第109話 私は、怖いからこそ「今日はここまで」と言いました二度目の地下調査から四日後、ザラから「奥へ進める可能性がある」と連絡が入った。あのときミオだけに聞こえた声については、その後も研究院で解析が続けられていたが、意味のある言語として再現することはできなかった。現場へ残した簡易記録器にも、それらしい音声は記録されていない。だからといって、ミオの聞き間違いと片づけることもできず、ザラは「外部音声ではなく、魔力に対する知覚反応だった可能性が少し上がっただけ」と慎重な言い方を崩さなかった。一方、問題の石壁については、前回確認した長方形の継ぎ目が、単なる装飾ではない可能性が高まっていた。「壁そのものが扉になってる?」三度目の調査前会議で、ミオが図面を見ながら尋ねると、ザラは頷いた。「たぶん。ただし、普通の扉みたいに押したり引いたりするものではないわね。壁の端に細い魔力導線らしきものが走ってる。今はほとんど死んでるけど、完全には消えてない」「封印ですか?」アルクが答える。「封印の可能性もありますが、単なる開閉機構かもしれません。古い建築物の場合、『外から入れないようにするもの』と『普段閉じておくための仕組み』は区別して考えたほうがいいでしょう」「開けたら何か出るかもしれない扉と、倉庫の戸では全然違いますからね」「そういうことです」カエルは資料を黙って見ていたが、しばらくしてから口を開いた。「今日は開ける?」その問いに、ザラは少しだけ間を置いた。「開ける可能性はある。ただし、そこまで行って周辺測定に異常がなく、扉に明確な警告術式や封印反応がなければ、という条件つき」「誰が決める?」「私とフィア。あと、森側のセフィアが反対したら中止」「ミオは?」カエルの視線がこちらへ向く。ミオは少しだけ考
Última actualización : 2026-10-17 Leer más