まず、山本准教授にネットニュースのことを伝えた方がいい。 朝倉倫子は自分で謝ると申し出たが、イーサン・タンは自分の仕事だと譲らなかった。「山本准教授。休日の朝早くから申し訳ありません。推測ですが、手術への妨害工作ではないかと」『そんな……まさか、牧野君が?』「現時点では不明です。ただ、マスコミの取材が山本准教授に行くかもしれません」『火曜日が手術だというのに……』「もし騒動が収まらなければ、ドクター・パク・ミンジェが執刀できます。朝倉倫子を外せば、丸く収まる可能性はあります」 電話の向こうから、ため息が聞こえた。「待って、イーサン! 手術は予定通り行います。私がここで降りたら、相手の思う壺だわ」 倫子は、先日顔を合わせた患者を思い浮かべた。「患者さんに、『ネットで叩かれたから別の医師に変更する』なんて言えないわ」 イーサンが目を丸くする。『聞こえていました。王族からご指名を受けたのは朝倉先生です。騒がれるようなら、前日から病院に泊まっていただけばいい』「え……?」 てっきり迷惑だと言われると思っていた倫子は、間の抜けた声を出した。『病院の外で何を騒がれても、警備をしっかりすれば大丈夫です。 それより、王族のことが漏れたことの方が問題ですね』 思わぬ展開に、倫子は胸が熱くなった。 その電話が終わると、イーサンはルームサービスで中華粥を頼んだ。「食欲がなくても、食べてください」「三人分?」「ドクター・パクを呼びましょう。おそらく、まだ酒が抜けていないと思いますよ」 イーサンがホテルの電話でパクに連絡した。 パクを待っていると、倫子のスマートフォンが鳴った。『ホテルのロビーに着いた。一緒にモーニング食べないか?』「え、哲郎? ロビーにいるの? なんで?」「……では、迎えに行ってきます」 そう言って、イーサンは部屋を出ていった。 しばらくして、三枝哲郎がホテルのベーカリーで買ったパンを抱えて登場した。「夜行バスで来たんだよ」 倫子の部屋で、急きょ朝食会が始まった。 哲郎とパクは初対面なので、軽く自己紹介をした。「あれ、哲郎ってイーサンとは会ったことがあるの?」 倫子は掬ったお粥に息を吹きかけながら尋ねた。「ん? ああ、うちの本家が医療系の製品を作ってるからさ」「意外なところで繋がっているのね」
最終更新日 : 2026-09-03 続きを読む