Alle Kapitel von ダイヤモンドは泣かない 〜可愛い顔したあの子に、もう奪わせない〜: Kapitel 21 – Kapitel 30

55 Kapitel

ダイヤさんの効能①

「時國さん」「はい」企画案を修正中、隣の大原理紗から声を掛けられた。「昨日のアフタヌーンティーさ、誰と行ったの?」「え?」「インスタ。上げてたでしょ」こうなるのがわかってたから、写真を撮るつもりが無かった。インスタにアップなんてもってのほか。「ああ。あれはちょっと、成り行きで」「バラしちゃいなさいよ。こいつうるさいから」ダイヤさん。会社で普通に喋るのほんとやめて。「うん、成り行き。で、誰と行ったの?司くんと別れたばかりなのに、随分お盛んなんだね」「大原さんの企画はお盛んなの?どう?私、ちょっと見てもいいよ?」無遠慮には、無遠慮で返すべし。くねくねしたその動きが鬱陶し過ぎた。あえてのぐいぐい。パソコンのモニターは、相変わらず電源が入っていなかった。「大原さん。もしかして、モニター壊れた?」「え、なんで」「もう勤務始まって1時間半も経つのに」ちょっと声の音量、上げてみよう。「1時間半もモニターに電源が入らないなんて、大変!課長、大原さんのパソコン、電源が入らないみたいですよ。すぐ対応してあげてくださいよ。うちの課の、企画立案しまくりの期待のエースなんだから!」私の声に、みんなの視線が集中した。この第一営業課。大原理紗と課長の被害に遭ったのは新人の日菜ちゃん以外全員だ。「深月、やるわね」ふふふ。ダイヤさん。私だってね、やられっぱなしで生きてるわけじゃないのよ。──環、日菜ちゃん。肩が震えてる。やめて。私にも笑いが伝染しちゃうから。「深月、あれ。すごかったね」「ん?何のこと?」週に一度の、外でのランチ。同じ第一営業課の星宮唯《ほしみやゆい》さんがビル周辺のランチ事情に詳しいそうで、みんなで食べに行く習慣がある。大原理紗と課長は来ないけど。みんなが本音を言える、貴重な機会だ。「モニター壊れてる問題ですよ」環の言葉に、海鮮丼のお味噌汁を飲んでいた日菜ちゃんが吹きそうになった。「ちょ、環先輩」「でも、言ってくれてありがたいよ」同じテーブルの唯さんがどんぶりの中のマグロにわさびをつけた。「本当なら、私が苦言を呈しないといけない。ただ、課長がね」第一営業課の三宅課長。下の名前は知らない。知るメリットも感じられない。でも大原理紗なら知ってるかもしれない。責任を引き受けず、会議でそれっぽいことだけ言う人。こちらが
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-15
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ダイヤさんの効能②

