All Chapters of 10億のために継母と妹に殺されかけた夜、私は世界的スターに救われる: Chapter 121 - Chapter 130

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祖父母からの手紙

「……お母さま?」美紗が不思議そうに覗き込んだ。「何が書いてあるの?」久恵は返事をせず、便箋を読み進めた。そこには、香子の祖父母が、孫娘の将来について記した文章が並んでいた。『香子が成人したら、本人の希望する道を歩ませてやってください』久恵は眉をひそめた。『あの子は遠慮深いところがありますが、決して自分の考えを持っていないわけではありません。私たちには、将来は絵を勉強してみたいと話してくれました』「……絵?」美紗が声を上げた。「香子、そんなこと言ってたの?」「知らないわよ」久恵は吐き捨てるように答えた。香子が絵を描くことを好んでいたのは知っている。だが、美紗の習い事だけでも金がかかるのに、香子にまで好きなことをさせるつもりはなかった。『もし本人が望むなら、進学に必要な費用は私たちが用意します。どうか香子の希望を尊重してやってください』「……勝手なことを」久恵は舌打ちした。祖父母が亡くなったあと、香子が美術系の学校に進みたいと言い出したことがあった。そのときは、そんな余裕はないと叱りつけた。香子はそれ以上、何も言わなかった。「ねえ、お母さま。それって、香子に見せちゃまずいんじゃない?」美紗が尋ねた。「だって、お祖父様たちが香子の味方だったって手紙でしょ?」「……そうね」久恵は便箋を机に置いた。香子がこれを読めば、また祖父母のことを思い出して泣くだろう。そして、自分が進学を諦めさせたことまで蒸し返すかもしれない。「でも、手紙があることだけ教えればいいのよ」「中身は見せないの?」「まずは帰ってこさせるの。話はそれからよ」久恵は便箋を封筒に戻した。「お祖父様とお祖母様の手紙だと言えば、あの子はきっと欲しがるわ」美紗は少し考えた。「でも、香子って今、私たちからの連絡を無視してるんでしょ?」「ええ」「じゃあ、どうやって伝えるの?」久恵はスマートフォンを手に取った。「事務所に連絡すればいいでしょう」翌日。勇樹の所属事務所に、一通のメールが届いた。差出人は鷹宮久恵。件名には『香子への大切な連絡』と書かれていた。マネージャーは内容を確認し、勇樹に連絡した。「……祖父母からの手紙?」勇樹は聞き返した。『はい。香子さんに宛てた手紙がご実家で見つかったそうです』「それで?」『直接取りに来てほし
last updateLast Updated : 2026-10-20
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捨てられない手紙

「……捨てるって、本気?」美紗が尋ねた。「さあ、どうかしらね」久恵は封筒を引き出しに戻した。「でも、香子が取りに来ないなら、いつまでも保管しておく義理はないでしょう?」「それもそうね」美紗は笑った。「香子、きっと泣くわよ。お祖父様たちの手紙がなくなったって知ったら」「だったら、さっさと取りに来ればいいのよ」久恵は引き出しを閉めた。香子は昔から、祖父母のことになると弱かった。あの二人が買ってくれたものは、どんなに古くなっても捨てようとしなかった。その香子が、祖父母の最後の手紙を諦められるはずがない。久恵はそう考えていた。一方、香子は弁護士からの連絡を受け、困り果てていた。「……お母様は、どうしても直接渡したいと?」『はい。郵送も、こちらでのお預かりもお断りになりました』「そうですか……」『今のところ、先方はそのお考えを変えるつもりがないようです』香子は小さく息を吐いた。「……ありがとうございました」電話を切ると、勇樹が心配そうに声をかけた。「どうだった?」「やっぱり、私が取りに行かないと渡してくださらないそうです」「そっか……」香子は膝の上で手を握りしめた。「お祖父様とお祖母様のお手紙なのに……」声が震えた。「どうして、私が受け取るだけのことが、こんなに難しいんでしょう」勇樹は隣に座った。「香子は、取りに行きたい?」「……わかりません」香子は正直に答えた。「お手紙は欲しいです。でも、あの家には……」言葉が途切
last updateLast Updated : 2026-10-20
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母親の条件

