Todos los capítulos de 無香は朔夜に薫る ―妹が婚約者を寝取った夜、私は冷血軍神の「運命の番」に刻まれた―: Capítulo 21 - Capítulo 30

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第21話 もしかして、兄様が

 あれほど帝都を騒がせた密会騒動も、真相が明らかになってしまえば、御影家の日々をいつまでも乱し続けるものではなかった。 門の外に記者の姿を見ることもなくなり、朝になれば使用人たちが廊下を行き交い、昼には庭師が枝を整える鋏の音が庭から聞こえてくる。 そんな穏やかな午後。「麗香姉様。そこ、違います」「え?」「そこです。先ほどから同じ行を三度も読んでいらっしゃいます」 居間の長椅子で本を開いていた麗香は、向かいの卓で勉強している小夜に指摘され、目を瞬かせた。 確かに、目の前の洋書は少しも読み進んでいない。「……少し考え事をしておりました」「兄様のことですか?」「なぜそうなるのです?」 思わず声が上擦った。 小夜は筆を置くと、いかにも不思議そうに首を傾げる。「だって、最近の麗香姉様、兄様のことを考えている時だけ分かりやすいですもの」「そ、そんなことは……」「あります」 きっぱりと言われてしまった。 麗香は逃げるように本へ視線を戻した。 けれど活字を追おうとすればするほど、別のものが頭へ浮かんでくる。 あの日。 新聞に清雅との写真が載った夕暮れ。『俺は、お前がそんなことをする女ではないと知っている』 そう言った朔の声。 自分から重ねた指。 それを拒むどころか、包み返してくれた大きな手。 ――朔様が、私の夫でよかったと思いました。 あんなことを口にした自分を思い出すだけで、頬が熱くなる。「それにしても」 小夜が頬杖をついた。「兄様と麗香姉様って、不思議ですわね」「何がでしょう?」「夫婦なのに、少し他人行儀すぎません?」 麗香の指が止まる。「兄様は麗香姉様のお部屋へほとんど行きませんし、麗香姉様も兄様のお部屋へ御用がなければ行
last updateÚltima actualización : 2026-09-19
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第22話 湯気の向こう

 翌日になっても、小夜の言葉は麗香の頭から離れなかった。『もしかして、麗香姉様の本当の番って、兄様なのではありません?』 そんなはずはない。 そう思うたび、昨夜のことまで蘇ってしまう。 眠っていた自分の肩へ掛けられていた黒い上着。 そこに残っていた、朔の香り。 あの夜、自分を救った男の香りと、あまりにもよく似ていた。「……麗香?」「はいっ」 朝餉の席で突然名を呼ばれ、麗香は肩を揺らした。 向かいに座る朔が、怪訝そうにこちらを見ている。「どうした」「い、いいえ。何でもございません」「そうか」 朔はそれ以上追及せず、味噌汁へ箸を伸ばす。 それだけの仕草を、麗香はつい目で追ってしまった。 昨日までなら、こんなことはなかった。 向かいに夫がいる。 ただそれだけだったはずなのに。「麗香姉様」 隣から声がする。 見ると、小夜が意味ありげに微笑んでいた。「……何でしょう?」「いいえ、何も」 絶対に何かある顔だった。 麗香は小さく咳払いして、食事へ意識を戻した。 考えるのはやめよう。 朔があの夜の男かもしれないなどという話には、何の根拠もない。 香りが似ていた。 触れられた時の安心感が似ていた。 それだけである。 それだけなのに。 麗香の視線はまた、向かいの夫へ引き寄せられていた。◇ その日の夜。 御影邸の湯殿には、いつものように白い湯気が柔らかく立ち込めていた。 湯殿は母屋から渡り廊下を隔てた日本館の一角にある。 磨かれた板張りの脱衣所の奥に、石を敷いた広い浴室があり、壁際には大人が二人並んでも余裕のある深い浴槽が据えられている。 湯は使用人が薪で沸かして裏から引き入れる仕組み
last updateÚltima actualización : 2026-09-20
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第23話 二人きりの休日

