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第35話:謀反人の名と帝国の声明

last update Date de publication: 2026-09-26 23:59:37
翌日。都の永井の屋敷は、夜でも灯あかりが消えなかった。

康夜は文机ふづくえに向かい、短い文ふみを書いていた。帝国の名で流す声明である。筆は速くないが、迷いがあるようには見えぬ。すぐに出さねばという切迫感もない、淡々とした速度だった。

書き終えた文を一度だけ読み上げる。聞き役は、下段に膝ひざをつく丹波算衛門だった。

「かつて帝国に仕えた女武者・奈世は、北へ走り謀反を働いた。織部信焔の妻となり、帝国と蛮族連合の緩衝地帯であった境の小城が落ちた戦いくさに、兵のひとりとして加担していたことがわかっている。奈世を捕え、都へ送るべし。殺してはならぬ」

算衛門は顔を上げた。“元妻”とは呼ばず、家名もない。そして“殺してはならぬ”とある。

「永井殿、そのように書かれた意図は――」

「あの女子おなごを俺に追放された元妻のままにしておけば、いきなり殺されるやもしれぬ。帝国側の者か、或あるいは帝国に寝返るようなお前のような者からな」

“お前のような者”と言われ、算衛門は青ざめた。

「どうした、具合でも悪いのか」

康夜が真顔で尋ねてくる。松山の城で“首を奪えば良い”と
道中ヘルベチカ

※2026/9/27 16:26(JST)更新

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