All Chapters of 10億のために継母と妹に殺されかけた夜、私は世界的スターに救われる: Chapter 131 - Chapter 139

139 Chapters

返された手紙

「……あの男さえ、いなければ」久恵は忌々しげに呟いた。「来栖勇樹さえいなければ、香子だって今頃、泣いて謝りに来ていたはずなのに」美紗はソファに寝転がったまま、スマートフォンを眺めていた。「でも、勇樹さんと別れさせるなんて無理じゃない?」「そんなこと、わかっているわよ!」久恵は声を荒らげた。これまで、香子に何を言っても、勇樹は一向に離れようとしなかった。テレビでも堂々と交際を認め、香子を褒めていた。今さら悪口を吹き込んだところで、信じてもらえるとは思えない。「……だったら、どうするの?」美紗が尋ねた。久恵は手元の封筒を睨みつけた。香子の祖父母が残した手紙。これを渡さなければ、香子は困る。そう思っていたのに、弁護士まで使って取り戻そうとしている。「……まったく、面倒な子ね」久恵は舌打ちした。「もう、こんなもの返してしまおうかしら」「だから、最初からそう言ってるじゃない」美紗は呆れたように答えた。「ただの手紙なんだし、そんなに意地にならなくてもいいでしょ」久恵は不機嫌そうに美紗を睨んだ。だが、何も言い返せなかった。たった一通の手紙を渡さないために、弁護士とやり取りを続けるのも馬鹿らしい。それに、万が一裁判にでもなれば、余計な費用がかかる。「……仕方ないわね」久恵は封筒を手に取った。「返してあげるわよ」「そうしたら?」美紗は興味なさそうに答えた。久恵は机に向かい、弁護士事務所宛ての封筒を用意した。そして、祖父母の手紙を中に入れた。「……本当に、腹が立つわ」封を閉じながら、久恵は呟いた。「香子のくせに、私にこんな手間をかけさせて」けれど、もう手紙を取り出すことはなかった。数日後。「……お手紙が、届いたんですか?」香子は弁護士からの電話に、思わず声を上げた。『はい。お母様から、こちらの事務所に郵送されてきました』「……本当ですか?」『ええ。香子さん宛てのお手紙であることも確認できています』香子は胸の前で手を握りしめた。「……ありがとうございます!」『よろしければ、こちらからお送りいたしますが』「はい! お願いいたします!」電話を切ると、香子は急いで勇樹のもとへ向かった。「……勇樹さん!」「どうしたの?」「お手紙が……お祖父様とお祖母様からのお手紙が、戻ってくるそうです!」勇樹
last updateLast Updated : 2026-10-27
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勇樹からのサプライズ

「香子、明日の午後は空いてる?」夕食のあと、勇樹が何気なく尋ねた。「はい。特に予定はありませんけれど……」「じゃあ、ちょっと付き合ってくれる?」「もちろんです。どちらへ行くんですか?」「それは、着いてからのお楽しみ」勇樹は悪戯っぽく笑った。香子は不思議そうに首を傾げたが、それ以上は尋ねなかった。勇樹がそんな顔をするときは、いつも楽しいことが待っている。翌日。勇樹が運転する車は、都心から少し離れた閑静な住宅街へ向かっていた。「……この辺り、初めて来ました」香子は窓の外を眺めた。並木道の向こうに、白い建物が見えてくる。大きな窓が並ぶ、明るい雰囲気の建物だった。車がその前で停まった。「着いたよ」「……ここですか?」香子は建物を見上げた。入口の看板には、『青葉美術アカデミー』と書かれている。「……美術、アカデミー?」香子は目を丸くした。「勇樹さん、ここは……?」「大人向けの絵画コースがある学校なんだ」勇樹は微笑んだ。「見学をお願いしておいたんだけど、一緒に行ってみない?」「……えっ!」香子は思わず勇樹を見つめた。「私のために……?」「うん。絵を習ってみたいって言ってたでしょう?」「……はい。でも……」香子はもう一度、建物を見上げた。ずっと憧れていた、美術を学ぶ場所。子供の頃は、こんな学校に通える日が来るなんて思ってもいなかった。「……本当に、入ってもいいんでし
last updateLast Updated : 2026-10-27
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新しい一歩