 数日後。  この日は珍しく、朔が朝から軍服を着ていなかった。「兄様、今日はお休みなのですか?」 「ああ」 朝餉の席で小夜に尋ねられ、朔は味噌汁の椀を置いた。「夜までは何もない」 「まあ!」 なぜか、小夜の顔がぱっと輝いた。「でしたら、お二人でお出掛けになってはいかがです?」 「……なぜそうなる」 「だって兄様、麗香姉様とお出掛けになったことがございませんでしょう?」 その言葉に、麗香は箸を止めた。「せっかくの春ですもの。麗香姉様も、御影家へいらしてからゆっくりお出かけされていないでしょう?」 「ですが、小夜さん――」 「私は今日は女学校のお友達と約束がありますので、ご一緒できません」 逃げ道を先に塞がれた。  麗香は困って朔を見る。  目が合った。  その瞬間、先日の湯殿の前で見た姿が脳裏を過ぎる。 濃紺の浴衣。  いつもより無防備だった襟元。  そして、赤くなっていた耳。  麗香は慌てて視線を落とした。「……麗香が嫌でなければ、構わん」 「え」 朔の声に、胸が一つ鳴る。「い、嫌ではございません」 「なら、そうするか」 「……はい」 小夜が満足そうに微笑んでいるのに、麗香は気づいた。◇ 昼前の帝都は、春の日差しに満ちていた。  大通りには自動車と人力車が行き交い、その間を洋装の紳士や日傘を差した令嬢、着物姿の婦人たちが歩いている。軒先に片仮名の看板を掲げた洋品店の隣には古い呉服屋があり、その向こうでは煉瓦造りの百貨店が空へ高く聳えていた。 和と洋。古いものと新しいもの。  そのすべてが雑然と隣り合っているのに、不思議と一つの街として馴染んでいる。「どこか行きたいところはあるか」 隣を歩く朔に尋ねられ、麗香は少し考えた。「でしたら……書店へ行ってみたいです
last updateÚltima actualización : 2026-09-21
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第24話 運命でなくても

 あの日以来。  麗香は、夕暮れが近づくと時計を見るようになった。 御影家へ来て間もない頃は、朔が何時に帰るのかなど気にしたこともなかった。  軍務がある日は朝早く屋敷を出て、日が落ちてから戻る。それだけ分かっていれば充分だった。 けれど最近は違う。  居間で本を読んでいても。  小夜の勉強を見ていても。  廊下の向こうから自動車の音が聞こえると、知らず知らず顔を上げてしまう。 玄関で使用人たちの声がする。  やがて、聞き慣れた足音が廊下を進んでくる。  それだけで。  胸のどこかが、ほっとする。「……麗香姉様」 「はい?」 「兄様がお帰りになると、すぐ分かるのですね」 向かいに座っていた小夜が、にやにやと笑っている。「たまたま足音が聞こえただけです」 「昨日も同じことをおっしゃっていました」 「……そうでしたかしら」 「一昨日も」 麗香は返事に詰まった。  小夜がますます楽しそうに笑う。「やっぱり、そうなのではありません?」 「何がです?」 「兄様が、麗香姉様の番だというお話です」 「小夜さん」 嗜めるつもりで名を呼んだのに、思ったほど強い声にならなかった。  むしろ。  胸の奥が、僅かに甘く揺れる。 以前なら、そんなはずはないとすぐ否定できた。  自分は零香で、朔には別に探している女がいるのだから。  けれど。『清雅から借りる必要もないだろう』 あの時の、いかにも面白くなさそうな顔。  麗香が少しからかうと、ますます不機嫌になった顔。  そして。『これなら、はぐれん』 人混みの中で取られた手。  あの温もりを思い出すと、今でも胸が騒ぐ。「……もし」 気づけば、言葉が零れていた。「もし、本当
last updateÚltima actualización : 2026-09-21
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第25話 この腕、声、香り

 その日、麗香は朔とともに、華族夫人たちが主催する春の慈善会へ出席していた。「御影少将、奥様」 そう呼び止められ、朔と並んで振り返ることにも、少しずつ慣れてきている。 それが嬉しいことなのだと気づいてしまったのは、つい最近のことだった。 慈善会を辞したのは、午後も半ばを過ぎた頃だった。 迎えの自動車は大通りを少し進んだ先に待たせてあるという。「疲れたか」 隣を歩く朔が尋ねた。「いいえ。大丈夫でございます」「ならいい」 短い会話。 それでも、二人で歩くことはもう、以前ほどぎこちなくなかった。 春の日差しを受けた煉瓦の建物が並び、店先には色鮮やかな布地や果物が積まれている。車道では自動車と人力車、その間を縫うように荷馬車が行き交い、道端からは新聞売りの声まで聞こえてきた。 その時だった。 甲高い警笛が響いた、直後。「危ない!」 誰かの叫び声。 麗香が振り向く。 荷を積んだ馬車の馬が、前脚を高く上げていた。 すぐ脇を通った自動車の警笛に驚いたらしい。 御者が必死に手綱を引く。「どう、どう! 止まれ!」 だが、馬はますます興奮した。 嘶き。 蹄が石畳を激しく叩く。 次の瞬間、馬は御者の制止を振り切るように駆け出した。 悲鳴が上がった。 人々が道の両側へ逃げる。 荷馬車の車輪が石畳を跳ね、積み荷を大きく揺らしながら迫ってくる。「麗香、下がれ」「はい」 朔に促され、麗香も歩道の奥へ身を寄せようとした。 その時。「……あ」 道の向こうに、小さな子供がいた。 まだ五つか六つほどだろうか。 母親らしい婦人から離れた場所で、転んでいる。「坊や!」 婦人が叫ぶ。 けれど、人波に阻まれ
last updateÚltima actualización : 2026-09-22
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第26話 私ならいいのに

