ベッドの上にシャムルを寝かせる。その上から覆い被さるようにして、魔王はシャムルを見下ろした。「魔王様……」「名を呼んでみよ」 シャムルの目が戸惑った。魔王が真名を好まないのを知っているからだ。「我が名は、ヴェルヴァラントだ」「……ヴェルヴァラント様」 シャムルの額に口付けて、神力を流し込んだ。普段は秘めている、闇の神力だ。シャムルを天使化させないために使ったあれすらが、数百年振りだった。(氷の瞳に、我を映しておくために) 見下ろすシャムルの目元を、そっと撫でた。「今のままでは、シャムルの肉体は崩れる」 シャムルの顔が、ビクンと強張った。自分でも気が付いていたのだろう。衝撃より覚悟の顔付だ。「また無理にハネシアに神力を流されれば、今度こそ危うい」 見上げていたシャムルの目が、伏した。「私は、どうすれば……ヴェルヴァラント様のお役に立って、御側にいられますか?」 シャムルが意志の籠った強い目を上げた。(最初からずっと、シャムルは同じ目をしていた) 前髪を指で払い、瞼をなぞる。「ヴェル、でいい」 撫でた瞼に口付けて神力を流し込んだ。(自分の身が危ういと言われても、我の役に立とうとする。心臓を捨ててまで、選ばれようとする) シャムルの行動は一貫している。同じ場面になれば、迷わず同じ行動をとる。(それでは、シャムルが壊れる) 想像するだけで、魔王の胸が痛く冷える。 反対側の瞼を撫でて、同じように口付け、神力を流す。シャムルの顔が火照ってきた。「我の神力は、熱いか?」「温かくて、心地良いです」 うっとり目を細めてシャムルが魔王の手を握った。いつもは冷たい指先が今は温かい。「ならば相性は、悪くない」 シャムルの手を握り返す。指を伝う熱が、魔王の心を温めた。同じ温度になった手を血の結晶に重ねた。
Last Updated : 2026-09-06 Read more