 ──その夜。20時過ぎのホテル・グランシエル水無瀬のナイトプール。「理紗。まだ撮んのかよ」「いいでしょ。司くんだって、タダでこのナイトプール入れたんだから」今日のランチで少し胸元緩くしてやったらあのバカ課長、デレデレしてナイトプールの無料券を2枚チラつかせてきた。誰があんな腹出たおっさんと行くかっての。最近社内に出入りしてる久世さんみたいな人だったら、私のこの谷間、いくらでも見せてあげるのに。司は私のインスタのカメラ要員に収まった。せっかく時國深月から奪ってあげたのに、司ってば全然お金持ってない。やっぱり私に相応しいのは久世さん。名前検索したら会社の代表って書いてあった。これは落とさないとね。どうにかして久世さんを私のインスタに誘導して、この私の最高の水着姿を見せてあげないと。……あの貝のやつ、いいじゃん。マーメイドな私にこそ相応しいやつ。「司くん、あっちでも撮って?お願い?」上目遣いして首でも傾げれば、文句言いつつ動く。便利な男。プールサイドに上がって歩いてるとき、足に何か当たった。子どもだったかも。親、何してんのよ。謝りなさいよ。てかここ、子連れ来んのね。鬱陶しい。睨んでやろうと振り返る。あれ?いない。まあいいか。「司くん、こっちで撮って?」ビキニのブラからBANされないギリギリのところまで胸を露出する。またフォロワー増えちゃうな。口も半開きにしよう。司の後ろの方で子どもの泣き声。うるさい。何あれ。親も騒がしいし。マナーぐらい守ってよね。「ちょっとあなた!」ナイトプールにおばさんの金切り声が響いた。うるさい。雰囲気台無し。ぷるぷる震えてるし。ついでに肉?脂肪?もぷるぷる震えてる。ウケる。「なんだよおばさん」「あなたじゃない!私はね、こっちの人に用があるのよ!」「……うちの娘にさっきあなた、ぶつかりましたよね?」あら。おばさんの連れ、旦那かな。なかなか渋くていい男。谷間寄せなきゃ。両腕を内側に力を入れる。「さっき……?まあ、何かぶつかったけど?それが何か?」「あなたがぶつかったせいで娘がプールに落ちて溺れたんです!」おばさんが抱いてたのは大して可愛くもない、鼻水出しながらまだ泣いてる小さな女の子。これが娘?この旦那が父親なのに?残念、遺伝子母親のが強かったか。「だから何?」「子どもプールに落として溺れさせ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-16
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ダイヤさんの効能③

そういえば時國さん、珍しく今日ネックレスしてたっけ。やたら大きな石の。どうせ偽物だろうけど。でも光り方がダイヤっぽかった。似合わない。あれは私の方が絶対似合う。私の方がふさわしいのに。うん、やっぱ偽物でしょ。時國さんにあんなダイヤ買えるわけないもんね。でも一粒ネックレスいいな。「ねえ司くぅん」「うん?」胸元の布をぐっと下げてぎりぎりのところまで見せてやる。司はこれやると毎回いうこと聞くの。「私、ネックレス欲しいの。一粒の宝石のやつ」はい鼻の下伸びた。太ももに擦りつけてきた。今電車なんだけど。公共の場なのに、司ったら興奮しちゃって。……って!そもそも何で今電車なのよ!司、車持ってないとか意味わかんない!やっぱお金無い男は嫌!「妹が死んだおばあちゃんから貰ったとか言ってたな。赤い石のやつ。指輪だけど」赤い石。ルビーかな。「私、それがいい」秘技!うるうる上目遣い!からの腰擦りつけ!鼻の下、更に伸びた!いい感じ。司にまともな宝石買える財力無いんだから、妹から貰うぐらいのことはしてもらわないとね。「ねえ……おねがあい……?」耳元で息を含んで囁く。これで完成。「……ああ。妹に話しておくよ。それよりもさ、理紗、今夜……」「いいよ。口でもして、あ・げ・る」「うわ」インスタを開いた。すぐに目に飛び込んできたのは、大原理紗のビキニ姿。うーわー、必死。水着のブラのパッドには寄せ上げ機能無いから、スレンダーが売りの大原理紗には谷間作るの大変なんだよね。私?私はパッド捨てる派です。だって胸の形、見た目変わっちゃうからね。口の半開きが本気でキモいんですけど。フォロワー、増えてんだろうね。見知らぬ人の今日のオカズに名乗りを上げるボランティアをするぐらいなら、自力で企画ぐらい作ったらどうなんだろうか。LINEの通知。久世さんだ。『生姜焼きとわさび漬け、うまかった。タッパー、どうしたらいい?』『お口に合ったみたいでよかったです。ご都合の良いときに返していただければ』『今、都合いい?』『家にいますけど』『じゃあ行く。305号室だよね』『はい』久世さん、食べるの早いな。2食分ぐらいあったと思うんだけど。昨日のアフタヌーンティー、1万近かったのに、1食分しかお返しできなかったか。……ちょうどいい。司がいた時の名残で、ついつい2人分の材料を買いがち
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-17
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ダイヤさんの効能④

