シャムルに食料調達の話をした、しばらく後。食料は向こうからやってきた。「リンデル王国の遠征騎士団、数はざっと三百ってとこだなぁ」 使い魔が送ってくる映像を魔鏡で確認しながら、ランドールが説明する。「久し振りに本気できた感じだねぇ」 ランドールが、カラカラと笑った。「王国の三皇子が揃って堕ちて焦ったのでしょう。取り戻しに来たか、殺しに来たか」 シャムルが難しい顔で魔鏡を覗く。「いまさら取り戻すっても、シャムルはじめ全員、魔族堕ちしているけどな」 ランドールが言う通り、今更だ。 本人たちが望んで魔族に転嫁した以上、人の世に帰りたがる者はいないだろう。シャムルに至っては魔王の血の結晶で生き返ったから、望んでも人間には戻れない。「リンデル王国は魔国に隣接する大国故、防波堤のような役割を担う。勇者が続々と魔族に変わる状況を、見過ごせなかったのでしょうね」 シャムルの顔が深刻だ。「んなもん、今更だろ。人間は大概食料だが、有能な人間は昔から魔族になってたぜ」 ランドールが何でもない事のように語る。 シャムルが魔王に向かい、首を垂れた。「申し訳ございません。私が側近として早くに手を打っていれば、このような事態には」 シャムルが、難しく顔を顰める。魔王はカラカラと笑った。「全然だよ。かえって、良かったよ。食料が向こうから来てくれたんだから。手間が省けたよね」 魔王的には、ラッキーだ。人の国に出向く面倒を考えたら、ずっと楽だ。それに魔王は、ワクワクしていた。「ところでさ、遠征騎士団の中で一番強いのって、どの子?」 ノリノリで魔鏡を指さす。 シャムルがおずおずと覗きこんだ。何とも気乗りしない様子だ。「恐らく、団長を務める騎士のスカラ、でしょうか。私たち兄弟の従兄弟です」 シャムルが先頭を指さした。騎士団の先陣で指揮を執る青年は、屈強な筋肉に端正な顔をしている。ガイルとヘルを足して二で割ったような風貌だ。
Last Updated : 2026-08-27 Read more