その数日後。 朝倉倫子は、デザイナーのジュンコが経営する店に呼び出されていた。「白とターコイズブルーのドレス。あのまま何度も着る気でしょう。せめて、ベルトやスカーフ、ジレで変化を出してちょうだい」「あのドレス、とても素敵だったわ」「そうでしょう? もう、細かいことはイーサンに伝えておくからいいわよ」 ジュンコは諦めた顔になった。そして指示を出されたアシスタントが、突っ込みを入れる。「それって、イーサンさんをこき使いすぎではぁ~?」 倫子は反論できなかった。衣装の管理など、医療コーディネーターの仕事ではない。「確かに、もう少し身なりに気を遣っていただきたいと思いますが……マイ・フェア・レディも悪くないですよ」 イーサン・タンがしれっとそんなことを言う。「もう、冗談はやめて!」 倫子は顔を真っ赤にした。 ジュンコは接客をスタッフに任せ、倫子たちを応接セットに案内した。アシスタントが紅茶を用意する。「ところで。見てよ、これ」 ジュンコが差し示したのは、先日の取材で倫子が着た衣装だった。 珈琲の染みが、はっきりと残っている。「特殊クリーニングでも取りきれなかったわ。リンちゃん先生に着せるって言うから貸したのに」「ジュンコさん、ごめんなさい。桐生美琴が同席していて、また私に濡れ衣を着せようとしてきたのよ」「あの女、まだそんなことをしているの?」 ジュンコの眉が吊り上がる。「もう、いい加減にしてほしいわね。白木関係の人間って、どうしてこう傲慢で横柄なのかしら」「ジュンコ先生ぇ。妙なことが、SNSに載ってますぅ」 アシスタントが、スマホを片手に駆け寄ってきた。「なに?」 差し出された画面には、美琴の写真。 そして、彼女が着ている服には、珈琲の染みがついていた。 日付を見ると、あの取材の日に投稿している。桐生智也が一緒にいたから、彼が写真を撮ったのだろう。『今日、本当に悲しいことがありました。 仲直りしたいと思っていただけなのに、どうしてこんなことになるんでしょう。 私が何かしちゃったのかな…… 大切な服まで汚されてしまって、悲しいです。 でも、もうこれ以上、誰かを責めたりしたくありません。 私にも悪いところがあったのかもしれないから。 ただ、
Terakhir Diperbarui : 2026-08-29 Baca selengkapnya