Semua Bab 離婚?上等!――クズ夫と裏切った親友を捨てた私は、世界一の外科医になって御曹司に溺愛されます!: Bab 11 - Bab 20

60 Bab

11.汚された服

 その数日後。 朝倉倫子は、デザイナーのジュンコが経営する店に呼び出されていた。「白とターコイズブルーのドレス。あのまま何度も着る気でしょう。せめて、ベルトやスカーフ、ジレで変化を出してちょうだい」「あのドレス、とても素敵だったわ」「そうでしょう? もう、細かいことはイーサンに伝えておくからいいわよ」 ジュンコは諦めた顔になった。そして指示を出されたアシスタントが、突っ込みを入れる。「それって、イーサンさんをこき使いすぎではぁ~?」 倫子は反論できなかった。衣装の管理など、医療コーディネーターの仕事ではない。「確かに、もう少し身なりに気を遣っていただきたいと思いますが……マイ・フェア・レディも悪くないですよ」 イーサン・タンがしれっとそんなことを言う。「もう、冗談はやめて!」 倫子は顔を真っ赤にした。 ジュンコは接客をスタッフに任せ、倫子たちを応接セットに案内した。アシスタントが紅茶を用意する。「ところで。見てよ、これ」 ジュンコが差し示したのは、先日の取材で倫子が着た衣装だった。 珈琲の染みが、はっきりと残っている。「特殊クリーニングでも取りきれなかったわ。リンちゃん先生に着せるって言うから貸したのに」「ジュンコさん、ごめんなさい。桐生美琴が同席していて、また私に濡れ衣を着せようとしてきたのよ」「あの女、まだそんなことをしているの?」 ジュンコの眉が吊り上がる。「もう、いい加減にしてほしいわね。白木関係の人間って、どうしてこう傲慢で横柄なのかしら」「ジュンコ先生ぇ。妙なことが、SNSに載ってますぅ」 アシスタントが、スマホを片手に駆け寄ってきた。「なに?」 差し出された画面には、美琴の写真。 そして、彼女が着ている服には、珈琲の染みがついていた。 日付を見ると、あの取材の日に投稿している。桐生智也が一緒にいたから、彼が写真を撮ったのだろう。『今日、本当に悲しいことがありました。 仲直りしたいと思っていただけなのに、どうしてこんなことになるんでしょう。 私が何かしちゃったのかな…… 大切な服まで汚されてしまって、悲しいです。 でも、もうこれ以上、誰かを責めたりしたくありません。 私にも悪いところがあったのかもしれないから。 ただ、
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-29
Baca selengkapnya

12.情報戦

 桐生美琴は、悔しくて頭がどうにかなりそうだった。 先日、朝倉倫子が雑誌の取材を受けるのを邪魔しに行った。 ところが、何もかもうまくいかなかった。 倫子に珈琲をかけられたと、冤罪をかぶせてやろうと考えた。だが、うまくいかなかった。 自分が悪くなくてもすぐに謝っていた倫子は、どこにいってしまったのだろう。 しかも、腹いせに、そのことを投稿したSNSまで削除しろと言われた。 ――どうしてよ。 倫子が帰国してから、何かが噛みあわない。 倫子に謝罪? 嫌よ。 あいつが悪いんだもの。 だけど、雑誌の編集長をこれ以上怒らせるわけにもいかない。 美琴は大きな音で音楽を流しながら、SNSの文章を考えた。『先日の件で、心配してくださった皆さんへ わざと珈琲をかけたわけじゃないって、謝っていただきました そっか そうだよね そんなことする人なんて、いるわけないよね 私もかなりショックだったから、悪いほうに考えすぎちゃったみたいです もう大丈夫です 心配してくれた皆さん、本当にありがとう これからは、もっと人を信じられるようになりたいな 心配かけちゃって、ごめんなさい』 美琴は苛立ちを押さえながら、文章を投稿した。 これでいい。 ここまで譲れば、文句はないだろう。 何かあっても父親が解決してくれた。だから美琴は、人に頭を下げずに生きてきたのだ。 それなのに、どうして自分が謝らなければならないのか。「ああ、嫌になっちゃう」 スマートフォンをテーブルに乱暴に置き、美琴は吐き捨てるように言った。「次のテレビの仕事のことでも考えましょう。誰か、イケメンは来るのかしらね」 その直後だった。 スマートフォンが鳴った。「桐生先生? あれのどこが謝罪なんですか!」 雑誌の編集長の怒鳴り声が響いた。「余計に怒りに火を注ぎますよ。こちらで謝罪文を用意します。それをSNSにアップしてください」「嫌よ。何を言っているの? 私に指図しないで」「そうですか。それでは、汚した衣装の請求書だけ送ります」「え? どういうこと?」「申し訳ありませんが、あなたが起こすトラブルと、雑誌の売上げを比べたら、お話になりません。もう、ご縁はこれきりということで」「待ちなさいよ!」 しかし、電話は切れた。 美琴
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-29
Baca selengkapnya

