桜生に腕を掴まれたまま、気づけばレストランの敷地から少し離れた駐車場に着いた。 「レナ、その指輪は外せ」 車内に乗り込む前に、桜生にそう言われた。 「だけど……」 「何に使うためか知っているか?」 「もちろんです」 「レナ、バカだろう。理由を知っていて付けているのか」 桜生はこれまで以上に怖い顔で私を攻めるような言い方をした。 私にしてみれば、桜生から逃げたのもこれ以上傷つきたくない。罵られたくもなかった。なのに、どうしてまた私と関わろうとする。これ以上惨めな思いをしたくない。 「桜生。勘違いしているようだけど、この指輪は私が連れされてもどこにいるか見つけやすくするためのもの。それ以外に何もない」 「そんなことあるわけないだろう」 桜生はそう言って、私の腕を引いた。以前のように無造作に放り投げる感じではなかった。手がわずかに震えているように感じた。 私を車に押し込むというより、桜生の側に引き寄せるようにドアを開けた。 「後部座席に乗れ」 ただ、乱暴なのは昔も今も変わらない。いい大人になったのだから、大成さんのように「レナ、さぁ乗って」と、もう少しだけ丁寧に扱ってくれてもいいのに。でも、桜生は昔からそうだった。私の気持ちより、自分の正しさを優先する人だった。 「これまでに、何度も連れ去られているの。その度に、大成さんが助けてくれている。それは、大成さんが開発したGPSのお陰」 ここまで言えばさすがの桜生も理解できるはず。 私は右手薬指の指輪を軽く触った。 「外せ! 今すぐ」 桜生はそう言って、私の右手に手を伸ばした。さっきよりも桜生のその手は震えている。 「どうして、私を困らせるの? 私は桜生が嫌いなの」 その言葉を口にした瞬間、桜生の手が止まった。 指先の力がふっと抜けて、指輪に触れていた手がそのまま私の手の上に残っている。桜生は何も言わない。ただ、私の顔を見つめたまま、固まったように動かない。 私がこんな言葉を言うとは思ってもみなかった? だから、怒りを越してうぬぼれるなと口を開こうと思っているの? 「レナ様は、桜生様のこと避けておいででしたね」 沈黙を破ったのは、鏡見さんの低い声だった。 『はい』と言えばいいのに、私の口は開かなかった。 ただ、鏡見さんの問
最終更新日 : 2026-08-17 続きを読む