目が覚めるとそこが別世界のように思う事ってあるだろうか。 それもはっきりと、夢うつつではなくて現実味を帯びた感覚がある場合。 例えば……異世界に転生した、とか? ありえない。 ただ寝ぼけているだけと言われた方が信憑性がある。 でも。 胸にぽっかりと穴が開いたみたい。 何かすごくすごく、大切なことを忘れているような……。 私は胸を押さえた。 泣いてたんだっけ。頬に涙の跡が濡れている。 不思議な感覚だ。私は確かにこの景色を知っている。毎日見る、いつもの私の部屋。 昔イギリスに旅行に行ったときに見たお城の中みたいな一室だ。 石の壁、豪華な壁絵、それから……大きなベッドに寝てる、私。 ——ん? イギリスって何だっけ。 そこまで考えてから、ふと思考が止まる。 喉が乾燥しているのに気付いた。 「こほ……ちょっと埃っぽいな」 この部屋はあまり衛生的ではないらしい。叩けば埃が出てきそうだし、実際目を凝らすとあちこちに埃や汚れも見える。 こんな汚いところで生活してたんだ、私。——できていたっけ? 広さはあるけれど、家具はほとんどない。 どうしようかと思って、視線を落とした。今はくすんだ白いワンピースを着ている。 今日はジャージじゃないんだ。——ジャージ? 違和感にまた目が留まった。 私の手、指……こんなに細くて白かったっけ。 それより、とにかく背中が痒い。たまらなく痒くて、ついぼりぼりと掻きむしってしまう。 蚊に噛まれたかな。やだ、不衛生だからダニとか? 触れた背中に、ごり、と物体の感触がある。何かが背中に、付いている? 怖くなって動きが止まる。——こぶ? 薄くて、何だかさらさらしていて……。 掻いた所からボロボロと何かが剥がれ落ちる感触があった。 「ひいっ……」 恐ろしくなって私は手を止めた。 そうだ、鏡! 部屋の中の鏡に走り寄る。 「これ……私? 私よね」 うん、私だ。 ナノリアの顔だ——ナノリア? 私の名前……。 可愛らしい見た目をしている。光の加減によっては青色にも見える白銀の髪はふわふわしていて、瞳は深い藍色。まだ幼い顔立ちをして、頼りなく華奢な身体をしている。 見慣れているようで見慣れない。 自分のようで、自分でないような。 何
Last Updated : 2026-08-17 Read more