Alle Kapitel von ダイヤモンドは泣かない 〜可愛い顔したあの子に、もう奪わせない〜: Kapitel 31 – Kapitel 40

55 Kapitel

黒瀬兄弟①

「あー、うー……」はわわわわわ。可愛い。激かわいい。何なのこの可愛い生き物は。「翠《すい》ちゃん……。可愛い。可愛すぎる。可愛い。かわ……」言語能力、処理落ちしました。何これ癒される。連れて帰りたい。あわわ……。「美咲ちゃん。翠ちゃん、すっごい、可愛い……」「抱っこしてみる?」「いいの?いいんすか?え、手、洗ってくる」いそいそと洗面所へ。「はる兄ぃ、写真撮って」「はいはい」「悠、すっかりお父さんねえ……」「え、今誰の声?」「ダイヤさんだな」「ダイヤ⁈」「美咲さん、ダイヤさんよ?さんを付けなさい。黒瀬家で受け継がれしダイヤよ。この度ネックレスに生まれ変わったの」翠ちゃんの父、はる兄ぃがダイヤさんの声に動じることなく、翠ちゃんに一瞬視線を奪われつつも私のスマホを受け取った。はる兄ぃの奥さんで翠ちゃんのママ、美咲ちゃんはダイヤさんの声に固まっている。その美咲ちゃんから翠ちゃんを受け取る。「はうわ、やわらかい……」「手、ここね。まだ首すわってないから」「深月、こっち向いて。……翠?こっち、こっちだよ?」美咲ちゃんがガラガラをはる兄ぃの顔の横で振る。翠ちゃんがはる兄ぃの方を向いた。「よし。はい、チーズ」カシャ、とシャッター音が響いた。翠ちゃんを美咲ちゃんに戻してスマホを受け取る。ああ……私のスマホに翠ちゃんが……。眼福。「赤ちゃんって体温高いんだね」「体が小さいからね。平熱でも、抱っこすると温かく感じるな」美咲ちゃんから翠ちゃんを受け取ったはる兄ぃは、規則的に左右に揺れている。「はる兄ぃ、それ、何やってんの?」「それやると、翠ちゃん寝るのよ」「ちゃんと育児してる証拠ね悠」「あらダイヤさん。悠さんは、しっかりパパやってくれてますよ」美咲ちゃん、適応完了。早いな。インターホンが鳴った。「兄貴たちかな」「私、出ようか」「お邪魔しまーす」「悠、美咲ちゃん、出産おめでとーう」「デパ地下フルコース、買ってきたよー」はや兄ぃとその奥さんの奈緒ちゃん、その息子の湊《みなと》くんがやってきた。抱っこ紐装備のはや兄ぃ。この姿を想像できない社員は多いだろうな。「おっ。ダイヤさん、ネックレスになったって?」「え、何。隼。誰に話してんの」「私よ私。ダイヤさんよ」「え、ダイヤ、喋る、の?」「だからダイヤさん!さんを
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-24
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黒瀬兄弟②

「深月ちゃんは、どうなの?お年頃じゃん?」左手で湊くんの足の裏をくすぐりつつも右手で生春巻きを器用に箸で取る奈緒ちゃん。ママになるって、身体の全ての機能をうまく使えないといけないのね。「うん、まあ」とりあえずお茶を濁してみる。彼氏の存在なんて明かしたら目の前の従兄ズの目の色が変わってしまうのが今からもう分かり切っている。        「深月、彼氏、いるのか?」はる兄ぃ、反応早過ぎ。「俺らが認めた男じゃないと、黒瀬家の敷居をまたがせないよ?」「はや兄ぃ、私、時國」「名字は時國でも、父親代わりは俺らだからな」はや兄ぃまでドヤ顔って。「ヴァージンロードは俺と隼で深月挟むの、もう確定だからな」「うわ、ヴァージンロード、狭っ。深月ちゃん、隼と悠さん諦めさせるには神前式よ」奈緒ちゃん、それやったらこの従兄ズに泣かれるのよ?「神前式でもさ。そのあとの親族紹介誰がやるか問題で揉めてそう……。深月ちゃん、いっそふたりきりとか。悠さんと隼さんには黙っとくから」「「それは許さん!」」うーわー。はや兄ぃとはる兄ぃの、同時にふたりの圧、強いわ。美咲ちゃん、ふたりきりで挙式なんてしたら未来の旦那さまがこのふたりに連行されます。慎一郎さんと付き合ってんのバレたらどうなることやら。「諦めなさい、深月。このふたり、ひと通り花嫁の父やらないと収まらないわよ」「ダイヤさん……」「──私、そろそろ」長居してもいけない。帰る準備を始めたとき、LINEの通知に気付いた。『何時ぐらい?迎えに行く』迎えに来たら間違いなく慎一郎さんが従兄ズに鉢合わせる未来になっちゃう。今日は、避けよう。『自分で帰るんで、いいです』「深月が帰るなら、俺らもおいとましようか。深月、駅まで乗せてくよ?」「そうさせてもらおうかな」『もう来てる。マンションの前』うげげ。慌てて窓側から外を見る。ランクル。ある。慎一郎さんのだ。……まずい。「あ、えっと。はや兄ぃ、私、やっぱ歩いて駅まで」「遠慮すんなって。可愛い従妹に何かあったら俺泣いちゃう」泣いちゃうどころじゃない問題が今マンションの前に……!さあどうする。どうする私。「……深月ちゃん。彼氏、お迎えに来たんだ?」みーさーきーちゃーん!その勘の良さ、今発揮しないでえええ!「え。見たい。深月の彼氏。みんなで行こうよ」みんな
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-25
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黒瀬兄弟③