13.患者との対面

 朝倉倫子は、患者の病室へと通された。 大学病院の中でも、特別な患者が入るフロアだ。ホテルのような内装になっている。 部屋に入ると、患者は応接セットのソファに座っていた。「無理を言って、ごめんなさい。世界的に有名なお医者様に、一度お会いしたかったの」「いえ。手術前は、何かと不安になりますよね」 倫子は向かいに腰を下ろした。 彼女の顔に、痛々しい傷跡は残っていない。だが、ときどき顔の一部が引きつっている。 失われた顔の動きを再建することが、今回の目的だ。「私の婚約者が、無理を言って先生に依頼したそうですね」「大丈夫ですよ。私が所属する国際医療グループに正式な依頼があり、上層部が受諾したのですから」「でも、王族の権利を振りかざしたのでは?」「条件が不当でしたら、断ります。心配なさらないで」「それなら、いいのですけれど」 どうやら彼女は、手術そのものよりも、婚約者について謝りたかったらしい。「王子様に愛されるのも、大変ですね」「あ、愛……? どうなのでしょう」 患者は照れたように笑った。 彼女の婚約者は、レアアースの産出国として知られる国の国家元首の息子だ。「どうやって、お二人は知り合ったのですか?」「日本で開催される漫画のイベントです。父に頼まれて、私が案内しました」 患者の表情が当時を思い出したのか、明るくなる。「彼の国の公用語は英語だから、普通に会話ができて。それで意気投合したの。いわゆるオタク友達ね」「素敵ですね」「それで、彼の国に招かれて……彼と結婚できると思っていた女性に、襲われたんです」 患者の顔が曇る。 当然、現地で治療された。帰国した彼女は、大学病院で二度目の手術を受け、皮膚や組織は再建された。「笑おうとしても、思うように動かないんです。そうしたら、婚約者が、いい医師を知っているって」 患者は俯いた。「彼は、とてもいい人です。でも……私が恋をしているかは、まだ分からなくて」「……」「そんな状態で、周囲から敵意を向けられるのが怖い。『愛していれば何でも乗り越えられる』なんて、思えない。でも、周囲の期待があるから、簡単には断れません」 その言葉に、倫子は自分の過去を思い出した。「私は、望まれない結婚をしたことがあるわ」「先生が?」「ええ。私の場合は、結婚することになった
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-30
Baca selengkapnya