 翌朝になっても、麗香の耳には朔の声が残っていた。『……この香り』『……まさか』 あれは聞き間違いではない。 自分だけが、何かを思い出したわけではなかったのだ。 朝餉の席で向かいに座る朔を、麗香はそっと窺う。 いつもと変わらない顔で新聞を読んでいる。 けれど、頁をめくる手には昨日の傷を覆う包帯が巻かれていた。「……お手は、痛みませんか」「ああ。この程度なら問題ない」「そうですか」 会話が途切れる。 昨日までなら、それでよかった。 けれど今は、聞きたいことがある。 ――朔様。 昨日、何を感じたのですか。 もしかして、あの夜――。「麗香」「はいっ」「どうした」「……いいえ」 麗香は視線を落とした。「何でもございません」 結局、聞けなかった。 朔の口からはっきりと、自分ではないと言われることが怖かった。◇ 昼を過ぎた頃。 御影家を訪ねてきたのは、久世清雅だった。「昨日は大変だったそうだね」 居間へ通された清雅は、麗香の姿を見るなりそう言った。「お怪我は?」「私は何も。朔様が庇ってくださいましたから」「そうか。それはよかった」 清雅は安堵したように笑い、それから朔の右手へ目を向ける。「なるほど。麗香さんを庇って名誉の負傷というわけだ」「うるさい」 いつもの二人だった。 麗香も思わず微笑む。 けれど。「それと、朔。頼まれていた件だけれど」 清雅の声音が僅かに変わった。 麗香の胸が、小さく鳴る。「例の女性については、まだ決め手になるものは見つかっていな
last updateÚltima actualización : 2026-09-22
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第27話 違うはずなのに

 午後の陸軍省。 朔の机には、翌月に予定されている演習の計画書が積み上げられていた。 参加する部隊の編制。物資の輸送経路。各隊の移動予定時刻。 一つ判断を誤れば、夥しい人数の動きに影響する。普段の朔ならば、余計なことなど考えず、一枚ずつ処理していく仕事だった。 だが。 同じ一行を、もう三度読んでいる。 紙面に並ぶ数字を目で追っていたはずが、気づけば脳裏には別のものが浮かんでいた。 ――あの香り。 暴れ馬から麗香を庇い、腕の中へ抱き込んだ瞬間。 確かに香った。 冷たい夜気の中で初めて出会った、あの女と同じ香りが。 腕の中の感触も。 震える声も。 触れた時、胸の奥に生まれる奇妙な懐かしさも。 何もかもが、あの夜と重なった。「……少将閣下」 呼ばれて、朔は顔を上げた。 書類を抱えた副官が、机の前に立っている。「何だ」「いえ。その頁に、何か問題でもございましたでしょうか」「問題?」「先ほどから、随分長くご覧になっておられますので」 朔は手元へ視線を戻した。 何の変哲もない演習計画書。 しかも、自分が既に一度目を通した箇所だった。「……いや。何でもない」「は」 副官は敬礼して退室する。 扉が閉じてから、朔は小さく息を吐いた。 軍務の最中に、同じ箇所を三度も読むなど、自分らしくもない。 それも原因が、妻のことだとは。 朔はもう一度、計画書へ目を落とした。 だが、数字の向こうには、やはり麗香の姿が浮かぶ。 あの時。 確かに、あの女と同じ香りがした。 だが。 麗香には、契りの香がない。 首筋にも、あの夜に自分が残したはずの印はなかった。 ならば、違う。 そう判断するしかないはずだった。
last updateÚltima actualización : 2026-09-23
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第28話 運命の番か、麗香か