「豚キムチ、炊き立てのご飯に載っけるの最高でしょ?」 「……米って、どれ買えばいい?」 「米は、米でしょ?」 「種類がたくさんある」えーっと?この人、会社の社長やってる人だよね?スーパーのお米売り場でどの銘柄を買おうか悩む久世さん。やだ、考えただけで可愛過ぎるんですけど。 「買うとき、一緒に選びましょうか?」 「そうしてくれるとありがたい」 「あ、そうだ。保冷剤がここに」 紙袋の方に身を乗り出した。久世さんがまた固まった。のち、一瞬で顔を逸らして壁を見た。絶対に見てない!と言わんばかりに。 何事……?あ、みえちゃったか。お目汚し、ごめんなさいだな。一瞬だからノーブラでも問題無いと思ってたけど、このタンクは首周りゆるいんだった。 見てないふりをしてくれてるのなら、それに乗ろう。やっぱ紳士だな、久世さんは。司の時は、見えたら即座に揉まれてたっけ。 ……この人に、そういった欲はないんだろうか。ちょっとからかいたくなった。だって可愛いんだもん。やっちゃっていいかな?ふふ。 「久世さん。頂き物のビールがあるんです。一緒に飲みません?」 「え?」 「それ、冷蔵庫に入れれば大丈夫だから」少し 首を傾げて久世さんの腕を軽く掴んだ。抵抗しない。 部屋に引き入れる。久世さんは、まだためらいのある顔をしている。ポーズでもいい。ちょっとだけ、私にからかわれてください。 「明日も仕事ですから。ビール一本飲んだら解放してあげますよ。ほら」部屋に入っても、久世さんは私に袖を引っ張られたまま。抵抗の意思ゼロじゃん。遠慮しつつも帰る様子の無い久世さんにソファを勧めた。借りてきた猫みたい。よく冷えた缶ビールと、お皿に移した長ネギのポン酢蒸し、箸を2膳。私がソファに座ると、彼は一瞬身を固くした。「ソファ、狭いですよね。でも座るところが、ここかベッドしか無くて」「いや、大丈夫」「じゃ、どうぞ。乾杯」缶ビール同士を小さくコン、と音を立ててぶつけた。プシュッといい音がして、ふたりとも同時にぐいっと飲んだ。「いつも家で酒、飲むの?」「ひとりでは飲まないです。つまんないし。でも、頂き物のお酒が増えても困るから、誰かいるときは一緒に飲むんです」「元彼とも飲んでたの?」「飲む人だったので。久世さんは?前の奥さんとは」「お酒、あんまり飲まない人だったから
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-18
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衝動①

「んんっ……はあっ……」反射的に久世さんのTシャツを掴んだ。また一瞬離れた久世さんの目が、熱っぽい。「くせ、さん……。日本酒、お好きですか……?」「好きだよ?1本で返すんじゃなかったの?」また唇が重なる。今度は吸いながら。激しい、このひとのキス。「んはあっ……日本酒は、まだ、飲んでないでしょ?」「じゃあ、持ってきて?」耳元にかかる息で、どうにかなりそう。冷蔵庫で冷えてた日本酒をガラスのとっくりとお猪口をふたつ、盆に載せてローテーブルに置いた。久世さんが注いでくれる。「じゃ、乾杯」小さく乾杯をする。くいっと喉に流し込む。これは甘口でのみやすいの。「深月ちゃん、結構いける人だね」いいながら、久世さんは自分の口に冷酒を流し込むとそのまま唇を重ねた。口の間から、冷酒が流れ込んだ。こくん、と飲み干した時には、頭がもうぼうっとしていた。目が合った。「深月ちゃん。……俺、もう、我慢できそうにないんだけど」久世さんの首に腕を絡ませた。自然と唇を何度も重ねて、そのままソファに倒れ込んだ。唇が、指先が、手のひらが、私の身体を滑る。タオル地のタンクの上から、彼は先端を甘噛みした。「はあんっ……や、焦らしちゃ、や……」なかなか脱がせてもらえなくて、下腹部の奥がじれったい。「くせ、さん……ぬがして……」「慎一郎」「……え?」「名前。慎一郎って呼んだら、脱がしてあげる」「しん、いちろう、さん……」タオル地の中に、慎一郎さんの大きなごつごつした手のひらが侵入した。わずかに膨らみを掴んで、先端を擦られる。「ふああ……っ!」「さん付けか。いいや、さん付けは、そのうち取ろうな」タオル地のタンクも、ショートパンツも両方剥がされた。電気はいつの間にか消されていたけど、月明かりは私の身体を隠してくれない。「深月……綺麗だな」「久世さんも、脱いでください。私だけ裸で、恥ずかしいです」「ずっと裸でいてもらってもいいけどな」言いながら、着ていたTシャツもジャージも下着も、彼は一気に脱いだ。先端を口に含んで吸われながら、久世さんの手は茂みの蜜をゆっくりと核に擦り付けた。「え……んあっ、はあ……あああん!」「指……すぐ入ったな。深月、こんなにエロい子だったんだ」不意に、身体が浮いた。「ベッド。ソファじゃしにくいから」抱き上げながら、何度もキス
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-18
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衝動②

