前世で私を壊した夫から、二度目の人生では逃げ切りたい ~冷徹な復讐者は私を二度と離さない~ のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

107 チャプター

第三十一話 公開処刑

 「なにがおかしいの!」 瑠理子は堪らず百合絵に噛みついた。しかし彼女は答えない。代わりに取り巻きの令嬢が口々に叫ぶ。「言い訳ばっかりして」「百合絵に謝りなさいよ」「ほら、早く」 くすくす、と嘲笑う令嬢たち。 瑠理子はキッと彼女たちを睨み、反論した。「私は百合絵お姉様から、直之さんを奪ったりしてないし、招待状も偽造してない!」「それで?」「淳とも、あなたたちが言うような関係じゃない」「へえ」 瑠理子は宣言した。「だから、私は何も悪くありません」  しん、と会場が静まった。 ようやくわかってもらえると安堵しかけたが、瑠理子の反論は却って令嬢たちの心を刺激した。「生意気」「何、その態度」「こんなに百合絵が庇ってくれてるのに」「恩知らず」「謝れば済む話でしょう?」 令嬢たちに詰め寄られた。「嫌。私は悪くないもの」 しかし瑠理子は、頑なに譲らない。「は? まだ言うの?」「していないことを、認めるつもりはないわ!」 その言葉が。相手の癇に障った。 顔を歪めた令嬢のひとりが、いい加減にしなさいよ、と呟いた。 突然、肩を強く押され、瑠理子の身体が大きくよろめく。「きゃ……!」 辛うじて倒れずに踏みとどまったが、その様子を見て誰かがまた笑った。「危ないわね」「転んで床を傷つけないでよ」「もう帰ったら?」「帰る前に謝りなさいよ」「百合絵と御堂さんに」「あんたみたいなアバズレ、相
last update最終更新日 : 2026-09-24
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第三十二話 洗礼を目撃している直之

  同じ頃――。  御堂直之を乗せた車は、会場となるホテルから十キロほど離れた幹線道路で完全に立ち往生していた。前方で起きた多重事故は、大型車を含む数台が車線を塞ぎ、警察と消防による処理が続いているらしい。  数車線ある道路は、見渡す限り車で埋め尽くされていた。  一台たりとも車は進まない。 こんな大切な時に――直之はイライラをなんとか胸の中に押し込めた。 運転手が悪いわけではない。 「……まだ動かないのか」  後部座席で、直之が腕時計を見る。 「申しわけございません」  運転手がバックミラー越しに答えた。「警察が事故車両の撤去を進めていますが、我々の位置から迂回路へ入るまでにも時間がかかるようです」 「ホテルまで何キロだ?」 「およそ十キロです」 「……十キロか」  直之は低く呟いた。 歩くには微妙な距離だ。恐らくこのまま車に乗り続けた方が早く着くだろう。  本来なら、パーティーが始まる前に、直之は到着しているはずだった。  今日は御堂財団が主催する慈善パーティーが行われる。主催者側の人間が遅刻するなど、あってはならないことなのに。  もちろん、事故が起きた時点で、ホテルには連絡を入れておいた。  再度問題が発生中のため、電話をかけているが、先ほどから代表電話が異常なほど混雑していた。 
last update最終更新日 : 2026-09-24
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第三十四話 盗ったのは君じゃない

