「周囲の目を引かないように、俺から遠ざけようとした。俺に関われば、お前が他の財閥連中から目をつけられると思ったから……だから、あんな態度をとって……っ」 なるほど。 桜生なりの論理が、少しだけ見えてしまった。 確かに、海皇星家の次期当主である桜生に親密にされれば、私は早い段階で標的になっていたかもしれない。桜生の周りにいるだけで、嫉妬や権力闘争に巻き込まれる危険は跳ね上がる。 けれど、 「だからって、私に何の相談もなく、勝手に切り捨てて冷たくあしらうのが守ることですか?」 私の声に、桜生は抱きしめる力を緩めた。 「……レナ」 「私はあなたの所有物でも、か弱いお人形でもない。それに、あなたが遠ざけたせいで、私は何度も一人で窮地に立たされた。だから、桜生から離れた。なのに、また私の前に現れるから、こうして誘拐までされた。それが本当に守ることだったと、本気で言えるの?」 車内には、山川さんの運転するエンジンの音と、重苦しい静けさだけが響いた。 後部座席の隅で、セレナさんとハマーが「おっと、修羅場だな」と囁いた。その後は気まずそうに顔をそむけるように窓の外を眺めている。 桜生は言葉を失ったように、黙った。だけど、私を見つめている。 「……ごめん」 やっとの思いで絞り出された桜生の声は、怯えた少年のようにか細かった。 私は桜生の腕をそっと、押し返す。 「謝るくらいなら、これからは余計な真似をしないで。私は、自分の身くらい自分で守るし、私のビジネスも、私の人生も、誰にも預ける気はさらさらない」 まっすぐに桜生を見据えて言い放つ。 「俺は、それでも諦めない」 「勝手に思ってくれてもいいけれど、私に害のない程度にしてください」 そう言って、私は走る車の外へ視線を向けた。 正直、今は桜生と恋愛ごっこのような会話を楽しむような状況ではない。山城令嬢に目をつけられたのだから。そう、私は倉庫を出ることばかり考えていた。それに、依頼主は大成さんだと思っていた。だから、この先大成さんをうまく言いくるめる策を立てていたのだから。それが、的外れだった。 財閥の看板を背負った山城令嬢。 個人の嫌がらせや、その場の口裏合わせでどうにかなる相手じゃない。下手に動けば、私の会社そのものが狙われるかもしれない。 私は小さく息を吐き出すと、すぐさま思考を切り替え
最終更新日 : 2026-08-25 続きを読む