「……入学のお申し込みですね。ありがとうございます」青葉美術アカデミーの受付で、女性が微笑んだ。「はい。よろしくお願いいたします」香子は少し緊張しながら頭を下げた。あれから数日。勇樹と一緒に見学した絵画コースに、正式に通うことを決めたのだ。週に二回、午後の授業を受けることになった。「それでは、来週からお待ちしておりますね」「はい!」手続きを終えて校舎を出ると、香子は思わず空を見上げた。まさか、自分が絵の学校に通える日が来るなんて。祖父母が生きていた頃には、いつか美術を学びたいと夢見ていた。けれど、久恵に反対されてからは、そんな夢を口にすることさえなくなっていた。「……お祖父様、お祖母様」香子は小さく呟いた。「私、もう一度、絵を描いてみますね」翌週。香子は少し早めに学校へ到着した。教室には、すでに何人かの生徒が集まっていた。「こんにちは」香子が挨拶すると、窓際に座っていた女性が顔を上げた。「こんにちは。もしかして、今日から?」「はい。鷹宮香子と申します」「私は小野寺です。よろしくね」小野寺と名乗った女性は、三十代半ばくらいに見えた。「ここ、初めてだとちょっと緊張するよね。でも先生も優しいし、すぐ慣れると思うよ」「ありがとうございます」香子はほっとして微笑んだ。「小野寺さんは、長く通われているんですか?」「もう二年くらいかな。仕事の合間に来てるの」「そうなんですね」「鷹宮さんは?」「私は……子供の頃から絵が好きだったんですけれど、ずっと描いていなくて」「じゃあ、久しぶりなんだ」「はい」香子は少し照れくさそうに笑った。
last updateLast Updated : 2026-10-28
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初めての作品展

「鷹宮さん、作品展に出してみませんか?」翌週の授業で、講師からそう声をかけられた香子は、驚いて顔を上げた。「……私が、ですか?」「ええ。小野寺さんから、出品を考えていらっしゃると聞きました」「はい。でも、まだ通い始めたばかりですし……」講師は香子のスケッチブックを覗き込んだ。「この黄色いお花、素敵ですね」「……ありがとうございます」「思い入れのあるお花なんですか?」「はい。亡くなった祖父母の庭に咲いていたんです」香子は懐かしそうに微笑んだ。「子供の頃、よくこのお花を描いていました」「そうなんですね。でしたら、ぜひ作品にしてみましょう」講師は展示の案内を差し出した。「今回は生徒作品展ですから、経験の長さは関係ありませんよ」香子は案内を受け取った。そこには、作品展の日程と出品方法が書かれていた。「……あの、ひとつ伺ってもよろしいでしょうか」「何でしょう?」「私の絵を、見てくださる方はいるんでしょうか……」講師は微笑んだ。「もちろん。毎年、ご家族やお友達だけでなく、一般のお客様もいらっしゃいますよ」「……そうなんですね」香子は胸を弾ませた。自分の描いた絵を、知らない誰かが見てくれる。考えただけで、少し緊張してしまう。「……私、出してみたいです」「ええ。楽しみにしていますね」香子は嬉しそうに頭を下げた。その日から、香子は作品展に向けて絵を描き始めた。題材は、祖父母の庭に咲いていた黄色い花。古い写真を参考にしながら、キャンバスに少しずつ色を重ねていく。「…&he
last updateLast Updated : 2026-10-28
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私の絵の値段