 女たちの視線が、一斉に瑠理子へ向いた。「……やめろ」 直之は低く呟いた。嫌な予感しかしない。 画面の中で、瑠理子もそれを感じ取ったようだった。 胸元へバッグを抱き寄せる。『……何?』 ブローチを失くした令嬢が、瑠理子のバッグをじっと見つめる。『バッグ』令嬢が言った。『中、見せて』 直之の眉が跳ねた。『確認するだけよ』『嫌よ」『何もしてないなら見せられるでしょう?』 「そんな理屈があるか!」  思わず声が出る。 『そういう問題じゃないわ!』「そうだ。見せる必要はない」 直之はまた画面の中の瑠理子へ話しかけていた。もはや、自分が瑠理子の立場に立ち、孤立無援の彼女を応援するひとりになったかのように。 だが令嬢たちは止まらない。『見せられないんだ?』『違う!』『だったら見せて!』『嫌!』『見せなさいよ!』 一人の女が瑠理子のバッグへ手を伸ばした。「触るな!!」『やめて!』「触るな!」 瑠理子がバッグを抱き込む。 すると別の女まで手を伸ばした。 『触らないで!』『そんなに隠すってことは』『やましいってことよね?」 瑠理子が腕を掴まれ、バッグを引っ張られる。「やめろ……!」 直之の呼吸が荒くなる。 何人もの手が瑠理子へ伸びていく。 腕を掴んでバッグを引っ張り、彼女の身
last update最終更新日 : 2026-09-25
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第三十五話 瑠理子を陥れた犯人

 しかしいくら直之がここで瑠理子を信じていても、画面の中の令嬢たちは違った。『この盗人!』『あなたのバッグから出てきたじゃない!』『最低!』『警察呼んだ方がいいんじゃない?』「やめろ……」直之の喉が震えた。 瑠理子が置かれた状況を考えると、胸が痛む。 「まだ連絡はつかないのか!」 だあん、と車のドアを拳で叩く。運転手は「申しわけございませんが……」を繰り返すだけだ。 画面の中は刻一刻と進んでいる。『違うわ! 私じゃない! 私は人様のものを盗ったりしないわ!!』「わかってる!」『誰かが入れたのよ!』「ああ、そうだろう!」『信じて!』「信じる!」 画面に向かって叫んでも、会場の令嬢や瑠理子には届かない。 どれだけ答えても、瑠理子には聞こえない。 それがたまらなく悔しかった。 「僕は君を信じてる!」  声を張り上げる。「だから……そんな顔するな」 瑠理子の目が少しずつ潤んでいく。 直之の胸が締めつけられた。「泣くな……」 拳を握る。「頼むから、泣くな……!」 しかし追い打ちは終わらなかった。『待って』 誰かが声を上げる。『もうひとつあるわ』「……?」 カメラが床へ向く。 ダイヤのブローチの横に、大ぶりなカメオ。「……!」 直之は息を呑んだ。 これは、御堂家が今回の慈善オークションへ提供した、アンティークの
last update最終更新日 : 2026-09-26
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第三十六話 直之さんまで欲しいの?

「……やっぱり、君か」直之の声が低くなる。 百合絵は床に散らばった二つの宝飾品を見下ろし、悲しそうに眉を寄せた。『瑠理子ちゃん、どうして……こんなことしたの?』『してないわ! 私じゃない!』『分かったから、落ち着いて』「落ち着くのは百合絵、君だ……!」  直之が吐き捨てる。 この状況で大勢に囲まれ、ワインを浴びせられ、持ち物を勝手に漁られ、盗人扱いまでされている瑠理子を庇うこともしないなんて! 百合絵が瑠理子を陥れた犯人なら、わかる。  直之は防犯カメラのデータにアクセスした。  録画データをAIに解析させ、瑠理子のバッグに近づき、ブローチをふたつ入れた犯人をあぶり出す指示を出した。『私ね』 百合絵は瑠理子へ一歩近づいた。『あなたのこと、最後まで信じたかったのよ』『……』『この前は私も取り乱したわ。直之さんとのことを聞いて、ショックだったから』 まるで自分の方が傷つけられた被害者のような口調だった。『でも、今日は瑠理子ちゃんを受け入れようって思ったの。なのに……』 百合絵はダイヤのブローチを見る。続けて御堂家のカメオへ目を落とした。『こんなものまで盗むなんて』『盗んでない!』『まだ言うの?』 百合絵の声音が固くなった。『あなたのバッグから出てきたのよ』『誰かが入れたの!』『誰が?』『それはわからないけど、私は盗んでない! 人様のものを盗るほど落ちぶれていないわ!!』『いま、落ちぶれてるじゃない』  くすくす、と周りから失笑があがる。  すべて、ここにいる全員が海原百合絵の味方だ。「瑠理子は嵌められた側なんだぞ!」  画面の向こうでは百合絵が小さくため息を吐いた。  直之は彼女の一挙一動にいら立ちを覚えた。『瑠理子ちゃん』『……』『もう認めたら?』『何を』『全部』 百合絵の口元が僅かに歪んだ。『直之さんに選ばれ、御堂家の人間になりたかったから、偽の招待状まで作ったのね』『違う!』『ここまで勝手に来て』『私は呼ばれたの!』  百合絵は床のカメオを指差した。『それなのに、御堂家のものまで盗んだ』『違うって言ってるでしょう!』 瑠理子の声が震える。  悔しくて 怖くて それでも必死に声を張っている。 まだ、たった十八歳の少女が、悪意に晒されながらも無実を訴え素姿に、直之の胸が締めつ
last update最終更新日 : 2026-09-26
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第三十九話 百合絵の自作自演