まだ薄暗い。今、何時だろう。枕元のスマホに手を伸ばす。あれ?無い。いつも充電差して寝るのに。 起きあがろうとして、身体が動かないことに気付いた。……腕?私、抱かれてる?腕の主は同じベッドで気持ち良さそうに眠っていた。そうか、私、昨日久世さんとしちゃったんだ。司と別れてもうすぐ2ヶ月。もう「別れたばかりなのに」なんて言われないか。誰も言わないけど。いいじゃない、ワンナイトする夜があったって。……ワンナイトなんて、初めてしたけど。朝になったら、全部元通りにしよう。久世さん、うちの会社出入りしてるし。社員と身体の関係なんて、まずいよね。あともう少しだけ。この人の体温に甘えてもいいかな。もうすぐ夜が明けそう。久世さんが、私を無条件に抱きしめてくれるのは、きっと今だけ。朝になったら、さようなら。彼の腕の中に戻る。すぐに包まれて、少し力が入った。朝なんて、来なければいいのにね。身体の相性は良かった。ただそれだけ。「好き」も「付き合おう」も無い。私にも無い。おあいこ。お互いさま。それで良し。「……深月?」額を久世さんの胸に擦り付けてた。起こしちゃったかな。「久世さん、まだ夜です。寝てください」「慎一郎」「え?」「名前で呼んでって……言った……」そのまま久世さんは眠りについた。頑張れ私。起きたら何ごとも無かったかのように仕事に行くんだ。アラームが鳴る、少し前。久世さんを起こさないように、そっとベッドを抜け出した。今日も仕事。身支度と朝ごはんを、できるだけ音を立てないように進める。アラームが鳴った。私の朝はいつもこの時間で問題無いけど、久世さんは仕事、間に合うんだろうか。「久世さん、朝です。起きてください」「んん……」まだ眠そうな彼の腕が伸びてきた。その腕に甘えたい衝動に駆られる。でもだめ。線を引けなくなる。「深月、おいで」「だめです。久世さん、朝です。起きてください」それだけ言って、キッチンに戻った。ご飯は早炊きで。私の分だけなら冷凍ご飯があったけど、パックご飯ばかり食べている久世さんには炊き立てのご飯を食べて欲しかった。お味噌汁は冷凍のカット油揚げと冷凍ほうれん草。冷凍ばんざい。玉子焼きは一本を半分ずつ、ひとり3切れでいいかな。甘いのかしょっぱいのか、どっちがいいのかわかんないからめんつゆと砂糖、両方入れようか。ま
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-19
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衝動③

