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第34話:落ち武者と揃いの指輪

last update publish date: 2026-09-25 23:59:45
帝国の都は、端毬より石が多かった。

都に構えられた、とある武家屋敷。荷車の陰から、月明かりに照らされたそれを見上げたとき、丹波算衛門は一度だけ鼻を鳴らした。彼は自ら落ち武者の恰好となり、商人の荷に紛れ、役人へ「北の内情を持っている」と言って自分を売り込んだ。

役人には境が落ちた話を披露したが、それはまだ門を通るための通行手形代わりに過ぎぬ。もっと重要な内容は、その後、目通りを願った帝国の軍師の屋敷で出す。

通された広間は静かだった。飾りは少ない。上段に座し、灯あかりを近くに置きながら、地図を睨みつけている男がいる。それが帝国の軍師――永井康夜だった。

目は細く、肩も細い。戦場より、盤の前にいる時間の方が長い男の体だ。算衛門が想像していた「元妻を捨てた軍師」と、顔立ちは近い。違うのは温度だった。怒りもない。歓迎もない。落ち武者を値踏みする目だけがあった。

「名を申せ」

「丹波算衛門と申す。かつては連合に与くみし、兵糧を預かっておった者です」

「かつて、か」

「は。今はどこにも属しておりませぬ」

康夜は地図から目を上げなかった。

「俺に売る話を持ってきたので
道中ヘルベチカ

※2026/9/27 15:12(JST)更新

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