風の神殿の正門前には、朝日を浴びて整列する十数名の神殿騎士たちの姿があった。 国境付近で発生した魔物討伐のため、数日間の遠征へと向かう部隊である。 シルフィは『風の柱』として、出立する彼らを見送るために回廊に立っていた。 「行ってまいります、我が女神」 部隊の先頭に立つユーロスが、シルフィの御前で優雅に片膝をついた。 「この命に代えても速やかに任務を完遂し、あなたを生涯お護りするに相応しい、より強き男となって帰還いたします! ですから、戻りましたら結婚を――」 「しません。……ですが――」 いつものように即答でピシャリと遮った後、シルフィはふわりと慈愛に満ちた、そして彼への確かな“敬意”を込めた微笑みを浮かべた。 「油断せず、どうか無事に帰ってきなさい。貴方たちは我が神殿が誇る、立派な騎士なのですから」 「ッ……!!」 シルフィからの真っ直ぐな労いの言葉に、ユーロスの精悍な顔面が一瞬で限界まで甘く蕩けた。 「ああっ……! シルフィ様が俺の帰りを待っていてくださる……ッ! このユーロス、愛の力で魔物の群れなど一息に殲滅してみせます!!」 「はしゃがないで、隊の和を乱さぬようにしなさい」 呆れ顔で送り出すシルフィを背に、ユーロスは背中から花を咲かせんばかりの勢いで、意気揚々と出立していった。 ――それから、三日が過ぎた。 ユーロスが不在の神殿は、相変わらず静かで平和だった。 午後。自室の机で教区からの書類に目を通していたシルフィの元へ、柱護衛代理として残った副団長が数枚の羊皮紙を持って訪れた。 「シルフィ様。遠征部隊の書記見習い――ユーロスから、定期報告書が届きました。伝令鷹が先ほど」 「ご苦労様です。見せてください」
Zuletzt aktualisiert : 2026-08-23 Mehr lesen