「やあこれは。久世さん、だったんですね。深月の彼氏とやらは」はや兄ぃ戦闘モード早いから!「まさか久世さんとは。灯台下暗し、ですね。深月の父親代わりなんです、俺たち」はる兄ぃ!カッコつけても翠ちゃん抱いてると怖さ半減!「父親代わり……?」「ああ、父ね。3年前に他界してるの」「知らなかった」「言う暇無かったからね」「これから知っていけばいい」慎一郎さんが肩に手を回した。従兄ズの眼光が鋭くなる。「ふええ……」「はる兄ぃ、翠ちゃんが」「ああ、すいちゃん。こわくないよ。ほら、ゆーらゆーら」左右に揺れ始めたはる兄ぃを見て慎一郎さんが戸惑ってる。和めばいいのか、表情を保つべきなのか迷っているのが肩に置かれた指先から伝わってくる。美咲ちゃんの肩も震えてる。笑いを堪え過ぎて動画、ぶれぶれでは?「悠。あれ、やろうか」「ああ、そうだな」まだ左右に揺れてるはる兄ぃに、はや兄ぃが耳打ちした。何をやるつもりなのか。はや兄ぃが咳払いをした。「久世さん」「んだっ!」どういうわけか湊くんも気合いを入れたらしい。「深月と、どういうつもりで、付き合ってるんですか?」はや兄ぃ!ちゃんと付き合い始めたの、昨日なの!「ねえダイヤさん止めてよ」「無理ね。もう花嫁の父モード、真っ最中」「深月?誰と話してる?てか、今の声、何?」「ああ、ダイヤさん」「……ダイヤ、さん?」「ダイヤさん、喋るのよ」「……この、ネックレスのダイヤ?」「ダイヤ、じゃない!ダイヤさん!さん付け大事!」「深月……俺熱中症で幻覚見てる?」「幻覚じゃないよ。慎一郎さん、ダイヤさんの声、聞こえるんだね」「やっと深月が信じられるようになったからね。でも昨日はいちゃいちゃしてたから黙っててあげたのよ」「ダイヤさん、初めまして。久世慎一郎です」慎一郎さんも、適応早いな。「ちょっと待て。ダイヤさん、いちゃいちゃしてたって?このふたり」翠ちゃんを左右にゆっくり揺らしながら眼光を保ったままはる兄ぃがまた近づいてきた。「あ、えっと。その」「久世さん、俺からも聞く。深月とどういうつもりで付き合ってんですか。中途半端なのは俺たち黒瀬兄弟が許しませんよ?」何黒瀬兄弟って。漫画か。奈緒ちゃん、笑い過ぎ。隠す気も無い。「大事にしてます」「大事に、ねえ。将来のことは、考えてんですか?……ちょ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-26
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Move①