 数日後。 朔と清雅を乗せた自動車は、帝都の大通りを外れ、古い屋敷の並ぶ一角で停まった。「まさか君と二人で、帝都を女探しして回る日が来るとは思わなかったよ」 車を降りながら、清雅が笑う。「帰ってもいいぞ」「冗談だよ。ここまで来て追い返さないでくれ」 新しく見つかった証言者は、かつて近隣の華族家へ長く仕えていた老女だった。今は息子夫婦と暮らしているという。 二人が案内された小さな座敷で、老女は何度か記憶を辿るように目を細めた。「ええ。覚えております。まだ朝も早い頃でした」「どんな女だった」「お若い方でございました。黒い髪の……身なりからして、良いお家のお嬢様だったのではないかと」「顔は?」「申し訳ございません。ずっと俯いておられましたので」 朔は黙って続きを待った。「ただ、妙に襟元を気にしていらして。こう……人から見えないようにするような」 老女が自分の首元へ手を添える。 朔の眉が動いた。「他には?」「……香りでございますね」「香り?」 清雅が聞き返す。「はい。それはもう、強い香りでございました。香水や焚き物ではございません。長く華族様のお屋敷へ勤めておりましたから、あれが契りの香だということくらいは分かります」 朔と清雅が視線を交わした。「道の反対側にいた私にも分かるほどでございました」 あの夜、理性を奪われるほど強く感じた香り。 彼女は翌朝になっても、それほど強い香りを纏っていたということか。「その女性が、桐生家のご長女だった可能性はありませんか」 清雅が尋ねると、老女は困ったように眉を下げた。「失礼ながら……それは、ないのではないでしょうか」「なぜそう思う」「桐生家のご長女様は、契りの香をお持ちでないと
last updateÚltima actualización : 2026-09-23
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第29話 桐生家の告白

 朝餉の席で、麗香は急須へ手を伸ばした。 同時に、向かいから伸びてきた手と触れる。「……あ」 朔の指だった。 二人の手が、揃って止まる。「申し訳ございません」「いや」 どちらからともなく手を引いた。 ただそれだけのことなのに、指先が妙に熱い。 麗香は俯きながら、先日のことを思い出していた。 暴れ馬から庇われた時の腕。 あの夜と同じ香り。 そして、香りを確かめるためだと言って、自分の手首を取った朔。「……」「……」 二人の間に、何とも言えない沈黙が落ちる。 隣に座る小夜が、麗香を見て、次に兄を見た。 そして、何か言いたげに口を開きかけた、その時だった。「旦那様」 女中頭の志乃が静かに入ってくる。 その表情が、僅かに硬い。「桐生家より、使いの方がお見えでございます」 麗香の胸が冷えた。◇ 使者は、桐生家の家令だった。 幼い頃から何度も見た顔である。 だが男は麗香と目が合っても、以前のように頭を下げることはなかった。「桐生家当主、桐生和馬様より、御影家ご当主へ」 差し出された封書を、朔が受け取る。 使者はそれだけで役目を終えたように一礼した。「返事は」「必要ないとのことでございます」 朔の眉が僅かに動く。「そうか」 家令が退出する。 麗香は閉じた扉を見つめていた。 胸の奥に、嫌なものが広がっていく。「麗香」「……はい」「お前もいた方がいい」 朔はそう言って封を切った。 紙を開く音だけが、書斎に響く。 初めは、いつもと変わらない
last updateÚltima actualización : 2026-09-24
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第30話 ここにいてほしい

 翌朝になっても、麗香の中で何かが変わったという実感はなかった。 鏡に映る顔も、黒い髪も、香りを持たない身体も昨日までと何も変わらない。 ただ、自分が誰の娘なのか分からなくなった。 それだけで、足元にあったはずの地面が、音もなく消えてしまったようだった。「お母様……」 麗香は母の白磁の香炉を手に取った。 淡い桜の枝が描かれた、小さな香炉。 母が自分を愛してくれていたことだけは、疑わなくていい。 けれど、考えてみれば。 麗香は、母が桐生家へ来る以前のことをほとんど知らなかった。 母の生家。 幼い頃の話。 どのように和馬と出会い、妻となったのか。 尋ねたことがなかったわけではない。 けれど母はいつも、どこか寂しそうに笑って話を逸らした。 そして和馬もまた、麗香へ母のことを語ったことなど、一度もなかった。 ――私は、何も知らなかったのですね。 母のことも。 自分自身のことさえも。 扉が控えめに叩かれた。「麗香姉様?」「小夜さん」 入ってきた小夜は、麗香の顔を見るなり眉を下げた。「お加減はいかがですか」「大丈夫ですわ」「……昨日から、皆にそればかりおっしゃっています」 麗香は答えに詰まった。 小夜は麗香の隣へ腰を下ろす。「姉様。私は、よく分かりません」「何が、でしょう」「麗香姉様が桐生家の血を引いていなかったからといって、それで何が変わるのです?」 麗香は瞬いた。「だって、私に勉強を教えてくださったことも、お母様の香箱を探してくださったことも、全部なくなるわけではありませんもの」 あまりに真っ直ぐな言葉だった。 麗香は微笑もうとして。 うまくできなかった。「ありがとうございます」「それに」
last updateÚltima actualización : 2026-09-24
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