14.巻き込まれる

 大学病院から帰るときには、夕方になっていた。「思いがけず、長くなっちゃった。待たせてごめんね」 朝倉倫子は、ボディガードも兼ねているイーサン・タンに謝った。「いえ。患者の心のケアも必要なことでしょう」 大学病院に近いホテルに泊まっているので、歩きながら帰ることにした。「夕飯は何を食べようか? イーサンは何がいい?」「……できたらホテルに戻って、中のレストランがいいです」「食べ物の種類じゃなく、場所なの?」 倫子は呆れたような声を出した。食べ物への関心が低いのは、人生を損していると思うのだ。 その時だった。 すごいスピードで走ってきた車が、急ブレーキを掛けて止まった。 数人の男たちがバタバタと降りてきて、倫子たちを囲んだ。「朝倉倫子だな?」 不躾な質問に対し、イーサンが倫子の前に立つ。「お前たちは何者だ」 男たちがそれに答えることはない。「ちょっと一緒に来てもらおうか」 正面に立つ男の言葉を受け、部下らしき男が倫子の腕を掴もうとした。しかも、傷跡がある右手を。 倫子は、反射的に右腕を胸元に引き寄せた。 イーサンは胸ポケットに挿していたペン型の道具を、その男の腕に当てた。ビリビリと電流が流れ、その男は腕を押さえてうずくまった。「リンに触るな!」「やりやがったな、この野郎!」 正面の男が自分の背広の胸元に手を入れる。イーサンはそこに蹴りを入れた。 男の指は、胸元に隠した武器とイーサンの靴裏に挟まれた。男は激痛に呻いた。「あ、兄貴。この野郎、何しやがる」 他の男がイーサンに向かって行く。 倫子はバッグにつけていた防犯ブザーを思い出し、ピンを引き抜いた。 プワーン、プワーン。 耳をつんざくような甲高い音が響き渡る。 イーサンは攻撃を腕で防いだり、身体を斜めにして避けたり、多勢に無勢だがよく闘っていた。 だが、ついに男たちの一人が、イーサンの頬を殴った。「イーサン!」 倫子が叫んだとき、近くのビルから警備員が駆けつけた。「どうしましたか?」 男たちは車に駆け込み、逃げていった。「あ、ありがとうございます。イーサン大丈夫?」「はい。一発もらってしまいました。面目ない」 警備員にお礼を言って、倫子たちはホテルへ急いだ。 街灯が灯り、暗くなり始めている。「短い距離だけど、タ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-31
Baca selengkapnya

15.絡み合う思惑

「狙われたのは、私だというの? どういうこと?」 朝倉倫子は戸惑いを隠せなかった。 先ほど数人の男に囲まれ、イーサン・タンが撃退してくれた。 殴られたイーサンの頬は張れて、赤くなっている。「ドクター・リンが彼女の手術をしなければ、結婚を阻止できると考えたようです」 イーサンの言葉に、倫子は息を呑んだ。「彼女を襲撃させた女性が、野放しだったの?」 女性の顔を傷つけるような人物は、捕まったとばかり思っていた。「実行犯の使用人がすべての罪を被ったので、追究しきれなかったようです。王族との結婚を望めるくらいの、権力者ですから。 これで追い詰めることができるかもしれないと、王子派の人たちは喜んでいますよ」 イーサンは、マフィアのボスを思わせる凄みのある笑顔を浮かべた。「では、私は部屋に戻ります。鍵をかけて、ゆっくり休んでいてくださいね」 そう言って、イーサンはルームサービスのワゴンを廊下へ出してから、自分の部屋へ戻っていった。 一人になった途端、倫子はブルリと震えた。 自分が狙われたなんて――。 もし、イーサンがいなかったら? 手術が終わるまで監禁されていたのかもしれない。 あるいは右手に怪我を負わせられて、執刀できなかったかもしれない。 倫子は気を紛らわせたくて、スマートフォンを手に取った。 心細い。 少し悩んだが、三枝哲郎にメッセージを送ることにした。故郷の高校の同級生で、右手のリハビリを担当してくれた作業療法士だ。『哲郎君って、漫画に詳しかったっけ?』 すぐに既読になり、返事が返ってきた。『まあ、嗜む程度?』『そっか。漫画の大きなイベントに行ったことある?』『ない。行ってみたいけど、盆と暮れは本家でご奉仕中』 彼の親戚関係は、なかなか大変らしい。『来週、手術だろ? その前に倫子の手の具合を見に、土日でそっちに行ってやろうか』 その一文を読んだ途端に、今日、襲われた恐怖が蘇ってきた。 もし、右手を傷つけられていたら。 外科医としての未来が、再び奪われていたかもしれない。『え~、大丈夫だよ。リハビリは続けているから、心配ご無用』 そう打ちながら、涙がこぼれた。 電話でなくてよかった。 声を聞いたら、きっとしゃべれなくなってしまう。   
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-31
Baca selengkapnya