「今度の土日は、空けといて」「両方とも?」「そう」鉄板の上のお好み焼きを真剣に見つめる慎一郎さん。両サイドからフライ返しを差し込んだまま10秒は確実に経っていた。「慎一郎さん。一気にひっくり返した方が」「いいから。俺のタイミングがあるの」よっ、と掛け声とともにひっくり返……せずに、お好み焼きはぐちゃりと鉄板に着地した。固まる慎一郎さんからフライ返しを奪って手早く整える。ん、これで大丈夫。「慎一郎さん。最後にお好み焼きひっくり返したの、いつ?」「たぶん高3。……いや、あの時は瑛《えい》がひっくり返して今みたいになったか。じゃあ、高2?」「久しぶりなんですね?」「お好み焼き食うのも久しぶりかもな」「今日は外食にしよう」と言われて無性に食べたくなったのがお好み焼きだった。慎一郎さんがイメージしてた外食って、もっと高級なやつだったのかな。慎一郎さんだったら、派手で綺麗な女の子と高級店で食事するとか、よくあったんだろうな。私は高級店の女じゃないんだよね。「土日、さ」「うん」「温泉行こう。もう予約した」「早いね慎一郎さん。ほら、もう焼けたよ」ソースとマヨネーズ、かつお節と青のりをかけて切り分けた。そうだ。「はい、慎一郎さん」「え?」「あーん」「俺、猫舌なんだけど」「しょうがないなあ」コテに載せた小さく切ったお好み焼きに2回息を吹きかけた。「ほら」「瑛さんって、高校の友達?」私にあーんされて口に入れて、まだ熱そうにもごもごしている。「そう。中学も高校も一緒の男子校でさ。そいつ、こないだ結婚したんだけど、嫁さんのために披露宴でBTS踊ってたよ」「えっ?新郎が?」「大学でダンスのサークルやっててリーダーだったからな。BTS好きの嫁さんにいいとこ見せたかったんだろ」結婚式の披露宴でBTS踊っちゃう新郎。美形だといいな。絵になる。「慎一郎さんも踊ったの?」「俺は客席。瑛と踊るの無理だよ。大学のダンスの全国大会行ってたやつだからな」「じゃあ本気のやつじゃん」慎一郎さんの友達の話って、初めて聞いたかもしれない。お友達、結構エピソード濃いな。「深月、次のやつ」またあーんしろってことなのか?「慎一郎さん、自分で」「猫舌だから」「毎回やるの?」「いいだろ。な、お願い」仕方なく2回ふうふうして慎一郎さんの口に運ぶ。従兄
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-27
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Move②

会社が入っているビルから少し離れた、雑居ビルの1階にある店。今日のランチはお肉がメイン。「……で?さっき環、呼ばれてたのは」「内示が出ました。商品開発部への異動です」「お。ついに出たか。環ちゃん、希望出してたもんね」「環さん……行っちゃうんですね」環が望んだ異動。喜ばしいことだけど、それは同時に、三宅課長と大原理紗コンビと戦う味方が減るということだ。私たちには唯さんがついてるけど、冷静な環が抜けるのは、不安がある。「澤田人事部長に言われたんだけどね」みんなが自然とテーブルに身を寄せる。「近いうちに第一営業課、動きがあるって。でも詳細は言えないし、動きがあることも伏せて欲しいって」「それ、さっきの三宅課長と大原さんの仲間割れ、関係あるかな」「可能性はあるね。旦那がね、行政書士なんだけど、最近クロセ製薬の仕事を受けたって。依頼元から、そこまでなら話していいって言われてるみたい」「旦那さんが?」「専務の大学の後輩なのよ。でも内容は、何を聞いても守秘義務の一点張り。だから今回の件と関係あるかは、私の勝手な想像」「それ守秘義務大丈夫ですか……?」「大丈夫。私にも何も教えてくれないから」守秘義務か。たしかに、肝心なことは何ひとつ聞いていない。「はあ……早くあのふたりの悪事がバレればいいのに」結局、日菜ちゃんが奪われた企画も大原理紗の名前でプロジェクトが進んでいた。土曜日朝。昨夜も慎一郎さんは私の部屋に泊まっていた。「旅行の準備をするから」と一度慎一郎さんは家に戻っていた。旅行だとわかっていたから、一昨日仕事帰りに新しい下着を買いに行った。店員さんに旅行だと話したら「これなら、彼氏が激燃えです!大炎上です!離してもらえません!」と謎の太鼓判を押された。白を基調とした、レースでところどころ透ける生地のもの。過去最小に生地の面積が小さい。これを今着けるか。温泉の後に着けるか。でも浴衣に下着、あんまり着たくないんだよね。念のため2パターン買ったけど。もう1セットは黒地で一部透けて、紐で結ぶタイプ。黒を今着けようかな。男女別の大浴場だったら見てもらえないかもしれないけど。旅館の部屋で、先に披露だけしようかな。「気合い入ってるわね深月」「付き合って初めての旅行だからね。これぐらいのサプライズはしないと」うん、谷間も常にキープできそう。身体
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-28
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湯けむり翻弄ツアー!①