「……あの子、私に条件をつけるつもりなの?」久恵はスマートフォンを机に叩きつけた。「何よ、それ!」美紗が顔を上げる。「どうしたの、お母さま?」「香子が、手紙を受け取るなら弁護士事務所で会うって言ってきたのよ!」「ええっ?」美紗は目を丸くした。「実家には帰ってこないの?」「そうよ。しかも、手紙を受け取るためだけの面会ですって!」久恵は忌々しげに吐き捨てた。「まるで私が、あの子に何かするみたいじゃない!」「実際、帰ってきたらお説教するつもりだったんでしょ?」美紗が笑いながら言う。「当たり前でしょう! 勝手に家を出て、あんな男のところに転がり込んで……」久恵はそこで口をつぐんだ。弁護士事務所では、香子を叱りつけることも、無理に連れ帰ることもできない。そもそも、手紙を渡したらそれで終わりだ。「……冗談じゃないわ」久恵は腕を組んだ。「そんな条件、受け入れられるわけないでしょう」「じゃあ、断るの?」「ええ。あの子が自分で帰ってくるまで、手紙は渡さないわ」美紗は楽しそうに笑った。「香子、がっかりするでしょうね!」久恵は再びスマートフォンを手に取り、弁護士への返信を書き始めた。翌日。「……やっぱり、駄目だったんですね」香子は弁護士からの連絡を受け、小さく肩を落とした。『はい。ご実家以外での面会には応じられないとのことです』「そうですか……」『手紙のお渡しについては、引き続きこちらからお願いすることもできますが、いかがなさいますか』香子は少し考えた。「……お願いします。でも、私が実家に行くつもりはないと、お伝えください」『承知しました』電話を切ると、勇樹が顔を上げた。「どうだった?」「お母様は、弁護士事務所では会ってくださらないそうです」「そっか」勇樹は隣に座った。「残念だったね」「……はい」香子は俯いた。祖父母の手紙を読みたい気持ちは変わらない。けれど、久恵の言うとおりに実家へ戻れば、また同じことの繰り返しになる。「……勇樹さん」「ん?」「私、以前なら、きっと取りに行っていたと思います」勇樹は黙って耳を傾けた。「お母様に言われたことは、何でも聞かなければいけないと思っていましたから」香子は膝の上で手を握りしめた。「でも、今は……どうしても、あの家には戻りたくないんです」「うん」
last updateLast Updated : 2026-10-21
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謝罪の条件

「……謝罪、ですか?」香子は思わず聞き返した。『はい。お母様から、手紙を渡す前に謝罪してほしいとの連絡がありました』「何を、謝ればいいのでしょうか……」『無断で家を出たことや、ご家族に迷惑をかけたことについて、だそうです』香子は言葉を失った。あの夜、美紗に二階の手すりから指を引き剥がされ、庭へ落とされた。もし勇樹が助けてくれなかったら、どうなっていたかわからない。それなのに、家を出たことを謝れというのだろうか。「……先生」『はい』「私、お母様に謝らなければいけないのでしょうか」『謝罪するかどうかは、香子さんご自身が決めることです。もちろん、手紙を受け取るために謝罪する義務はありません』「……そうですか」香子は少し考えた。祖父母からの手紙は欲しい。けれど、久恵に謝れば、また以前のように何でも言うことを聞かされる気がした。「……お断りしてください」『よろしいですか?』「はい。私は、お母様に謝るつもりはありません」『承知しました。そのようにお伝えします』電話を切った香子は、深く息を吐いた。「……謝れって?」話を聞いた勇樹は、呆れたように眉を寄せた。「はい。家を出たことを謝罪するように、と」「それで、どうしたの?」「お断りしました」香子は小さく答えた。「お手紙は欲しいです。でも、私、悪いことをしたとは思っていませんから……」「うん。それでいいと思うよ」勇樹は頷いた。香子は少し寂しそうに笑った。「……お母様は、きっと怒っていらっしゃるでしょうね」
last updateLast Updated : 2026-10-23
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思い出の箱