「……私の絵に、お値段をつけるなんて」香子は作品展の案内を見つめた。「なんだか、申し訳ない気がします」勇樹は笑った。「どうして?」「だって、まだ習い始めたばかりですし……。お金をいただけるような絵ではありませんから」「でも、香子が一生懸命描いた絵でしょう?」「……はい」「だったら、欲しいと思う人がいても不思議じゃないよ」香子は少し考えた。確かに、自分も誰かの絵を見て、素敵だと思ったことはある。けれど、自分の絵を買いたいと思う人がいるなんて、想像もできなかった。「……明日、先生に相談してみます」「うん。それがいいね」勇樹は頷いた。翌日の授業。「作品の販売価格ですか?」講師は香子の質問に頷いた。「はい。希望される方には、ご自身で価格を決めていただいています」「……どのくらいが普通なのでしょうか?」「大きさや画材にもよりますが、今回の作品展なら数千円から数万円くらいでしょうか。もちろん、非売品にしても構いませんよ」「そうなんですね……」香子は制作途中のキャンバスを見つめた。黄色い花が、少しずつ形になってきている。「……私、売るつもりで描いていたわけではなくて」「ええ。それでいいんですよ」講師は微笑んだ。「作品展は、まず皆さんに絵を見ていただく機会ですから」「……はい」「価格は完成してから決めても大丈夫ですよ」香子はほっとして頭を下げた。「ありがとうございます」それから一週間。香子は授業のたびに、少しずつ絵を仕上げていった。
last updateLast Updated : 2026-10-29
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作品展の取材

「……取材?」勇樹はスマートフォンを耳に当てたまま、眉を上げた。『はい。以前から来栖さんを取材している芸能誌の記者さんです。明日のご予定を聞きつけたようで』「どうして知ってるんだろう?」『作品展の案内は一般公開されていますからね。来栖さんが訪問されるという情報も、どこかから伝わったのでしょう』勇樹は少し考えた。「香子の作品展なんだ。俺が目立って、迷惑をかけるのは嫌だな」『では、お断りしましょうか』「うん。そうしてくれる?」『承知しました』電話を切ると、香子が心配そうに尋ねた。「……勇樹さん、取材というのは?」「明日の作品展に、記者さんが来たいんだって」「……えっ!」香子は驚いた。「私の学校に、ですか?」「うん。でも、断っておいたよ」「……そうなんですね」「せっかくの作品展だからね。香子も、ほかの生徒さんたちも、落ち着いて楽しめたほうがいいでしょう?」「……はい」香子はほっとしたように微笑んだ。「ありがとうございます」翌日。青葉美術アカデミーのギャラリーには、たくさんの作品が並んでいた。風景画や人物画、色鮮やかな抽象画。香子は入口に立ち、緊張した面持ちで会場を見渡した。「……こんなに立派な展示会になるんですね」「うん。すごいね」隣に立つ勇樹が微笑んだ。今日は帽子を深くかぶり、目立たない服装をしている。それでも、すれ違う人が何度か振り返っていた。「香子の絵はどこ?」「……こちらです」香子は勇樹を奥の展示スペースへ案内した。壁には、『春の庭
last updateLast Updated : 2026-10-29
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初めてのお客様

「……三人も、ですか?」香子は驚いて聞き返した。「はい。皆さん、来栖さんのSNSをご覧になったそうです」受付の女性は嬉しそうに答えた。「作品を購入したいというお問い合わせが、立て続けに入っているんですよ」「……そんな」香子は戸惑いながら勇樹を見た。「勇樹さん、どうしましょう……」「すごいね。香子の絵を欲しいって人がいるんだ」「でも、三人もいらっしゃるなんて……」香子は自分の絵を振り返った。祖父母の庭を思い出しながら描いた『春の庭』。まさか、知らない人が買いたいと言ってくれるとは思わなかった。「……あの、お値段は一万円にしてあるんですけれど」「はい。皆さん、その価格もご存じです」受付の女性が頷いた。「ただ、一点しかありませんので、販売方法について先生に確認してまいりますね」「……よろしくお願いいたします」香子は深く頭を下げた。しばらくして、講師がやってきた。「鷹宮さん、すごい反響ですね」「……私も、驚いてしまって」「今回は先着順で販売することになっていますので、最初にお申し込みくださった方にお譲りする形になります」「……そうなんですね」香子は少しほっとした。「それでしたら、ぜひ、その方に……」「わかりました。お手続きを進めますね」講師は微笑んだ。「初めての出品で、もう購入希望があるなんて素敵ですね」「……ありがとうございます」香子は頬を赤らめた。それからも、勇樹の投稿には次々とコメントが寄せられた。
last updateLast Updated : 2026-10-30
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美紗の対抗心

