:澪の幼馴染/元・心霊研究会撮影担当身長は百八十センチ前後。細身だが、撮影機材を運ぶ仕事をしているため肩や腕には適度に筋肉がついている。
黒に近い焦げ茶色の髪を短く整え、前髪を自然に流している。涼しげな目元と穏やかな口元を持ち、初対面の相手にも警戒心を抱かせにくい。
普段は黒いシャツやジャケットを好み、腕時計と小型カメラを身につけている。暗闇でも冷静に機材を扱う姿には、場慣れした落ち着きがある。
温厚で理性的。感情的になった仲間をなだめ、混乱した状況でも次に何をするべきかを判断できる。
面倒見がよく、特に幼馴染である澪の変化には敏感。澪が無理をしていると、本人より先に気づくことが多い。
幽霊や呪いに対しては否定的で、映像、音響、照明、心理誘導など、人間による仕掛けの可能性を優先する。
ただし、冷静すぎるために何を考えているのか分からないことがあり、自分の過去や感情をほとんど語ろうとしない。
高校時代から澪のそばにいた幼馴染。
心霊研究会では撮影と映像編集を担当し、八年前の廃校探索でもカメラを回していた。
現在は映像制作会社でドキュメンタリーや配信番組の編集に携わっている。
仲間の中で最も機材に詳しく、怪異が人為的なものかを検証する役目を担う。危険な場所では常に先頭へ立ち、澪を守ろうとする。
失踪当時:十七歳
立場:八年前に失踪した心霊研究会部員艶のある長い黒髪と、透き通るような白い肌を持つ少女。
大きな黒い瞳が印象的で、無表情でいると人形のように見えるが、笑うと年齢相応の幼さが現れる。
高校時代は制服をきちんと着ており、赤い髪紐を手首へ巻いていた。古い物を集める趣味があり、小さな巾着袋や傷のついた人形を持ち歩くことがあった。
現在、映像や鏡の中に現れる彼女は、失踪当夜の制服姿をしている。
好奇心旺盛で行動力がある一方、周囲の空気を読むことが苦手。気になるものを見つけると、危険を忘れて調べずにはいられない。
怪談や呪物に詳しいが、噂をそのまま信じるのではなく、怪談が生まれた背景や、忘れられた死者の記録に興味を持っていた。
思ったことを率直に口にするため、仲間と衝突することも多かった。しかし弱い者を笑いものにする行為を嫌い、誰かが傷つけられていると一人でも反論する。
八年前、七刻女学校跡で行われた心霊撮影の最中に姿を消した少女。
校舎には大量の血痕が残されていたが、遺体は発見されていない。
死亡扱いとなった現在も、彼女のスマートフォンは見つかっていない。
八年後、かつての仲間たちへ届いたチェーンメールは、澄花が失踪時に所持していた電話番号から送信されていた。
年齢:二十五歳
職業:救命救急センター勤務の看護師立場:元・心霊研究会副部長背筋の伸びた長身の女性。黒髪を低い位置で一つに結び、化粧は必要最低限に抑えている。
切れ長の目と薄い唇を持ち、黙っていると近寄りがたい印象を与える。私服も機能性を重視し、動きやすいパンツやスニーカーを選ぶことが多い。
高校時代からほとんど外見が変わっておらず、緊張すると右耳の銀色のピアスへ触れる癖がある。
現実的で責任感が強く、混乱した場面でも負傷者の確認を最優先する。
迷信や感情論を嫌い、怪異を病気、錯覚、集団心理として説明しようとする。しかし自分の理解を超えた現象を目の前にすると、否定することへ執着しすぎる傾向がある。
他人へ厳しいが、自分にはさらに厳しい。八年前に仲間を守れなかったという思いを抱えており、再び犠牲者を出すことを何より恐れている。
高校時代の心霊研究会で副部長を務めていた。
当時から冷静で、危険な探索へ反対することが多かったが、最終的には仲間を止めきれず廃校へ同行した。