「……何これ。お誕生日のお祝い?」そこには、祖母の丸みを帯びた文字が並んでいた。『香子ちゃん、お誕生日おめでとう。今年も元気にお誕生日を迎えられて、お祖母ちゃんはとても嬉しいです』「ふうん。普通の手紙じゃない」美紗はつまらなそうに便箋を広げた。『この間、一緒に描いたお花の絵、とても上手だったね。また遊びに来たら、お庭で一緒に絵を描きましょう』「……また絵の話?」美紗は鼻で笑った。「香子って、昔から絵ばっかり描いてたもんね」久恵は箱の中を覗き込んだ。古い写真や手紙、押し花を挟んだ紙。どれも、金銭的な価値などなさそうなものばかりだった。「こんなもの、よく取っておいたわね」「ねえ、お母さま。これ、どうする?」「どうするって?」「香子が取りに来たいって言ってるんでしょ?」久恵は少し考えた。「……そうね。だったら、これも一緒に預かっておきましょう」「渡さないの?」「謝るまで渡さないわよ」美紗はにやりと笑った。「じゃあ、全部隠しちゃおうよ」そう言って、箱を持ち上げる。その拍子に、底に敷かれていた一枚の写真が床へ落ちた。「あっ」美紗は写真を拾い上げた。そこには、幼い香子が祖父母に挟まれて笑っている姿が写っていた。三人の後ろには、黄色い花が咲き乱れている。「……何よ、これ」美紗の顔が歪んだ。「香子ばっかり、こんなに可愛がってもらって」「仕方ないでしょう。あの子の母方の祖父母なんだから」「でも、なんか腹が立つ!」美紗は不機嫌そうに写真を箱へ放り込んだ。「こんなの、捨てちゃえばいいのに」「今は駄目よ」久恵
last updateLast Updated : 2026-10-23
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帰りたくない家

「……全部、ですか?」香子はスマートフォンを握りしめた。『はい。お母様は、今月中に引き取りがなければ処分するとおっしゃっています』「そんな……」祖父母からもらった手紙や写真。子供の頃に描いた絵。あの家に残してきたものの中には、もう二度と手に入らないものがたくさんある。『香子さん、私物の引き取りについては、こちらから改めて交渉いたします』「……お願いします」『ただ、先方が処分を強行する可能性もありますので、早めに対応を考えたほうがよいでしょう』「はい……」香子は電話を切った。その途端、目から涙がこぼれ落ちた。「香子?」勇樹が心配そうに顔を覗き込む。「……お母様が、私の荷物を全部捨てるって……」「全部?」「今月中に取りに来なければ、処分するそうです」香子は涙を拭った。「お祖父様とお祖母様のお手紙も、写真も……」勇樹は表情を険しくした。「それはひどいな」「……私、どうしたら……」勇樹は少し考えてから口を開いた。「香子。荷物を取りに行こう」「……え?」「俺も一緒に行く。弁護士さんにも立ち会ってもらおう」香子は驚いて勇樹を見上げた。「でも、お母様は……」「香子が一人で行く必要はないよ」「……勇樹さんまで、嫌な思いをされるかもしれません」「それは大丈夫」勇樹は穏やかに答えた。「大切なものを取り戻すために行くんだから」香子はしばらく黙っていた。あの家へ戻ることを考えると、今でも胸が苦しくなる。けれど、祖父母との思い出まで失いたくはなかった。「……わかりました」香子は小さく頷いた。「私、取りに行きます」勇樹は頷き返した。「じゃあ、弁護士さんに連絡しよう」翌日。香子の弁護士から久恵に連絡が入った。『香子さんが、ご実家に残された私物の引き取りを希望されています』「……そうですか」久恵は満足そうに微笑んだ。やはり、あの箱が惜しかったのだ。祖父母の思い出を持ち出せば、香子は言うことを聞く。久恵の考えたとおりだった。「それで、いつ来るんです?」『日程については調整中ですが、当日は私も同行する予定です』「……あなたも?」久恵の声が低くなった。『はい。お荷物の確認と引き取りに立ち会わせていただきます』「家族の問題に、いちいち弁護士が口を出す必要はないでしょう」『香子さんからご依頼を受
last updateLast Updated : 2026-10-24
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久しぶりの帰宅