──解せない。久世さんは、あれから連日うちに来ている。ケーキやお酒を手土産に毎回持ってくる。仕事の都合なのか、あの日と同じぐらいの時間にやってくる。そう、遅い夕食を終えてお風呂にも入って寝る前。ちょうど、まどろむ時間を狙って嬉しそうにやって来る。手土産を持ってきてくれるから、無下に追い払えない。ごはんが美味しいと言われたら、追い返せない。セフレだってわかっているのに。この人が求めているのは私の身体とごはんだってわかっているのに。触れられて絆されて、連日私は久世さんに抱かれていた。今朝は危うく遅刻しそうになった。そういうの、して欲しくないのに。会社の近くまでランクルで送ってくれた。……助かったけど。あんまり親密になると、お別れするとき辛くなるのに。久世さんは、ベッド以外の私が冷たいと拗ねるようになった。じゃあ他に行けばいいのに、数秒後にはまとわりついてくる。仕事中に久世さんの姿を見ることが増えた。久世さんは、会社の仕組みを改善する手伝いをしていると話していた。第一営業課の私が社内で久世さんを目撃する回数が増えたということは、もしかしたら例の調査に久世さんも関わっているのかもしれない。私に近づいたのも……その一環?考え過ぎかな。「疑り深いわね。久世さんが調査に関わってたとしても、調査は調査、深月は深月でしょ」そんなふうには割り切れないのよ、ダイヤさん……。「では、大原さんのこの案でみんな、頼むよ」三宅課長が当然のように言い放った。日菜ちゃんの顔から血の気が引いている。唯さんと私は顔を見合わせた。そう、その大原理紗と名前が記してあったその企画書。日菜ちゃんが先日唯さんを経て私に見せてくれたものだった。内容は……うわ、全く一緒。でも今回はフォントが明朝体からゴシック体に変えられている。ああ。ついに大原理紗と三宅課長は、新人の日菜ちゃんの企画でさえも奪ったのか。──閑静な住宅街の、とある家。ある一室。「……お前さ、ばあちゃんの指輪、持ってたよな?」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-20
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答え合わせ①

「深月さんも環さんも、こんな悔しいことされてたんですね。知ってましたけど、自分がされるとこんなに悔しいなんて……!」生ビールのジョッキを日菜ちゃんはテーブルにガン!と音を立てて置いた。「日菜ちゃん」「私の!私の企画なんですよ!」「そうだよ、日菜ちゃんの企画だよ。大原さんは私や深月だけでなく、ついに日菜ちゃんの企画まで」お酒が強くない環はノンアルコールのカクテルを飲んでいた。私や日菜ちゃんみたいにお酒で紛らわすのと、環みたいにお酒に頼らず耐えるのと、どっちがいいんだろう。唯さんに至っては、お子さんふたりの育児もある。せめて旦那さんが、唯さんの愚痴を受け止めてくれる人だといいんだけど。「最近は唯さんの企画にまで触手が伸びてたけどさ。日菜ちゃん初の企画まで……。もう鬼畜の所業だよ」お店の中だからか、日菜ちゃんは静かにぽろぽろ泣き続けている。本当は声を上げて泣きたいだろうに。久我課長……次長になっちゃったから、もう戻ってこれないか。久我次長がいてくれたらって、何度思ったことか。私が新人のときの課長は久我課長だった。当たり前のことを当たり前にやってくれる人だった。上司とはこういうもの……そう思っていたのに、三宅課長が全て覆した。上司にも当たり外れがある。私たちは、上司ガチャでハズレを引いたんだ。初めての上司があんな腐った人だなんて。日菜ちゃんが会社を嫌いになってしまう。「せんぱあいいいい。何であんな職場で仕事が続けられるんですかああああ」「日菜ちゃん、ちょっと自力で歩いて?深月、ここから右?左?」「えっとお……そこ出て左」たぶん今、正気なのは環だけ。飲んでないもん。私、いつもだったらこんなに酔わない。日菜ちゃんが受けた仕打ちが酷すぎて、日菜ちゃんにつられて私も一緒に酔っちゃった。私だけでも自力で歩かないと、環が本気で困る。それはわかる。日菜ちゃんはひとり暮らし。この状態で解散なんてしたら
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-21
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答え合わせ②