現在は看護師として働き、怪異によるものとされる死についても、必ず医学的な原因を探そうとする。
年齢:二十五歳
職業:不動産管理会社勤務立場:元・心霊研究会部長身長は百七十六センチほど。髪は明るい茶色に染め、仕事では細身のスーツを着ている。
学生時代は人目を引く快活な少年だったが、現在は頬が痩せ、目元に疲労がにじんでいる。
表情は豊かで愛想もよいものの、追い詰められると爪を噛み、早口になる。
社交的で話術に長け、初対面の相手ともすぐ打ち解ける。高校時代は好奇心と勢いで部員を引っ張り、数多くの心霊スポットへ仲間を連れ出した。
一方で、責任を負う場面では言い訳が先に出る弱さがある。自分が悪者になることを極端に恐れ、都合の悪い事実を曖昧にしようとする。
普段は明るく振る舞っているが、八年前の話題になると態度が変わり、澄花の名を口にすることさえ避けようとする。
かつて心霊研究会の部長として、七刻女学校跡への探索を企画した人物。
現在は事故物件を含む賃貸物件の管理を担当しており、建物の構造、鍵、契約履歴、過去の入居者情報に詳しい。
最初のチェーンメールを悪質な嫌がらせだと主張し、警察へ相談することを提案する。
年齢:二十四歳
職業:美容系動画配信者立場:元・心霊研究会部員ゆるく巻いた栗色の髪と、華やかな化粧が特徴。大きな瞳と愛らしい顔立ちを持ち、画面越しでは常に自信に満ちて見える。
服装にも強いこだわりがあり、心霊スポットへ向かう際にも高価なコートやアクセサリーを身につけている。
左の鎖骨付近に、小さな椿の刺青がある。恐怖を感じると笑ってしまう癖があり、その笑顔がかえって不自然に見えることがある。
明るく人懐こいが、他人からどう見られているかを常に気にしている。
注目されることを好み、高校時代は心霊研究会の活動を面白おかしく周囲へ話していた。一方、孤立することへの恐怖が強く、多数派へ合わせるためなら自分の意見を曲げることもある。
繊細で感情の振れ幅が大きく、強気な態度の裏に深い罪悪感を抱えている。
現在は多くの登録者を持つ動画配信者。
八年前の事件後、心霊関係の話題を避けてきたが、チェーンメールが届いた直後から、配信中の画面へ制服姿の少女が映り込むようになる。
事件を公表すれば注目を集められると考える一方、自分の過去が知られることを強く恐れている。
年齢:二十五歳
職業:フリーの音響技師立場:元・心霊研究会部員痩せ型で、黒い癖毛が耳にかかっている。肌は青白く、眠そうに見える細い目をしている。
首には大型のヘッドフォンをかけ、複数の録音機やマイクを入れた鞄を持ち歩く。
物静かな印象だが、音に集中しているときだけ目つきが鋭く変わる。右手の人差し指に、古い火傷の痕がある。
寡黙で観察力が高い。他人の会話へ割って入ることは少ないが、誰が何を言ったかを正確に覚えている。
映像よりも音を信用し、声の高さ、呼吸、足音、反響の違いから、録音された場所や人物を特定する技術を持つ。
集団行動を好まず、仲間に対しても一定の距離を置いている。秘密主義に見えるが、実際には言葉にすることが苦手で、誤解を解かないまま黙り込んでしまうことが多い。
高校時代は録音機材を担当し、廃校内で聞こえた音を記録していた。
事件後、仲間たちとの連絡をすべて断ち、音響技師として各地を転々としている。
チェーンメールに添付された音声を解析し、その中に八年前の廃校でしか録音されていないはずの音が混ざっていることを発見する。
年齢:二十四歳
職業:区役所職員立場:元・心霊研究会部員小柄で、肩より長い黒髪を一つに束ねている。丸い眼鏡をかけ、色の薄いカーディガンや膝丈のスカートを好む。
