桜生が私の部屋を去ってから、どのくらいの時間が経っただろう。 離れは本邸よりも静かで、ゆったりした時間が流れている。これまでに、これほど時計を確認しない時間はあっただろうか。私と桜生の歩み道は本当にこれでよかったのか。そんなことを繰り返し考えていた。 すると、私のスマートフォンのメッセージの通知音が鳴った。 スマートフォンを手に取ると、山川からだ。 『レナ代表。深夜に申し訳ございません。ただいま離れ周辺を黒川さんと巡回しておりますが、何やら本邸の敷地門辺りで騒ぎが起きたようです。今、黒川さんが本邸へ駆けつけています。連絡が入り次第、メッセージを送ります。レナ代表は、このまましばらく部屋から出ないようお願いします。僕はレナ代表の部屋の近くで待機します』 海皇星家はかなり広い土地を所有している。その屋敷の敷地門辺りで騒ぎがあった? 一体、何があったのか。黒崎グループが何か商談を考えて訪れることもありそうだけど、こんな遅い時間に? 失礼にも程ある。それに、桜生のお父様は現在、黒崎グループ関係との仕事を受けていないと言っていたはずだ。 数十分経過した。 スマートフォンのメッセージ通知音が鳴った。 『黒川さんから連絡が入りました! どうやら花川様が門にいるそうです「レナに会わせてくれ」と使用人や護衛の方に言っているそうです』 これはどうしたらいい。 私はこの屋敷に居ないことになっている。別の誰かに誘拐されていると伝えてある。だから、大成さんと顔を合わすわけにはいかない。 山川からメッセージが入った。 『レナ代表! とにかく部屋を出ないでください。今、黒川さんと状況を確認しています』 私は山川へ返信をする。 『山川さん。大成さんがここに居ることを、探知機とかそんな機械で分かったってことよね? そうしたら、いつまでもここでジッとしているわけにはいかないかもしれない。だから、門へ向かいます』 送信をタップして、私はスマートフォンを片手に部屋を飛び出した。 玄関に向かい、ドアの前で「行ってきます」と呟く。 小さな声でも反応する音声認識に驚きながらも、桜生と一緒に歩いた日本庭園を一人、走り抜ける。 唇を交わした周辺で足を止めた。一瞬でも、幸せだと思った場所。でも、今は桜生のことが分からない。立ち止まったからと言って
Last Updated : 2026-09-10 Read more