「私だって、絵くらい描けるんだから!」美紗はスマートフォンをテーブルに置いた。久恵は呆れたように顔を上げた。「急に何を言い出すの?」「だって、香子の絵が一万円で売れたんでしょ? 私だって描けば売れるわよ!」「絵なんて、学校を卒業してから描いていないでしょう?」「そんなの関係ないじゃない!」美紗は不機嫌そうに唇を尖らせた。「どうせ勇樹さんのファンが買ったんでしょ。香子の絵だから欲しいわけじゃないんだから」久恵はスマートフォンの画面を覗き込んだ。そこには、勇樹の投稿を引用した記事が表示されていた。『来栖勇樹、恋人の絵画を絶賛。初出品作が即日完売』「……まったく、大げさね」久恵は鼻を鳴らした。「たった一万円の絵が売れただけでしょう?」「そうよ! なのに、みんな香子のことばっかり褒めてるの!」美紗は画面を指さした。『優しい色使いが素敵』『ほかの作品も見たい』『次の作品展が楽しみ』「……何よ、これ!」美紗はスマートフォンを握りしめた。「香子ばっかり、ずるい!」久恵はため息をついた。「そんなに羨ましいなら、あなたも絵を習えばいいじゃない」「……え?」「香子にできることなら、あなたにだってできるでしょう?」美紗は目を輝かせた。「そうよね!」そして、すぐにスマートフォンで絵画教室を検索し始めた。「……あ、ここ! 香子が通ってる学校じゃない?」画面には、青葉美術アカデミーの公式サイトが表示されていた。「私もここに通おうかな」久恵は眉をひそめた。「わざわざ同じ学校に?」「だって、香子より上手な絵を描いてやりたいんだもん!
last updateLast Updated : 2026-10-30
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招かれざる生徒

「……美紗が?」香子はスマートフォンを見つめた。小野寺から届いたメッセージには、確かに妹の名前が書かれていた。『鷹宮美紗さんっていう方なんだけど』同姓同名の別人という可能性もある。けれど、香子には嫌な予感がした。「どうしたの?」勇樹が尋ねた。「……あの、私の通っている学校に、美紗が見学を申し込んだそうなんです」「妹さんが?」「はい……」香子は困ったように俯いた。「どうして、同じ学校に……」勇樹は少し考えた。「絵に興味を持ったのかもしれないね」「……そうでしょうか」香子は首を傾げた。美紗が絵を描くのを楽しんでいるところなど、見たことがない。それどころか、香子が絵を描いていると、よく馬鹿にされたものだった。『そんなの描いて、何になるの?』昔の美紗の声が蘇る。「……私、学校では静かに絵を描いていたいんです」香子が小さく言うと、勇樹は頷いた。「うん。今はまだ、見学を申し込んだだけなんでしょう?」「……はい」「だったら、今から心配しすぎなくてもいいと思うよ」「……そうですね」香子は小さく息を吐いた。翌日。青葉美術アカデミーでは、いつもどおり授業が行われていた。香子は新しいキャンバスを前に、次の作品の下描きを始めていた。「鷹宮さん、今度は何を描くの?」小野寺が尋ねた。「……今度は、海を描いてみようと思っているんです」「海?」「はい。子供の頃、お祖父様とお祖母様に連れていってい
last updateLast Updated : 2026-10-31
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