学生時代から大人しく目立たない存在だったが、近くで見ると端正な顔立ちをしている。
人と目を合わせることが苦手で、緊張すると鞄の持ち手を両手で強く握る。
真面目で規則を重んじる。書類や数字の間違いによく気づき、記録を整理する能力に優れている。
争いを避けるため、自分の考えを飲み込むことが多い。しかし一度決めたことを曲げない頑固さも持つ。
高校時代は仲間の後ろについていくことが多く、誰かへ反対意見を言うことができなかった。そのことを現在も後悔している。
七刻女学校跡へ入った六人の一人。
現在は区役所で戸籍や住民記録に関わる仕事をしている。
チェーンメールに記された七つの場所を調べる中で、すでに取り壊されたはずの建物や、存在しない住所が公的記録へ残されていることに気づく。
年齢:二十九歳
職業:建物調査会社代表/不動産鑑定士立場:澄花の異母兄百八十三センチほどの長身。黒髪を短く整え、彫りの深い端正な顔立ちをしている。
鋭い目と無駄のない動作から冷たい印象を与えるが、服装は飾り気のないシャツや作業用ジャケットが中心。
左手首には古い腕時計をつけている。それは、失踪前の澄花から贈られたもの。
無口で疑り深く、他人の証言を簡単には信用しない。
感情を表へ出さないが、妹の失踪事件について独自に調査を続けており、真相を知るためなら危険な場所へも踏み込む。
幽霊の存在には懐疑的で、建物の構造、土地の履歴、所有者のつながりから事件を追う。
澪を含む元部員全員が何かを隠していると考えており、当初は彼らを守るよりも監視する立場を取る。
澄花と父親を同じくする異母兄。
家庭の事情により澄花とは離れて育ったが、妹が失踪する直前まで密かに連絡を取り合っていた。
警察が捜査を終えた後も事件を諦めず、七刻女学校跡と複数の事故物件に同じ所有者が関係していたことを突き止める。
澪とは対立しながらも、七つの呪地を調査する協力関係を築いていく。
「六人じゃないよ。ここには七人いる」 澄花の声が消えるより先に、二年七組の扉が勢いよく閉まった。 ばあん、と重い音が廊下を震わせる。 澪の肩に触れていた冷たい指の感触も、同時に消えた。 布越しに残った冷気だけが、肩から首へ這い上がっている。 振り返る。 誰もいない。 非常灯の薄い緑色を受けた廊下。剥がれた壁紙。雨漏りの染み。朽ちた窓枠。 人が立てるほどの空間はある。 だが、そこにいるのは五人だけだった。 自分。 朔。 美月。 悠斗。 奈々香。 その足元では、簡易担架に横たわる透が身じろぎ一つせず眠っている。 五人と、死者一人。 合わせて六人。 澪は震える指でスマートフォンを持ち上げた。 校舎の見取り図には、赤い点が七つ表示されたままだった。 雨宮澪。 神代朔。 早乙女美月。 黒瀬悠斗。 白石奈々香。 相馬透。 そして、名前のない点。 七つ目だけが、澪の位置を示す点へ重なるほど近い。「動かないで」 美月が言った。「どうして」「いいから。一度、そのまま」 澪は足を止める。 美月が画面を覗き、赤い点の位置を確かめた。「じゃあ、右へ一歩」 言われるまま、澪は廊下の壁側へ移動する。 自分の点が動いた。 名前のない赤い点も、ほとんど同じ速度で動く。 澪の点のすぐ後ろへ。 奈々香が息を呑んだ。「もう一回」 今度は前へ二歩。 二つの点が同時に進んだ。 澪が止まる。 七つ目も止まる。「嫌……」 奈々香の顔が引きつった。「これ、澪を追ってるんじゃないよ」 唇が小刻みに震える。「澪の中にいるんじゃないの?」 その言葉が落ちた瞬間、悠斗が半歩退いた。 美月も反射的に澪の肩を見た。 奈々香ははっきりと距離を取った。 たった数十センチ。 それでも、澪には教室一つ分ほど遠く感じた。「やめて」 美月が奈々香を制する。「でも、ずっと同じ位置だよ。肩にも触られたんでしょ? それで点が澪についてくるなら――」「位置情報は偽装できる」 朔が澪の隣へ立った。 ほかの三人が空けた距離を埋めるように。 澪は横顔を見る。 朔はスマートフォンを取り出し、通信状態を確認していた。声にも手元にも、怯えはほとんど見えない。「衛星測位じゃない」「どういうこと?」 澪が訊く。「この建物の中で、
