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第11話

私はやれやれと心の中で息をついた。 桜生は相変わらずだ。大成さんが去ったからといって、すぐに空気が和むわけではなく、大成さんの背中をジッと睨みつけていた。 このままでは、また余計な言い合いになってしまう。 私は頭を切り替えるように、少し冷たく桜生に告げた。 「桜生。私たちの新しい企画書、ちゃんと目を通してくれる?」 「見る必要はない」 桜生と一緒に幼稚園へ通っていた頃から、桜生はいつもそんな調子だった。 他の子たちと桜生の違いといえば、御曹司という立場くらいだったはずだ。本人が望んで師弟関係を築いているわけではないだろうけれど、周囲の大人たちから放たれる、 『桜生くん、とても素晴らしい絵ですわね』 『お父様譲りの才能があるのですね』 『お母様に似て容姿端麗で』といった言葉の数々が、少しずつ桜生を歪めてしまったのかもしれない。 もっとも、私の家柄だってそれほど悪くはない。 だからこそ、海皇星家のご両親が、私の両親に向かって『レナちゃんを将来のお嫁さんに……』と微笑ましげに語りかけている場面も、子どもの頃から何度も目にしていた。 「代表っ!」 慌てた様子でこちらに向かって走ってくる、真紀子の声が聞こえた。 真紀子は私の頭から足先までしっかり見ていた。 「黒川さん。どうされました?」 「代表、『どうされましたか?』じゃないですよ。花川様から『連れ出してくれ』と言われましたから、何かされたのかと思いました」 真紀子はそう言って、桜生へ鋭い視線を投げた。 「海皇星様。いくら何でも、強引過ぎます」 真紀子はそう言いながら、右手人差し指を突き出して桜生へ問い詰めだした。 「私たちの資料も確認せず、契約するなど言い出しますし。勝手に代表の手を引いて……」 真紀子に問い詰められている、桜生はどんどん壁へ押されていた。 「これは、完全に誘拐ですから」 ここまで言い終えた真紀子は、そのままの勢いで細めた目を私へ向けた。 「黒川さん。桜生とは特に何もないですよ」 眉を下げ両手を広げ『降参です』と言わんばかりに、真紀子へ伝えたのだけれど、気がおさまらないようで、次は私に人差し指を突き出して迫ってきた。 「代表。とにかく、隠し事はよしてください」 真紀子がそう言い終えると、私の手首
last updateآخر تحديث : 2026-08-11
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