「……本当に、私も一緒でいいんですか?」香子は車の後部座席で、勇樹に尋ねた。「もちろん。今日はそのために予定を空けたんだから」勇樹は微笑んだ。今日は、香子が実家に残してきた荷物を取りに行く日だった。弁護士とも相談し、荷物の引き取りに必要な時間だけ滞在することになっている。「……ありがとうございます」香子は窓の外に目を向けた。見慣れた街並みが近づいてくる。子供の頃から何度も歩いた道。けれど、今は懐かしさよりも緊張のほうが大きかった。「……勇樹さん」「ん?」「もし、お母様が何かおっしゃっても、気になさらないでくださいね」「うん。わかってる」勇樹は香子の手を握った。「今日は荷物を取りに来ただけだからね」香子は小さく頷いた。鷹宮家の前には、すでに弁護士が到着していた。「おはようございます」「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」香子が頭を下げると、弁護士は頷いた。「こちらこそ。まずはお荷物の確認をしましょう。必要なものを引き取ったら、それで終了です」「はい」勇樹も挨拶を交わした。三人が玄関へ向かうと、扉が開いた。「……香子!」久恵が満面の笑みで出迎えた。「まあ、久しぶりねえ。元気にしていたの?」「……はい」香子は小さく答えた。久恵は勇樹に目を向けた。「来栖さんも、またお越しいただいてありがとうございます。相変わらずお忙しいんでしょう?」「こんにちは。今日はお邪魔します」勇樹は丁寧に頭を下げた。「まあ、せっかくですから、ゆっくりしていってくださいね。お茶も用意してありま
last updateLast Updated : 2026-10-24
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返してほしいもの

「……ずいぶん偉そうになったものね」久恵は香子を睨みつけた。「母親に向かって、そんな口の利き方をするなんて」「……申し訳ありません」香子は反射的に頭を下げかけた。けれど、途中で思いとどまった。謝るようなことを言っただろうか。ただ、自分の荷物を返してほしいと頼んだだけなのに。「お母様。私の荷物を返してください」香子が繰り返すと、久恵の顔が険しくなった。「だから、先に謝りなさいと言っているでしょう!」「……何を謝ればいいのでしょうか」「何ですって?」「私が家を出たことですか?」香子は震える声で尋ねた。「それとも、お母様の言うとおりに帰らなかったことですか?」「両方よ!」久恵は即座に答えた。「家族に迷惑をかけておいて、何も悪いと思っていないの?」香子は唇を噛んだ。以前なら、ここで何度も謝っていただろう。けれど、今日は違う。隣には勇樹がいて、弁護士も立ち会っている。「……私は、もうこの家には戻りません」香子は顔を上げた。「でも、お祖父様とお祖母様からいただいたものは、私の大切な宝物なんです」「だったら、私の言うことを聞けばいいじゃない!」久恵が声を荒らげた。そのとき、弁護士が一歩前に出た。「鷹宮様。本日は私物の引き取りについて、事前にご了承いただいております」「ええ、だから何です?」「お荷物の引き渡しに、謝罪という条件をつけることについては、香子さんも同意されていません」「家族の間の話でしょう!」「香子さんは成人されています。ご本人が所有されているものについては、ご本人の意思を尊重していただきたいのですが」久恵は忌々しげに顔を背けた。「……本当に、面倒なことになったわね」勇樹が静かに口を開いた。「久恵さん。箱を返していただければ、俺たちは帰ります」「……あなたまで!」「香子は、ただ自分のものを受け取りたいだけです」久恵はしばらく三人を睨んでいた。しかし、これ以上言い争っても、香子が謝る様子はない。「……わかったわよ!」久恵は吐き捨てるように言った。「返せばいいんでしょう、返せば!」そう言って、部屋を出ていった。数分後。久恵は小さな箱を持って戻ってきた。「ほら。これでしょう?」「……あっ!」香子は思わず声を上げた。見覚えのある、淡い水色の箱。子供の頃から、祖父母との思い出
last updateLast Updated : 2026-10-25
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最後の手紙

