All Chapters of 前世で私を壊した夫から、二度目の人生では逃げ切りたい ~冷徹な復讐者は私を二度と離さない~: Chapter 41 - Chapter 50

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第四十一話 瑠理子のためにできること

 時は少し遡り、海原家――「……何やってんだよ」 自室にいた淳は、スマートフォンから流れる映像を食い入るように見つめていた。御堂財団の慈善パーティーの様子を、何となく気になって配信を開いたのが始まりだった。『床、拭いたら?』「……は? なんだこれ……」 画面の中で、瑠理子のドレスは赤いワインで汚れていた。今日、とても美しい姿に胸を痛めたばかりだ。無残な姿になっていた。 そして現在、大勢の令嬢に囲まれている。『私は何も悪いことしてない!』「瑠理子……」 なぜこんなことになっているのだ?『泥棒!』『あなたのバッグから出てきたじゃない!』「違う 瑠理子は泥棒なんかしない!」 腹が立ち、思わず淳は立ち上がった。『私じゃない!』「分かってる!」 スマートフォンを握る手が震える。『直之さんにだって、本人から来てほしいって言われたの!』 直之のことを聞いて、胸の奥がずきりと痛んだ。 御堂直之 瑠理子が自分ではなく、未来を選ぶために婚約しようとしている男。 本当なら、名前を聞くだけでも面白くない――が。「御堂さん……何やってんだよ」 来てくれ、早く! あんたが行けば、この状況を終わらせられる。 瑠理子は泥棒などしていないし、身の潔白を
last updateLast Updated : 2026-09-29
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第四十二話 素晴らしきライバル

 ホテルを出た淳は、再びバイクを走らせた。今度は会場へ向かうのではない。今来た道と反対方角へ。ホテルへ向かう車列を、反対側の車線から確認しながら進んでいく。 「黒のセダン……黒のセダン……」  目を凝らす。 一台。 違う。 二台目。 これも違う。 三台。 四台。 黒い高級車など、いくらでも走っている。 「くそ……!」  簡単に見つかるとは思っていなかったが、予想以上に見つけるのが難しくて焦る。 この瞬間にも瑠理子は、一人であの女たちに囲まれている。 『泥棒!』『男なら誰でもいいの?』『直之さんに選ばれたと思ってるなんて可哀想』  さっき見た映像が頭から離れない。 「待ってろ……! 絶対、助けるから!」  目を皿のようにして周りを気にして黒のセダンを探しながら、暫く走っていると、前方に見覚えのある車が見えた。「……!」  黒の大型セダンだ。 車種やナンバー、間違いない。「いた!」 淳は路肩へバイクを寄せた。 急いで降りると、その車へ駆け寄った。車はぴくりとも動いていない。事故が予想以上に大渋滞を引き起こしているからだ。 「すみません!」やや乱暴にゴンゴン、と運転席の窓をノックした。  運転席の男が驚いた顔をする。窓を少しだけ開けて返事をした。「はい?」「御堂直之さん、乗ってますよね!?」「あの……どちら様でしょうか」「橘淳です。海原家に居候させてもらっている男です。海原一郎さんや、二郎さんに世話になっております」「橘様……?」「御堂さんはどちらですか!?」 運転手が少し戸惑う。「御堂様でしたら、先ほど、車
last updateLast Updated : 2026-09-29
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第四十三話 瑠理子を救うための決断