16.倫子、主張する

 空港から大学病院へ向かうタクシーの中で、イーサン・タンは山本准教授に連絡を入れた。 来日したばかりのパク・ミンジェは、「一休みもしないで仕事かよ」と苦笑いした。「日本のうなぎが食べたい。韓国のチャンオと調理法が違うらしいじゃん」「私はそっちを知らないけど……ホテルの和食レストランで食べられると思うわ」 朝倉倫子はメニューを思い出しながら答えた。「違うってば。街の中で、地元の人しか行かないような店に連れて行ってよ」「ええ? 私は地方出身だし、都心に行きつけのうなぎ屋なんてないわ」 倫子は苦笑した。本当に、あの五年間の結婚生活は、何だったのだろうと。「都心でセレブの奥さんやってたんじゃないの?」「……ほぼ家政婦みたいなものだったわ。愛人は連れて行ってたかもしれないけど」 桐生美琴は、あの当時は愛人の立場で、白木美琴という名前だった。「ほお。すごい話が出て来たな。ドクター・リンも濃い人生を送ってるねぇ」 二人の会話に、イーサンは加わってこなかった。 病院に到着して、すぐに関係者との話し合いが始まった。 小さな会議室に、山本准教授と牧野医師が並んで待っていた。「主治医は山本准教授ですが、今回の手術で執刀するのは私です」 倫子は、はっきりと言った。「第二助手の代わりは牧野医師ではなく、このドクター・パク・ミンジェにしてください」 大学病院側は、困ったような顔をした。「いや、しかし……。医療法人白徳会からも、牧野医師を入れるよう強い要請が来ているのです」「白徳会が一大勢力なのはわかりますが、これは失敗できない手術です」 倫子は山本准教授の目をまっすぐ見た。「自分の名誉ばかりを考えている人に任せるのは、不安ではありませんか」「……」 誰も反論しなかった。 患者は、他国の王子と婚約している。その顔と人生を左右する手術だ。万が一にも失敗は許されない。 そこへ、パクが口を挟んだ。「元々の第二助手は、どんな状況で怪我をされたのですか?」「……突然、男たちに囲まれて、殴る蹴るの暴行を受けたそうだ」 山本准教授が答える。「その人に面会することはできますか?」「今は治療中ですが……」「そうですか」 つまり、面会できないほどの怪我ということだ、パクは少し考え
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-31
Baca selengkapnya

17.白木一族

「素敵なご夫婦ですね」 桐生智也は、自宅のリビングで経済誌のインタビューを受けていた。 妻の美琴が、笑顔で珈琲を運んでくる。「まあ、お恥ずかしいですわ。私たち、大学の同級生なんですよ」「では、学生時代から一途に?」「……いえ。私は一度別の人と結婚したんですが、うまくいきませんで」 智也は少し首を傾げ、苦笑した。「やっぱり、運命には逆らえないものですね」 と、爽やかな笑顔で、美琴と見つめ合う。 傍から見れば、誰もが羨む夫婦だろう。 綺麗に整えられたリビング。 美しく、医師として成功した妻。 IT企業の二代目社長として、注目される青年実業家。 だが、普段は十歳になる息子の直也が、あちこちに物を散らかしている。まだ子供なのだから仕方がない。 それでも智也は、ふと思う。 ――倫子がいた頃のほうが、居心地のいい家だった。「ハウスクリーニングの従業員の質が落ちたんじゃない?」 ある日、美琴が顔をしかめながら言った。 もちろん、業者は倫子がいた頃と同じだ。 意識してしまうと、それ以外にも気になった。 食事の準備。洗濯。子どもの行事。細々とした家の雑用。 倫子がいなくなっても、変わらずに続いている。だが、『以前はこうではなかった』と小さな不満が積み重なる。「暇な専業主婦と、忙しい医者を一緒にしないでよ」 美琴は自分で文句を言い出しておいて、改善する気はないようだ。「私の実家みたいに、住み込みのお手伝いさんを雇えないの?」「今どき、そんな人はいないよ。みんな自分の人生を楽しみたいんだから」「ふっ。そうね。私の実家が特別なのよね」 美琴は満足げに笑った。 そんな美琴の様子を見て、智也は胸の奥に小さな違和感を覚える。 父親が会社を大きくしただけの成金。そんな陰口を叩かれていた桐生家。 けれど、美琴の家は代々続く医者の家系だ。昔から、自分の家が裕福であることを隠そうとはしなかった。 大学時代と変わらない。美しく、華やかで、人の目を惹きつける女。 そんな美琴と恋人になったとき、とても気分がよかった。 田舎者だった朝倉倫子にも優しく、目を潤ませながら自分を頼ってくる美琴。 男心をくすぐられたし、周囲からの嫉妬も心地よかった。 だが、今は――? 美琴が
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-01
Baca selengkapnya