伊勢に向かうには、途中まで高速道路が必須。もしかしたら渋滞するかもしれないから、助手席の私としては、運転してくれる慎一郎さんにできる限り尽くすつもりでいた。今日のニットワンピのVネックがサービスかって?うっかり黒ブラが一部見えちゃっても、それはそれで眠気覚ましになるからいいの。「慎一郎さん、はい、お茶」「う、うん」サービスエリアを出る直前。ペットボトルの蓋を開けて慎一郎さんに渡す。お茶を飲んだ慎一郎さんからペットボトルを受け取るとき、わざと身を寄せて見た。たぶんブラの生地がこの角度なら見えるはず。慎一郎さんの前に乗り出してペットボトルホルダーにお茶を置いた。「それぐらい、自分でやるよ」「慎一郎さん、肩凝ってない?ちょっと揉もうか?」「え、いいよ」「いいから」慎一郎さんの左の手のひらを私の胸元に固定して、腕を少し力を入れて揉んでいく。目が泳いでるの、バレてるよ?「慎一郎さん、そっちもほぐした方がいいの?」わざと首を傾げてやる。目を覗き込んで太ももに手を置いた。もう目が合わない。おかしいなあ。こんなに尽くしてあげてるのに?「ねえ、慎一郎さん……?」ダメ押しの上目遣い!伊達に大原理紗の隣の席で仕事してないよ?上目遣いと首の傾げる角度は学習済みなのよ?太ももに置いた手をすすす……と動かすと、また長いため息が出た。「深月。俺、もう押し倒したい。やっぱキャンセル……」「だーめ!ほら、慎一郎さん、運転頑張って?目、覚めたでしょ?」「んんーっ。着いたね。運転、お疲れさまでした」車から降りて両腕を上げて伸びる。もちろん慎一郎さんに見えるように。あ、また今目、逸らしたな?「どうする?おはらい町で軽く食べてから行く?」「そ、そうだな……」反応悪い!腕絡めてむぎゅっとしちゃうもんね!「深月……こんなところで」「ん?何か問題でも?」首を傾げてにっこり。慎一郎さんはこれに弱い。バレバレ。「やっぱお参りしてからおかげ横丁行こう?」慎一郎さん、なんだか歩きにくそう。……やっぱりか。「慎一郎さん、内宮着くまでに、落ち着かせられそう?」聞かれたらまずいからね。耳元で小声で聞いてみる。「お伊勢さんでそれ、落ち着いてないの、まずいと思うの」「……深月。わかっててやってるだろ」「えーわかんなーい」「しょうがないな」一瞬の隙を突かれた。慎一郎さん
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-29
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湯けむり翻弄ツアー!②

「こないだは結婚式、ありがとうな」「おう。家でも踊ってんの?BTS」「踊らねえわ。近所迷惑」「踊らない理由そこかよ」慎一郎さんのお友達の、瑛さん。先日慎一郎さんが「結婚式で新郎がBTS踊ってた」って話してたけど、この人か。やんわりテテに似てるよな。この人がフロックコート着て踊るとか、画が強すぎる。隣のこの奥さん、それ直撃したんだ。「りお、高校の友達の。慎一郎だ」「こんにちは。先日は結婚式に来ていただいてありがとうございました」小柄で髪の長い、可愛らしい奥さん。肩を抱かれていてもそれが通常モード、な雰囲気だ。「彼女、だな?」「ああ。時國深月さん。俺の可愛い彼女」「どうも」軽い会釈だけ、してみる。瑛さん、どこかで見たような。こんな破壊力強いイケメン、滅多にいないと思うんだけど。「先日、アオパに……アオバ賃貸パートナーズに、いらっしゃいましたね?」「え……?」「鍵の交換を」「……あ、あのときの」瑛さん、あのときの麗しいイケメンだったんだ。気まずいな。あれだけ接客してもらったのに、結局コーポ黒瀬に引っ越しちゃったんだよね。「あのときは、ありがとうございました」「今は平和そうで何よりです。慎一郎なら大丈夫、だな?」「当たり前だろ。な、シャッター押してくれよ。瑛たちも撮るだろ?」「ああ。スマホ、貸して」慎一郎さんの隣に並ぶ。「慎一郎。そこでいいのか」意味ありげな瑛さんの意図を察したのか、慎一郎さんは再び私の腰を抱いた。またしても手つきが妖艶で、写真を撮るというのに表情が作れない。慎一郎さんの背中のシャツをきゅっと握った。はいチーズ、と定番の掛け声とともにカシャ、と音がした。慎一郎も瑛さんのスマホでふたりを撮っていた。「じゃな。また色々と聞くわ」「ああ。瑛たちは参拝、終わったんか」   「まあな。じゃ、お先」りおさんの肩を再び抱く瑛さん。軽くペコっと頭を下げるりおさん。お似合いの夫婦だな。「さ、俺たちも行くか」「うん」さっきの写真。慎一郎さん、当然のように腰抱いてた。それ見た瑛さんも顔色全く変えなかった。このふたり、愛情の示し方が似ているのかもしれない。内宮は木の影で涼しい。薄着のミニワンピの私には、慎一郎さんとくっついてちょうどいいくらいの気温だった。そう、つまり、少し肌寒い。「あっ、冷た……」五十鈴川の川
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-30
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身も心も①

