執務室から内城へ入った途端、ドンっ! と強く背中を押された。 そのまま廊下に激しく倒れ込む。 しかも悪いことに、背中を押されたときに羽も押されたから、悲鳴も上げられないほどの痛みに顔から床にダイブしてしまった。 くそう……痛い。 「——馬鹿なのかお前」 アディノスの緑の目が、私を見下ろしている。ブレイクに比べれば覇気も怖さも遠く及ばないが、どうしてここまで怒っているのかわからない。 その怒りの目に、これまでのナノリアの記憶が走馬灯のように駆け抜けていった。*** ある日、まだ10歳かそれくらいの時、ナノリアはアディノスに湖に落とされた。 上がろうとするのを木剣で頭を押さえられて溺れそうになる。 アディノスの取り巻き数人がナノリアを順番に小突きながら、大笑いしていた。 「ははっ! 実験だ。妖精の羽は、蝶と同じく水をはじくのか!」 「殿下、もっとしっかり沈めなくては! この不潔なところを洗わないと!」 「おう、洗え、もっとそっちを押さえろ!」 そんな風に水に無理やり押し戻され、生臭い水をしこたま飲んで、いよいよ意識が遠のきそうになった頃、よくやく飽きたようにつつくのをやめてくれた。 命からがら岸に上がったナノリアを見下ろして、誰かが声を上げる。 「うわ、羽の粉がおちたら色が変わるんだ」 「ほんとだ。こすってみよう」 とんでもないことを言い出した少年たちに、ナノリアは真っ青になってがたがたと震えた。 「い、いや……いや、や、やめて」 「おい暴れるな。そっち押さえろ」 「はい!」 「殿下、これなんかどうですか」 誰かがブラシを持ってきた。馬を洗う時に使う、固いブラシだった。 両手を抑えられたナノリアは目の前が真っ暗になる。 何とか逃れようと激しく暴れた。渾身の力で何人かを突き飛ばす。 「おい、ナノリア!!」 アディノスが憤怒の表情でナノリアの前に立ちふさがった。 ナノリアはどうしてか、反抗できなかった。アディノスを見ると一気に力が抜けていく。
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-23 อ่านเพิ่มเติม