18.術前カンファレンス

 金曜日の午後。 手術を数日後に控え、術前カンファレンスが始まった。 大型モニターには、患者のCT画像が映し出されている。 手術に向けて、最終的な確認と情報共有が行われる。 担当医や執刀医はもちろん、麻酔科医や看護師も揃っていた。 誰がどこを担当するか、手術時間や麻酔計画、輸血の準備など、話し合うことはたくさんある。 後方には、研修医や医学生が数人座っている。その中に紛れるように、牧野医師の姿もあった。 イーサン・タンがそれに気づき、山本准教授に小声で問いかけた。 山本准教授は少し緊張した面持ちで、答えた。「彼を手術に参加させないと約束します。だが意欲的だし、腕は確かなんだ。勉強の機会は与えてやりたい」 朝倉倫子は、その言葉に反論はしなかった。これ以上山本准教授の面子を潰すのも、よくないだろう。 会議は始まり、画像や看護記録を確認しながら、それぞれが知識を出し合う。「理論上は可能です。しかし、この患者の場合、血管の損傷が――」「その方法では、術後に癒着の危険性が増えませんか」「では、こちらは?」「時間がかかりすぎる。麻酔のリスクが上がります」 理論上可能か、実際に実現できるのかが、せめぎ合う。 パク・ミンジェには日本語から英語への通訳がついたが、専門用語はイーサンがフォローする。 パクが英語で発言するので、日本語と英語が混じり合ったまま話し合いは進んでいった。 牧野医師は、「桐生美琴の密命で倫子と対立しなければ、目の前の白熱した話し合いに参加できたのに」と唇を噛んだ。 白木総一郎は倫子を取り入れようとしているのだから、先にそちらと接触していたら――そんな後悔が胸をよぎる。 牧野医師の中に白木家に対する不信感が、小さく芽生えた。   *** カンファレンスは日が傾く頃に、ようやく終わった。「さあ、ドクター・リン。うなぎを食べに連れて行ってくれ」 パク・ミンジェはそう言いながら立ち上がった。「ちょっと待って。私は今の会議を自分の中でまとめたいの」「あの、そういうことでしたら、ご案内します」 牧野医師が、パクに話しかけた。 パクは牧野をまじまじと観察する。「……君は、僕のことが嫌いなんじゃないの?」「第二助手になれなかったのは悔しいですが……先ほどの話し合いで、自分はまだまだだと思い知りました。それに、老舗のう
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-01
Baca selengkapnya