「慎一郎さん、あれ食べようよ」おかげ横丁を練り歩いていた。ここも人が多いから、できるだけくっついて。数歩先の店から、いい匂いがしていた。「まる天か。揚げたてが食べれるよ」「どれにしようかな……」慎一郎さんはじゃがバター天。私は海老マヨ棒を注文した。「熱っ……でも美味しいよ。慎一郎さん、あーん」当然のように口を開ける彼に背伸びして海老マヨ棒を近づけた。大型犬の餌付けってこんな感じかな?「深月も、あーん」どれくらいの大きさで口を開けるのか一瞬迷う。小さめに口を開けた。当然、じゃがいもには辿りつかない。でも大口開けるのは違うと思うのよね。まる天の磯揚げを食べ終えると、きゅうりの冷やし棒が売っていた。暑いわけではないけど、口の中をすっきりさせたい。「慎一郎さん、あのきゅうり食べようよ」また一本ずつ慎一郎さんが買ってくれる。狙ってません。狙ってませんよ。私はただ、口の中をきゅうりのお漬物ですっきりさせたかっただけ。慎一郎さんを見つめながら、きゅうりをくわえる。180㎝超えの彼を見つめると、自然と上目遣いになる。しょうがない。私のせいじゃない。ゆっくりと、きゅうりを口に含んだ。慎一郎さんが耳まで赤くして目を逸らしたのは、私のせいではありません。私はただ、きゅうりを食べてただけ。「……深月。そろそろチェックインの時間もあるからさ。向かおうか」それ、耳元で吐息混じりで言う必要無かったよね?慎一郎さん!伊勢神宮の賑わいが遠ざかる。パールロードを抜けると目の前に英虞湾が広がった。ホテルは目立たない。静けさの中へ人を迎え入れる建築。ランクルから降りる。建物への道は、子どもの頃の秘密基地への道を思わせた。部屋へ案内されると、窓の向こうには湾が広がり、室内には木の香りがわずかに漂う。窓を開けると、潮の香りより先に、森を渡る風の匂いがした。波の音さえ遠く、英虞湾は静かな湖のように夕暮れを映していた。誰にも邪魔されない、大切な人と同じ時間を過ごすためにあるような空間だった。部屋の中に、露天風呂へ続くドアがあった。「すごいね、慎一郎さん。なんか、すごく落ち着く」無意識に私は、深く呼吸していた。「今日は何も考えなくていい」その言葉だけで肩の力が抜けた。慎一郎さんの手が私に伸びる。何も考えなくていい。会社も。過去も。追いかけてくる何かも。背中に慎一
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-01
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身も心も②