「……セフレ?深月?」久世さんが問い返した声を最後に、瞼が重くなった。環と久世さんの声が、遠くで聞こえる。「……久世さん?こんなことを伺っていいかわかりませんけど。深月の長年の親友としては、私、黙っていられません」「俺は付き合ってるつもりだった。今の今まで。大事にしてるつもりだったのに、セフレって思われてたなんてな」「ちゃんと言葉にしないと、女は信用しませんよ?」「深月が素面のときにちゃんと言うよ。……頼むから、バックミラー越しに、そんなに睨まないでくれよ」「長年の親友なので」コーポ黒瀬の前で、私は久世さんに起こされた。「ほら、鍵出して」「ふあい。眠いれす、久世さあん」「頑張れ。高瀬さん困ってるから。小川さん寝かすんだろ」渋々バッグの中から鍵を出した。あれ?環、さっきよりも複雑な表情をしてるのは何故?「たらいまあ」電気は久世さんが点けた。なんでさっきからこんなにテキパキしてるんだろ。「高瀬さん、寝室はそっち。小川さん寝かせて。深月、まずは水を飲むんだ。ソファ座って」「慎一郎さん……?今日も泊まるの……?」ふわふわしたまま、久世さんにくっついて眠りたい。腕引っ張れば、座ってくれるはず。「今日は高瀬さんも小川さんもいるだろ。俺は家に帰る」「ええ……」腕を引っ張って、大原理紗ばりの上目遣いをしてみせる。「……っ。高瀬さん、じゃあ俺、帰るから。きみも泊まるんだろ。鍵頼むね」「久世さんこそ。深月とちゃんと、話してくださいね」どしたの環。何でそんなに慎一郎さんに冷たい声出しちゃうの?かわいそう……。──やらかした。昨日の夜、山王駅で久世さんのランクルに3人とも乗せてもらったのは覚えてる。助手席に座って、何か喋って……。何を喋ったんだ私。日菜ちゃんはひどい顔をしていた。私も大概だった。ふたりして慌てて朝
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-22
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答え合わせ③

「わた、しは……セフレじゃ、なかったの……?」「深月は、最初から、俺の彼女」「だから、あんなに、優しかったの……?」「俺は深月だったら、どこまでも、優しくなれる。なあ、深月。返事、くれよ」「へんじ……?」へんじ。ヘンジ。……返事?何の?「深月。俺と、付き合ってください。俺の彼女に、なってください」ツキアッテクダサイ。カノジョニナッテクダサイ。セフレジャナイ。カノジョ。ツキアッテ。  大きく2回頷いた。涙が止まらなくて、声が出ない。「う、うゔ……」もう一度抱きしめられた。私も腕を慎一郎さんの背中に回した。「俺、離さないから。覚悟して、深月」「うん……」顎に指を添えて、顔を上げられた。きっとひどい顔だ。泣いててメイクは崩れてるし、鼻も涙で詰まって真っ赤だろう。末摘花ってこんな感じだったのだろうか。優しく、唇が重なった。今まで慎一郎さんとしたどのキスよりも、このキスは優しかった。慈しむようなキス。これに近いキスを、慎一郎さんは何度かくれていたのかもしれない。 「すき、です」今度は慎一郎さんが固まった。さっきまで、あんなに私に、好きって言ってくれてたのに。目、逸らされちゃった。「やばいな、これ……」「慎一郎さん?」「深月、もう一回、言って?」──夏の夕方はまだ明るい。こんな明るい時間から、慎一郎さんに何もかも見られるなんて。羞恥で全身が敏感になった私は、何度もはしたない声を出した。何度も意識を失いかけた。何度目かの快楽が全身を走り抜けたとき、私は腰を痙攣させて意識を失った。……今何時だろう。慎一郎さんを起こさないように、抜けなきゃ。いつものようにそっと腕をどけようとした、そのときだった。「深月」「ん……慎一郎さん?起こしちゃった?」「行くな」「え」
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-09-23
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