黒板に残された小さな赤い手形は、五人が放送室へ戻ったあとも消えなかった。 向かいの教室から扉越しに見える。白い粉の浮いた黒板の中央で、指の短い手形だけが濡れたように光っていた。 誰の名も書かれていない空白の横。 そこへ押された手。 六人の誰よりも小さい。 透のものではない。澪たちが高校生だった頃の手よりも、さらに幼く見えた。 美月はしばらくその手形を見ていたが、やがて放送室の床に横たわる透へ向き直った。「運ぶ」 声は静かだった。 悠斗が眉を寄せる。「正気か。階段を三階分だぞ。床も腐ってる」「ここへ置いていけない」「俺たちまで動けなくなる」「だからって、一人にするの?」「死んでるんだぞ」 言葉が落ちた瞬間、美月の目が鋭くなった。「分かってる」 低い声だった。「私が確認した。呼吸も脈もなかった。分かってるから、置いていけないの」 悠斗は口を閉じた。 奈々香は壁際で鼻をすすり、割れたスマートフォンを握っている。泣き腫らした目は、透の身体を正面から見られず、床へ散った黒い磁気テープを追っていた。「外へ出られるのかな」 彼女が呟く。「また同じ廊下へ戻ったら……ずっとここで、透と一緒に」「戻っても進む」 朔は放送室の隅に積まれた備品を調べていた。 折り畳み式の担架はなかったが、古いカーテン用の丈夫な布と、掃除用具入れから外した二本の金属棒が見つかった。朔と悠斗が棒へ布を巻きつけ、美月が結び目の強度を確かめる。 急ごしらえの担架は頼りなく見えた。 朔は布の端を二重に折り、金属棒へ巻きつけた。悠斗が反対側を押さえ、美月が救急鞄から包帯を取り出して固定する。結び目を一つ作るたび、誰かの指が震えた。 高校時代、透は機材の線を束ねる役だった。絡まったコードを黙ってほどき、誰が雑に片づけたか分かっていても責めなかった。遠足のように騒ぐ六人の後ろで、録音機だけを守って歩いていた。 その透の身体を運ぶために、今はほかの五人が不格好な結び目を作っている。 澪は包帯の端を引きながら、透なら一度見ただけでやり直させただろうと思った。緩い。重心が偏っている。歩けば軋みが音へ入る。掠れた声で、そんなことを言ったかもしれない。 思い浮かべた声は、すぐに首を絞められたときの呼吸へ変わった。 それでも透を床へ残すよりはよかった。 美月が上
録音表示灯の赤だけが、放送室の暗闇で脈打っていた。 窓は閉じ、扉も内側から施錠されている。逃げ場のない空間で、古いスピーカーは六人分の呼吸を繰り返していた。 澪。 朔。 美月。 悠斗。 奈々香。 そして、上着を掛けられた透。 死んだはずの透の息だけが、ほかの五人より少し遅れて聞こえる。 ひゅう。 ひゅう。 誰かが死者の喉へ空気を送り込んでいるようだった。「止めろ」 悠斗が録音機へ近づいた。 朔が腕を伸ばして遮る。「触るな。どこまで記録されているか分からない」「まだ記録が必要だって言うのか」 悠斗の声は掠れていた。怒りより、恐怖を押し戻すための強さがあった。「透が死んだ。次は澪だと名指しされた。それでも、機械を眺めて待つつもりか」「壊せば出られるとは限らない」「なら、どうする」 悠斗は朔ではなく、澪を見た。 視線がまっすぐ胸へ刺さる。