ドアを開けた向こう側に英虞湾が広がっていた。慎一郎さんは私をソファにそっと下ろした。……え?ソファ?この露天風呂、ソファがあるの?驚いていたのも束の間。私を組み敷いた慎一郎さんがすぐに深く触れる。揺らされて、突き上げられて、壊れたラジオみたいに声をあげた。……って!ここ、露天風呂だから!声全部聞こえちゃう!「ふっ……くうっ……」「深月、我慢しないで」「だって、でちゃう、こえ……ああんっ」「他の客が泊まるところとは離れてるから。大丈夫」律動が激しい。何度も視界が白くなった。何回か、背中を逸らしたと思う。「……深月。まだ温泉、入ってもないよ?」「だって。しんいちろうさんが……」素肌にかかる風が、火照った肌に気持ちいい。海を見る余裕なんて無かったけど、この露天風呂の景色、すごく綺麗。「ほら深月。洗ってあげるから。動ける?」「お化粧だけ、自分で」「俺が」「色々とあるの。ちょっと待ってて」部屋の荷物から手早く洗面用具を取り出して化粧を落とした。……慎一郎さん、今日ペース早いな。なんだかんだ温泉はゆっくり浸かれるかな。ダイヤさん、ケースにしまわないとな。──そうだ。ふふっ。私だってね、やられっぱなしじゃないんだよ?まずは髪をまとめてうなじを見せよう。慎一郎さん覚悟して?反撃してあげるから。「……慎一郎さん?」露天風呂に戻ると、慎一郎さんは全部洗い終えていた。しまった。先手を取られた。「ほらおいで。洗ってあげる」シャワーのお湯が火照った肌を流れていく。身体を流れるお湯も何もかもが、夕陽に照らされていた。髪を洗う慎一郎さんの手つきは優しい。反撃するなら今しかない。彼が髪に意識を向けている、この一瞬。シャワーチェアに座った私の目の高さに、獲物はいた。そっと指先で触れる。私だって慎一郎さんの身体が喜ぶ場所は知ってるの。少しだけ刺激を与えて口に含んだ。「み、づき……何を……」抵抗しない。慎一郎さん、これ好きだもんね。緩急をつけて強めに吸った。それでも静かにシャンプーもトリートメントもつけて流してくれるんだから、まだ余裕があるよね?手早く髪をクリップで留めた。「ね、ほら、慎一郎さん。温泉入ろう?」「まだ。身体、洗ってやるから」む。まだ余裕なんだ。悔しい。大きな手のひらにボディソープを出した彼は、私の全身に手を滑らせた。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-02
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身も心も③

「……伊勢海老。すごいね。豪華」私の分は慎一郎さんの向かいに用意されていた。向こうに座るのか。慎一郎さんの腕の中、気持ちいいのに。──そうだ。「慎一郎さん、私、ここで食べたい」「え?」戸惑ってるな。それならば。大原理紗仕込み!必殺上目遣い!「わたし、まだちょっと、しんどいかも。慎一郎さん、食べさせて?」絵文字ぐらい目を潤ませて訴える。おねがい。私、まだ慎一郎さんとくっついてたい。ドライヤーの音が止まった。「わかった。食べさせてやるから、今日は早めに休めよ?」ため息混じりに言うと、ドライヤーのコードをまとめて片付けに行った。この隙にヘアクリップでお団子にしよう。ゆるめのやつ。手早く作る。慎一郎さんが戻る前にさっきの場所に戻る。「慎一郎さん、お刺身食べたい」「はいはい」座椅子に戻った彼の、さっきと同じポジションをキープ。口を少し開けると本当にお刺身を食べさせてくれた。これ、いいな。「慎一郎さん、わたしも食べさせてあげる。あーん」箸で伊勢海老を取って慎一郎さんの口へ運ぶ。「深月。復活してるだろ」「あ、ちょっとふらふらするような」「じゃあ今日はノンアルコールな」「お酒飲んでも大丈夫なやつ」「湯当たりしたやつに大丈夫な酒があるか」「ほら慎一郎さん。コップ持って?お酌してあげる」「……ねえ慎一郎さん?私、浴衣の中何も着てないんだよ?」「知ってる。俺が着せた」「何も思わないのー?」寝室の直置きマットレス。ベッド風のお布団で慎一郎さんと寝転がっていた。折角の旅行なのに、お酒はことごとくノンアルにされちゃった。慎一郎さんは明日も運転だから、今夜しか一緒に酔っ払えないのに。豪勢なご飯を食べ、ノンアルコール飲料を沢山飲んだおかげで復活した私は、慎一郎さんをこれでもかと誘惑していた。「深月、今日倒れたんだよ?」「でも復活したよ?」「……俺な、深月が倒れたとき怖かったんだよ。このまま目を開けなかったらどうしようって」「大げさ。ちょっと貧血体質なだけだよ?」「大げさでいい。俺は、深月が元気なときしか抱かない」「……こんなに誘惑してあげてるのに?」「やっぱりわざとか」へへ、と笑って誤魔化して、また彼の身体に脚を絡みつかせる。柔らかさも谷間も、全部見えてるはずなのに。慎一郎さんの目線が何度も動いてることに、私が気付かないわけな
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-10-03
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