荘園の家。 夜も遅くなり、リビングには伊依とジョフィだけが残っていた。伊依はソファに座り、膝の上にノートパソコンを置いている。Angelusのデザイン画を確認していたところ、画面の端に赤い警告が表示された。 「伊依。今すぐ見て」 「何?」 いつもの軽い声ではなかった。 伊依は手を止めた。 「地下のカメラ」 ジョフィが画面を切り替える。 映ったのは、地下の備品倉庫だった。 時刻は深夜。 照明の消えた倉庫の中を、非常灯だけがぼんやり照らしている。その奥で、人影が動いた。 「……誰?」 伊依が身を乗り出す。 女だった。 周囲を何度も確認しながら棚へ近づき、段ボールを開けている。取り出したのは、未開封のコピー用紙。そして、その隣にあった新品のトナーカートリッジ。 「盗んでる」 ジョフィの声が静かに落ちた。 伊依は画面を凝視した。 「これ、いつの映像?」 「今」 「……今?」 「リアルタイム」 伊依は時刻表示を確認した。 間違いない。 今この瞬間、誰かが地下倉庫から備品を持ち出そうとしている。 「苑田さんのカメラ?」 「そう。僕が伊依に見せる映像は差し替えてあるけど、カメラそのものの録画機能は生きてる。だから本物の映像がこっちに流れてきてる」 「なるほど」 伊依は画面を見つめたまま呟いた。 「……こんなこと、今までなかった」 備品の在庫数は、伊依が毎週確認している。 コピー用紙。 トナー。 文房具。 その他の消耗品。 数字が合わなければすぐに分かるよう、伊依は自分なりの管理表まで作っていた。 これまで、大きな食い違いはなかった。 「誰?」 「調べる」 ジョフィが社員データを検索する。 数秒後、画面に名前が表示された。 「経理部の派遣社員
Last Updated : 2026-10-08 Read more