「澪。お前、何を隠してる」 赤い光が一度明滅した。 澪はポケットの中で組紐を握った。湿った絹糸が掌へ貼りつき、細い繊維が古い傷を撫でる。「さっき、思い出したことは話した」「全部か?」「全部って……」「八年前、澄花とは途中ではぐれた。警察にはそう話したはずだ」 悠斗は一歩近づいた。「だが実際には、理科準備室の扉越しに声を聞いてた。助けを求められてた。違うか」 澪は唇を開いたが、声が出なかった。 美月が二人のあいだへ入ろうとする。「今、追い詰めても――」「追い詰められてるのは全員だ」 悠斗が遮った。「一人ずつ殺されるかもしれない。澪が何か知ってるなら、黙っていられる方が危険だ」「澪が透を殺したって言いたいの?」「そうは言ってない」「言ってるのと同じよ」「お前も隠してるだろ」 悠斗の目が美月へ向く。「澄花が負傷していたことを知っていたか。お前の質問だった。答えを言わないのは、知られたくないからじゃないのか」 美月の頬が強張る。 救急鞄の持ち手を握る指へ力が入った。「今は澪の話だ」「都合がいいな」 悠斗の乾いた笑いが、密室へ落ちた。 壁際にいた奈々香が、割れたスマートフォンを胸へ押しつけたまま俯いている。呼吸は浅く、肩が小刻みに揺れていた。「奈々香」 悠斗が呼ぶ。 彼女は顔を上げなかった。「知ってることがあるなら話せ」「ない」「本当に
放送室の床には、透のための場所だけが残されていた。 美月が掛けた上着の下で、細い身体は動かない。黒いパーカーの襟元から覗く首には、磁気テープの圧迫痕が幾重にも走っている。切断されたテープの端は、乾いた蛇の抜け殻のように床へ散らばっていた。 窓を打つ雨音は、厚い遮光幕に吸われて遠い。 誰も口を開かないあいだも、録音機の二つのリールだけが、停止した姿で五人を見つめていた。「ここを出る」 悠斗が最初に沈黙を破った。 工具箱を持ち上げる手には、錆と透の血が薄く付いている。声は強かったが、扉の向こうへ視線を向けるたび、喉が不自然に上下した。「今すぐ出口を探す。門が駄目なら裏口でも窓でもいい。この校舎のどこかに、外へ出られる場所はある」「透を置いていくの?」 美月は遺体のそばから立たなかった。「置いていくしかないだろ」「一人にはできない」「もう一人じゃないとか、そういう話をしてる場合か?」「そういう意味じゃない!」 美月の声が鋭く跳ねた。 膝の上で握っていた手袋が、細く軋む。救命の現場で死者を見送ることには慣れているはずだった。それでも今、美月の前にいるのは患者ではない。八年前、同じ部室で机を囲み、イヤホンの片側を無言で差し出してくれた友人だった。「警察が来るまで、現場を動かすべきじゃない。遺体も、機材も、勝手に触れない方がいい」「警察をどうやって呼ぶ。電波はない。門も閉じた。廊下は同じ場所へ戻される。ここに残って次の仕掛けを待つつもりか」「だからって、透を放って逃げるの?」「死体を守って、生きてる人間が増えるのか」 悠斗の言葉が落ちた瞬間、美月の顔から色が引いた。 次の呼吸で彼女は立ち上がったが、朔が二人の間へ入った。「やめろ」 低い声だった。 大きくないのに、悠斗も美月も動きを止めた。「出口は探す。ただし、透をこのままにして動く前に、記録を残す。警察へ渡せる形にする」「そんな時間があるの?」 奈々香が壁際で泣きながら言った。 化粧は涙で崩れ、頬に黒い筋ができている。割れたスマートフォンを胸へ抱き、何度も扉の外を振り返っていた。「透は殺された。私たちも同じようにされる。次は忘れた人って言った。次は澪なんでしょ? ここにいたら、また誰か死ぬ」 澪の名が出た途端、空気が僅かに動いた。 悠斗が目を逸らし、美月は澪を見