19.新たなターゲット

 牧野医師はパク・ミンジェと二人分のうな重を注文をした。「ドクター・パクはお酒が好きですか?」「好きだね。日本の透明なお酒を飲みたい」「日本酒ですね。キリッとしたのとか、甘いのとか、米っぽいのとか……好みってあります?」「ドクター・マキノに任せるよ」 少し緊張しながら、牧野は店主に日本酒を頼んだ。 先ほど聴講したカンファレンスで、パクが優秀な医師だと言うことはよくわかった。 ほどなくして、肝吸いが出てきた。「へえ。透明なスープだ。上品な出汁……あ、中に入っている具は苦い」 パクは眉を寄せた。「うなぎの肝臓です。先に言えば良かったですね。苦いのは苦手でしたか?」 「いや。お酒に合うね」「よかった。その台詞が出ると言うことは、相当に酒飲みですね?」 どちらからともなく、ふふっと笑いが起きた。緊張が解け、互いに心の距離が近くなる。 医師として、ひとりの人間として、パクともっと話してみたいと牧野は思った。 ほんの少し、白木家からの命令を脇に置いて……。 もっとも、朝倉倫子が誘いに乗ってくれなかったことで、すでに任務は失敗しているのだ。 ガラガラッ。 店の引き戸が開いた。「こんなお店を選んだの?」 入ってきた女の声に、牧野の肩が強張った。 桐生美琴。白木家のお嬢さん。 店内を見回す美琴の顔には、あからさまな不満が浮かんでいた。 大将の眉が、わずかに上がる。「初めまして。桐生美琴を言います。同じ医師ですから、仲良くしてほしいわ」「パク・ミンジェです。ドクター・キリュウの専門は?」 パクが尋ねた。「美琴でいいですよ。消化器外科です。日本では大腸がんの患者さんも多いでしょう。一人でも多くの人を救いたくて」「へー、立派だね」 パクにそう言われて、美琴はおしぼりで手を拭きながら微笑んだ。「あの、美琴さんは何を召し上がりますか?」 牧野は美琴に尋ねた。「量が食べられないようなら、うな丼の方がいいかもしれません。僕たちはがっつり食べたいのでうな重で。うなぎも二枚に増やしたんですけど――」「えー、頼んでないの? 気が効かないなぁ」 美琴は、牧野の説明を遮った。「……すみません」 そこに、ちょうど二人前のうな重が届いた。「お待ちどうさま」「じゃあ、私はこれでいいわ」 美琴は、ためらうことなく牧野の
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-02
Baca selengkapnya

20.面倒くさがりの倫子

「ドクター・リン。ドクター・パクが戻って来たようですよ」 イーサン・タンは朝倉倫子にカモミールティーを出しながら、そう言った。「ずいぶん遅くまで食事していたのね。念願のうなぎで盛り上がったのかしら」 倫子はパソコンから顔を上げ、伸びをした。 イーサンはスマートフォンを見ながら、眉をひそめる。「……いえ。桐生美琴が乱入して大変だったようです。これから話を聞きますか?」「美琴が? なんでそうなるの?」 イーサンがスマートフォンで返事をすると、しばらくしてドアがノックされた。「こんな時間に女性の部屋に入るなんて、ドキドキするね」 パク・ミンジェから酒の匂いが漂ってくる。「僕が日本語をしゃべれないと思って、油断していたみたい。日常会話なら、まあまあ理解できるんだけどね」 イーサン・タンはパクに生姜湯を入れた。「ありがとう。明日は酔い覚ましのスープが飲みたいなぁ」「新宿のコリアンタウンに行けば飲めるんじゃない? 電車で行けるわよ」「ドクター・リンは作ってくれないの?」 イーサンに睨まれて、パクは両手を挙げた。「冗談の通じない男だなぁ。さて、情報を共有しようか」 そう言ってパクは、美琴と牧野医師の会話を聞かせてくれた。 美琴は父親から、倫子を取り込むよう命じられているらしい。「再生の魔術師」に近づき、医療法人白徳会の勢力を広げたい。 だが、彼女は、倫子に頭を下げたくない。 そこで、「再生の魔術師」が誰なのかわからない状況を利用して、パクをその人物に仕立て上げようとしている。 牧野は分家の立場で、本家の白木家には逆らえない。「ドクター・キリュウはドラマの悪役みたいな女性だね。ドクター・リンとは三角関係だったの?」 パクは生姜湯を一口飲み、「このテ・ハリアはインスタントか」と呟いた。「プライベートなことはあまり話したくないんだけど……。巻き込んでごめんなさいね」「いや。面白いからいいよ。仕返しはしないの? 復讐しないと舐められて、また利用されるよ」 パクは、ニヤッと笑った。「ちょっと待って、ドクター・パク。私も悔しいという気持ちはあるわよ。だけど……」 倫子が口ごもる。「ドクター・リンは『復讐してやる』と燃える日もありますが、『そんなことをしていいのか』と弱気になる日も
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-03
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status