「……謝らなければ、返していただけないんですか?」香子は階段の上から尋ねた。「そうよ。何度も言わせないでちょうだい」久恵は腕を組んだまま答えた。「あなたが家を飛び出して、どれだけ迷惑をかけたと思っているの?」「……でも、私……」「何? まだ言い訳するつもり?」香子は口をつぐんだ。祖父母からの手紙。何年も前に書かれた、自分宛ての言葉。それを読むために、どうして謝らなければならないのだろう。「鷹宮様」弁護士が階段を下りながら声をかけた。「そのお手紙は、香子さん宛てのものと伺っております。お渡しいただけませんか」「だから、渡さないとは言っていないでしょう!」久恵は苛立たしげに答えた。「香子が謝れば済む話なんです!」「香子さんは、謝罪には応じないとお伝えしております」「だったら、手紙は渡せません!」久恵はきっぱりと言い放った。そのとき、香子が階段を下りてきた。「……お母様」「何?」「そのお手紙は、お祖父様とお祖母様が私に書いてくださったものですよね?」「そうよ」「……でしたら、私に読ませてください」久恵は鼻で笑った。「だったら、謝りなさい」香子はしばらく黙っていた。そして、小さく首を振った。「……できません」「何ですって?」「私は、家を出たことを後悔していません」久恵の顔が強張った。「……香子!」「お母様には、育てていただいたことを感謝しています。でも……」香子は一度言葉を切った。「もう、あの頃のようには戻れません」「……誰のおかげで、今まで暮らしてこられたと思っているの!」久恵が声を荒らげた。「あなたが小さい頃から、どれだけ苦労して育ててきたと思っているのよ!」香子は俯いた。確かに、久恵が家のことをしていた時期もあった。けれど、それを理由に何をされても我慢しなければならないのだろうか。「……お母様」香子は顔を上げた。「私、もう謝りません」久恵は目を見開いた。「……何ですって?」「お手紙は、いただきたいです。でも、そのために謝ることはできません」「……本当に、可愛げのない子になったわね!」久恵は吐き捨てた。「だったら、もういいわ! 手紙なんか渡しません!」香子の顔が曇った。けれど、勇樹が静かに口を開いた。「香子。荷物は全部確認できた?」「……はい」「じゃあ、帰
last updateLast Updated : 2026-10-26
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あなたのためなら

「……法的手段、ですか?」弁護士の言葉に、香子は思わず聞き返した。『はい。お母様が引き続きお手紙の引き渡しを拒まれるようでしたら、裁判所を通じた手続きも検討できます』「さ、裁判所……?」香子は目を丸くした。『もちろん、すぐに裁判を起こすということではありません。まずは先方のお返事を待ちましょう』「……はい」香子は小さく答えた。電話を切ってからも、しばらくスマートフォンを見つめていた。祖父母からの手紙は、どうしても読みたい。けれど、たった一通の手紙のために、裁判所にまで行くことになるなんて思ってもいなかった。「……どうしたの?」リビングに入ってきた勇樹が尋ねた。「……あの、勇樹さん」香子は困ったように顔を上げた。「先生が、お手紙を返していただけないなら、法的な手段も考えるとおっしゃっていて……」「うん」「でも、そんな大ごとにしていただくなんて……」香子は俯いた。「お手紙一通のために、そんな……悪いです」勇樹は香子の隣に腰を下ろした。「どうして?」「だって、裁判なんて、お金もかかりますし……先生にも、たくさんお手数をおかけしてしまいます」「香子は、その手紙を読みたいんだよね?」「……はい」香子は頷いた。「お祖父様とお祖母様が、私に何を書いてくださったのか……知りたいです」「じゃあ、諦める必要はないよ」「でも……」勇樹は少し考えてから言った。「費用のことなら、俺が出
last updateLast Updated : 2026-10-26
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