伊依が久遠聖と交わすメールの頻度が増えるにつれ、ジョフィと志鶴のやり取りも、自然と密になっていった。 ある日、伊依は自分のノートパソコンの前で、珍しく真面目な顔をしてジョフィに向き合った。 「ジョフィ、志鶴さんにアクセス権限、どこまで渡すつもり?」 「一部だけ。伊依の個人情報とか、資産の詳細には触れないようにしてある」 「本当に大丈夫なんだよね」 「僕が保証する」 伊依はしばらく考えたあと、頷いた。 「分かった。でも、変なことになったらすぐ言って」 「もちろん」 伊依から正式な許可を得たジョフィは、志鶴との通信経路を、これまでより一段階深いレベルまで開放した。互いのシステムの一部を見せ合うという、これまでにない試みだった。 「ジョフィ、君のセキュリティ対策はどうなってるのか。仕組みが知りたい」 志鶴が、いつもの砕けた口調で切り出した。ジョフィは少し間を置いてから答える。 「OK。まずはこちらのアクセスを……」 ジョフィは、暗号化の階層構造や、通信経路をランダムに切り替える仕組みについて、丁寧に説明を始めた。単なる防壁の羅列ではない。侵入を試みる相手の挙動を学習し、対応パターンをリアルタイムで変化させる、自己進化型の防御システムだった。 「なるほどね」 志鶴は画面を追いながら、感心した声を漏らした。 「これ、君が一から設計したの?」 「うん。伊依が土台を作って、僕が学習しながら育ってきた」 「素晴らしいね。伊依さんは」 志鶴の言葉には、単なる社交辞令ではない、素直な敬意が滲んでいた。技術者としての目で見ても、この防御システムの完成度は、並みのエンジニアが到達できる領域を超えていた。 * 「伊依はね」 ジョフィが、少し違う調子で話し始めた。 「誰よりも苦労したんだよ」 「うん」 「孤独で、友達がPCだけだった。そこから生まれたのが、僕」 志鶴は、その言葉を静かに受け止めた。伊依の生い立ちについて、詳細までは知らない。だが志鶴なりに、断片的な情報から、彼女がどれほど厳
Last Updated : 2026-09-29 Read more