「その役員は――海原二郎副社長だ」「……!」 淳が顔を上げる。「二郎さんが……? そんなまさか」 彼は二郎を慕っている。もちろん、疑いたくない気持ちがあるのはわかる。「二郎さんが管掌していた。それだけで犯人とは言えないでしょう」 瑠理子は淳を見た。「ごめんなさい。私も彼を疑ってる」 淳が瑠理子を見る。「……二郎さんを?」「前から少し」「どうして言わなかったんです?」「証拠がなかったから」 そして。「淳に、私と同じ失敗をさせたくなかった」「同じ失敗?」「……思い込みで、人を犯人だと決めつけること」 前世では、与えられた情報しか信じなかった。その結果、すべてが壊れた。「だから、ちゃんと証拠を掴もうと思っていたの」「……そうですね」 淳が頷く。「しっかりと調べる必要がありますね」「ええ」 直之も頷いた。「僕も同意見だ。疑う価値はある。でも、まだそれだけだ」「川瀬って人に会えませんか?」「探している」「川瀬さんは生きているんですよね?」 淳の問いに直之は一瞬、黙った。「……どうしたんです?」「所在が掴めない」「え?」「四年前に会社を退職して、その後の記録が途切れてる」
Last Updated : 2026-10-29 Read more