二郎の言葉に、淳はすぐには答えなかった。 海原グループ――父が長く勤めていた会社。 そこへ、自分が行ける? 「でも、俺はまだ大学生ですよ」「だからこそだよ。いきなり社員になれと言っているわけじゃない」 二郎は笑った。「大学に支障が出ない範囲で、インターンとして来ればいい。経営や財務を学ぶいい機会にもなる。君は経済学部だったよね?」「はい」「なら、なおさら無駄にはならない」 淳は考え込んだ。「父のことも……何かわかりますか?」「それは君次第だろうね」「俺次第?」「会社には昔から残っている資料もあるし、君のお父さんを知る社員もまだいる。話を聞けば、家では見せなかった顔も分かるかもしれない」 その言葉に心が動いた。 父がいた場所。 父を知っている人たち。 父が残した仕事。 それを自分の目で確かめられる。「……興味はあります」「そうか」 二郎は嬉しそうに頷いた。「だったら一度来てみるといい。合わなければ辞めればいいんだから、難しく考える必要はない」「そんな簡単に決めていいんですか?」「私は君を他人だと思っていないよ。義昭さんには随分世話になった。息子である君の力になれるなら、私としても嬉しい」 淳は少しだけ目を伏せた。 父の名前をこうして誰かの口から聞くこと自体、久しぶりだった。気にかけてくれている、二郎のこともありがたいと思う。「ありがとうございます」「じゃあ、詳しいことは私から人事へ話しておこう」「はい」 二郎は満足そうに笑った。 そして何気ない調子で付け加える。「それに、海原グループへ来れば瑠理子ちゃん
Last Updated : 2026-10-14 Read more