秋風が回廊を抜け、カサリと乾いた落ち葉の音を響かせる。 シルフィは抱えた書類に視線を落としつつも、その実、文字など全く頭に入っていなかった。 ここ数日、どうにも調子が狂っている。 ユーロスが淹れてくれた紅茶の香り。 肩に掛けられたひざ掛けの温もり。 彼が自分に向ける、静かで深い熱を帯びた瞳。 それらを思い出すたびに胸の奥が甘く疼くのを、「上司として、部下の成長が喜ばしいだけ」と、必死に強引な言い訳で蓋をして歩いていた。 ふと、修練場裏のアーチの陰に差し掛かった時。 微かな話し声が聞こえ、シルフィの足が自然と止まった。 柱の陰から視線を向けると、そこには純白の騎士服を着たユーロスと、先日の女性騎士――サティの姿があった。 落ち着いた物腰でありながら、若さあふれるサティは、ユーロスを真っ直ぐに見つめていた。 「ユーロス。ケイロンの件から、あなた……ずっと一人で無理をしているように見えたわ」 「……ご心配をおかけしました。でも、もう大丈夫です」 ユーロスが穏やかに答えるが、サティは静かに首を振り、彼の手元へとそっと自身の指先を重ねた。 「……ずっと分かってたわ。あなたの目が、誰を見ていたのか」 「……あの、俺は……」 「それでも、言わせて――私、あなたのことが好きなの。たとえ今すぐ答えをもらえなくても……あなたの隣に立ちたいの」 それは、同年代の女性からの、静かで、誤魔化しようのない真っ直ぐな想いの吐露だった。 その言葉が鼓膜を打った瞬間、シルフィの胸の奥から、スッとすべての温度が消え去った。 激しい動悸や、息苦しさではない。 ただ、立っていたはずの石畳がふいに崩れ落ちたような、ひどく静かで、指
Zuletzt aktualisiert : 2026-08-27 Mehr lesen