『……?』 百合絵がバッグからスマートフォンを取り出す。画面を見た瞬間、表情が変わった。『直之さん……』「出ろ!」 直之はスマートフォンを握り締めた。「出てくれ!」 百合絵がちらりと瑠理子を見る。 そして、周囲の令嬢たちにも見えるように、わざと画面を傾けた。『えっ、直之さんから?』『こんなタイミングで?』『やっぱり百合絵さんに連絡するのね』 ざわざわと声が上がる。 瑠理子も驚いた顔でスマートフォンを見つめていた。「百合絵!」 直之が叫ぶ。「早く出ろ!」 数回のコールのあと、ようやく百合絵が通話ボタンを押した。『もしもし、直之さん?』「百合絵!!」 繋がった!! 直之は身体を前へ乗り出した。「今すぐ瑠理子に代われ!」『ええ』「全部見てる! 配信も!」『そうなのね』「百合絵! 聞いてるのか!?」 妙だった。 百合絵の返事がまるで自分とはまったく別の会話をしている。『……そう』「は?」 百合絵は周囲を気にするように、わずかに声を潜めた。 しかし、令嬢たちには聞こえる程度の声で言った。『分かったわ、直之さん』「何が分かったんだ!」『やっぱり、そうだったのね』「百合
last update最終更新日 : 2026-09-28
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第四十話 僕が選んだのは君だ!!

『今日のパーティーにも、自分は呼んでいないって』 まだ、百合絵は勝手に捏造した言葉を続けている。聞くに堪えなかった。「僕が呼んだ!!」『あなたが勝手に来たことで、御堂家にも迷惑がかかっているって』「言ってない!!」『もう関わりたくないって』「百合絵ええええ!!」 直之の怒声が車内を揺らした。 運転手がびくりとする。 それでも直之は止まらない。拳で座席を殴る。「一言もそんなこと言ってない!!」 直之の思いは届かない。そして瑠理子は百合絵の放った言葉に傷つき、動けなかった。『……嘘……そんな……』 百合絵が困ったように微笑んだ。『残念だけど、これが直之さんの本当の気持ちよ』「違う!!」『だって』 百合絵は自分のスマートフォンを見せた。『今、本人から電話があったでしょう?』「……っ!」 最悪だった。 先ほどまでは、百合絵の言葉だけだった。 瑠理子も、まだ疑うことができた。 でも、今は違う。 直之から百合絵へ電話がかかってきた。 その事実だけは嘘ではない。 自分が招いてしまった、最悪の結果。 しかも百合絵は、一方通行とはいえ、直之と話していた。 それを、瑠理子もその場にいる全員も見ている。
last update最終更新日 : 2026-09-28
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