 直之の視線が、淳を一瞬だけ値踏みするように走った。  だが淳は構わず言った。「ホテルまで乗ってください」「……何?」「バイクなら抜けられます」 淳は後部座席を指した。「早く!」 直之は息を整えながら、淳を見つめた。「君は、どうしてここに?」「俺も配信を見ました」 淳の声が低くなる。「ホテルまで行ったんです。でも招待状がなくて、中に入れてもらえなかった」 「……そうか」「無理やり入ることも考えましたが、今、俺が会場に入ったら、瑠理子お嬢様がもっと不利になります」 直之の眉が僅かに動く。「百合絵さんたちは、俺とお嬢様が関係を持ってるって騒いでる。俺たちは、そういう仲ではありません。俺の両親が不慮の事故に遭い、困っているからと親切心で彼女の父や百合絵さんの父が、屋敷の居候を許可してくれたのです。俺の父が、海原グループの財務を担っていましたから」「……そうなんだ」「まだ屋敷に住み始めて間もないですし、根拠のない噂です! 調べていただいたらわかりますから」  美しい顔立ちの男は、必死になって直之に訴えかける。「それに俺は、お嬢様には嫌われていますから」 「……へえ」  どういうことだろうか。  瑠理子は橘淳を嫌っている?  彼が嘘をつくメリットはないが、確認する必要はあるな、と直之は思った。 「なら、どうして君はそんなに必死なんだい?」  挑戦的な質問だったと思う。しかし直之はつづけた。「橘君には関係ない話だろう?」「はい。でも、配信で一方的にお嬢様が責められているのは、気持ちいいものではなくて。世話にもなっていますから、なんとか助けたいと思ったんです。それで、気が付いたらホテルに向かっていました」  まっすぐに見つめられた。情熱的な瞳だ。  正直で眩しいくらいの青年――こんな彼を、瑠理子は嫌っているのか?  直之は、どうもそうには思えなかった。 「ホテルには入れてもらえなかったので、無理やり入ることも考えましたが、やめました」 「なぜ? 振り切って配信を止める方が早かったんじゃないのか?」 「いえ。あそこに俺が助けに現れたら、あの人たちの言い分を裏付けるだけです。きっと、余計彼女が責められてしまう……」 言いながら淳の胸の奥が痛んだ。 本当は、そんなことを考えずに、飛び込みたかった。 瑠理子の前に立って、もう誰
last updateLast Updated : 2026-09-30
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第四十四話 お父様がどうなってもいいのね?

 その頃――。 ホテルの会場では、百合絵が完全に勝利を確信していた。 直之から自分へ電話がかかってきた、その事実だけで十分だった。 電話の内容など、ここにいる誰にも聞こえていない。なら、自分がどう説明しようと自由だ。「瑠理子ちゃん」 百合絵は、ゆっくりと瑠理子へ近づいた。「これで分かったでしょう?」「……」「直之さんは、あなたではなく私に電話をかけてきたの」 周囲から、くすくすと笑い声が上がる。「やっぱり百合絵さんだったのね」「幼馴染だもの」「直之さんも、本当に困ってたんじゃない?」 瑠理子は俯いたまま、何も言わない。 胸が苦しい。直之本人から聞いたわけではない。 頭ではそう思っていても、それでも直之から百合絵へ電話がかかってきたことだけは、事実だった。「……どうして」 掠れた声が漏れる。「どうして直之さんは、私じゃなくて百合絵お姉様に……」 その言葉を聞いて、百合絵の口元が僅かに持ち上がった。 これ、かなり瑠理子に効いている♡「それはね」 優しく、傷ついた子どもへ教えるような声で言う。「あなたに直接言いたくなかったからよ」「……」「婚約するつもりなんてない。もう関わりたくない」「……違う」「そう言ってたわ」「違う!」 瑠理子が顔を上げた。
last updateLast Updated : 2026-09-30
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第五十話 責任の押し付け合い

 その一言を皮切りに、取り巻きたちも一斉に責任を押しつけ始めた。「私も違います!」「私は腕を少し押さえただけです!」「髪を引っ張ったのは私じゃないわ!」「私だって、百合絵さんに頼まれただけで……!」 「ちょっと!」 百合絵が振り返った。「何よ、それ!」 「だって百合絵さんが、ブレスレットをくれるって言ったから!」「そうよ!」「一番に土下座させた人にあげるって!」 「それは……!」 百合絵の顔が引きつった。直之は黙っている。 まだ彼は止めない。 ただ、彼女たちが互いに責任を押しつけ合う様子を、冷たい目で眺めていた。 「百合絵」「……なに?」「今の話は本当?」「違うわ!」 即答した。「ブレスレットなんてあげるって言ってない!」 「えっ!?」 取り巻きたちが一斉に百合絵を見る。 「言ったじゃない!」「私、ちゃんと聞いたわよ!」「『この悪魔を謝罪させた人にあげる』って!」 「そんなの冗談よ!」 百合絵が叫ぶ。「あなたたちが勝手に本気にしただけでしょう!」 「冗談!?」「一千万円以上するから、その程度じゃあげられないって煽ったじゃない!」「知らないわよ!」「百合絵さん!」「私はこの子に謝ってほしかっただけ!」 百合絵は必死に直之を見る。「本当よ、直之さん!」 「そう」 直之が静かに頷いた。「謝ってほしかっただけなんだ?」 「ええ!」 百合絵の顔に希望が戻る。「分かってくれた?」 「じゃあ確認しよう」「……え?」「瑠理子
last updateLast Updated : 2026-10-03
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