企画会議の議事録が、社内共有フォルダに上がっているのをジョフィが見つけたのは、月曜の午後だった。 「伊依さん、ちょっとこれ見て」 スマホの画面に、議事録のPDFが表示される。伊依は在庫チェックの手を止め、目を通した。 「今話題のジュエリーブランド、Angelusとのコラボレーションを提案いたします」 発言者の欄には、沙織の名前が記されていた。 伊依は数秒、画面を凝視した。聞き間違いかと思い、もう一度読み返す。文字は変わらない。沙織が、Angelusとのコラボを企画会議で発言していた。 「……はい?」 声が思わず漏れた。ジョフィが笑いを含んだ声で続ける。 「議事録によると、結構反応良かったみたいだよ。部長も乗り気だったって」 「なんで」 「知らないよ。でも面白いことになりそう」 数日後、YOR宛に一通のメールが届いた。差出人は伊依の勤める会社の広報部だった。件名は「コラボレーションのご提案」。伊依は思わず苦笑した。自分の勤め先から、自分自身が経営するブランドへの提案が来るという奇妙な構図。 添付されていた企画書を開いた瞬間、伊依の表情が固まった。 タイトルページには、Angelusのロゴを模した稚拙なデザインが貼り付けられている。伊依が丁寧に作り込んだロゴタイプとは似ても似つかない、フォントを適当に組み合わせただけの代物だった。 ページをめくる。コンセプトの欄には、こう書かれていた。 「若い女性に人気の高級ジュエリーブランドとして、当社の新商品ラインとコラボし、ノベルティグッズとして展開する」 続くページには、想定される商品案が並んでいる。会社のロゴ入りキーホルダー、社名を刻印したストラップ、そして極めつけに、Angelusのモチーフを勝手に流用した安っぽいイラストの入った、ノベルティ用の紙製ブックカバー。 「これ、ノベルティって、無料配布ってこと?」 伊依は思わず声を上げた。 「そうみたい。しかも配布先、駅前のティッシュ配りと同じ扱いになってる」 ジョフィの声にも呆れが滲んでいた。伊依はページをさらにめくった。想定価格の欄
Last Updated : 2026-09-19 Read more